ANORA アノーラのレビュー・感想・評価
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シンデレラストーリーの夢と残酷な現実
めちゃくちゃ面白かったです!
アカデミー賞作品賞受賞ということで身構えていましたが、そんなことはお構いなしと言う位突き抜けて面白く、それでいて泣かせられると、そういう人間ドラマでした。
男女の出会い、突き抜けて明るくエロいラブロマンス、から抱腹絶倒のブラックコメディ、そしてあの展開からのエンディング。
ジョブ
ラブ
セックス
コメディ
シリアス
社会批判
全部入ってました。
こんなにオープンにエロくて、思いっきりブラックコメディーな作品が、アカデミー作品賞を受賞する。
近年アカデミー賞の方向性が大きく変わったのかというのをまざまざと思い知らされました。
そして、ショーン、ベイカー監督ならではの、男女の出会いと引きこもごも、そしてもつれてのその先。
その独特の映画の描き方、着地点。
どれも、一級品と言って間違いないでしょう。
全作レッドロケットと構造は似ています。
男女逆転してるだけと言えばそうなんですが。賛否解釈割れそうなラストのビターさ、社会批評的側面はアカデミー受賞に一役買ったのではないかと思います。
いろいろ述べましたが、とにかく1本の映画としてめちゃくちゃ面白いので、ぜひぜひ多くの人に見に行ってほしいと、そう思いました。
タイトルなし(ネタバレ)
始めの方はコメディ要素強めで、その後どんどん奇想天外になって行くが、始めから「こんな結婚は長続きしないだろう」と観客も気付いてるはず。同僚のダイヤモンドの様に。
最後まで見て破局は「もしかしてアニーも予想の範囲内だったのかも知れない」と思った。
イヴァンが馬鹿と気づいてる上で結婚したから。ただし「破局を決めるのは私たち夫婦で、他人にどうこう言われたく無い!」と言う強い思いがあるハズ。アニーは自分の仕事に引け目は感じていない自信家だし。
しかし結婚前後は本当に幸せそう。
とにかく出来事やトークバトルが面白かった。
最後に車の中でイゴールにお礼をするアニーだが、言葉で言えずヤッタ自分の行動に自信が無くなって悲しくなる。仕事とプライベートを分けるべきプロとして2度目の崩れた瞬間だと思った。
アカデミー賞の作品賞や主演女優賞を受賞したが、破天荒なアニーを演じたマイキー・マディソンにオスカー像を渡すのが、前年に破天荒なベラを演じたエマ・ストーンだったのは面白い。
制作費は『デューン 砂の惑星 PART2 』の50分の1くらいで、ショーン・ベイカー監督は受賞式のスピーチで「インディペンデント映画が苦境にある」と語っていた。
次回作も期待したい。
人間の醜さと差別にまみれた世の中の汚さ
現代版『プリティウーマン』的な美しいシンデレラストーリーではなかった。
描くテーマの一つに「セックスワーカー(性産業)の女性の生き方」があったので、本番アリのストリッパー・アローラを主人公に据え、前半は露骨な性交シーン&様々なR18+描写が続く。
大富豪の息子は本当にクソガキで、アローラの気持ちをもてあそぶ。
前半はそいつがバカやってるシーンがずっと続き、単調で眠気を誘発するシーンもあった。
クソガキとその両親、トロスたち監視役の男たちは、アローラを人間として見ていない。
セックスワーカーという職業差別を筆頭に、人種差別、性差別の限りを尽くして、お上品な階級とは思えない下品な振る舞いと命令口調で彼女を追い詰めていく。
しかし、登場人物の中で唯一まともなことを言っているのはアローラだけ。
教育を受けてないから語彙が少なく、使う言葉(セリフ)はスラング&侮蔑語ばかりながら、思いは純粋。
金や身分ではなく、本当の愛を求めていて、お目付け役たちに拘束された当初は、手に入れた愛を守るために動いているのがわかる。
しかし、その愛が幻で、男が真のクズでガキと知ってからは、アローラは自らの尊厳を守るために動いていく。
訪れるのは悲劇。
そして見張りの男が示した好意に、アノーラが示す感謝の仕方がまた切ない。
観客としては、安易な共感はできないものの、どんどんアローラへ好感を抱いていく。
とはいえその好感の正体が、「同情とか上から目線なものではないのか」と逡巡せざるをえないので、観ている人間の心根が試される踏み絵のような存在と気づく。
終わってみれば人間賛歌ではなく、人間の醜さと差別にまみれた世の中の汚さを徹底的に見せつけるという内容でした。
これにアカデミー賞を与えるとは、アメリカが病んでるのではないかと心配になりました。
娼婦は相手とキスをしない
上方落語の味わいが江戸落語の湿っぽさに取って代わられる瞬間
本年度アカデミー賞で作品賞、監督賞など5冠に輝いた『ANORA アノーラ』。ここで過去のショーン・ベイカー監督作を振り返っておくと、大抵セックスワーカーが主人公として登場する。多くの場合、彼/彼女たちはうだつが上がらず、社会の底辺で貧困にあえぎながら場当たり的に暮らしている。そしてかなり自己チューで口約束は平気で破ったりする一方、ロクデナシに入れ込み関係を断てないでいる。ときにはケチな悪事に手を染めたり、深く考えもせずヤバい橋を渡ったりもする。
自分の周囲にこんな人たちがいたら相当迷惑だろう(笑)。だが「善とか悪とか単純に割り切れない、それこそが人間なんだ」といわんばかりに生きざまの多様性を認め、そのいい加減さも含めて丸ごと「人間味」として肯定するのが、ベイカー監督の一貫した姿勢であり、こちらの心に深く刺さってくる点でもある。
最新作でもその根っこの部分は変わらない。さらにテクニカルな面でも、直近2作と同じく個性的な手ブレ描写も交えたフィルム撮影を敢行して、アート系インディペンデント映画の肌触りを保っている。
そのかたわら、過去作とはちょっと様子が異なるのが、人物設定とラストのオチだ。話の大筋自体はこれまでの変奏曲ともいえるのだが、今回いくつかの「新たな試み」が取り入れられているように思える。
それは、まず第一に主人公を若いながらもプロのセックスワーカーとしてそこそこ稼げている設定にしたこと。第二に、結婚相手のロクデナシ男を何一つ不自由ない御曹司という設定にしたこと。第三に、ラストでほろりとさせるような二段オチを設けて余情たっぷりに描いてみせたこと。この3つだ。
これらの狙いは、うがった見方をすれば、マイナー映画を脱してより広範な大衆性を獲得すること、とも言えそうだ。事実、本作は日本でも若い女性から圧倒的支持を得ているようにみえる。
この3つの「新たな試み」についてもう少し詳しくみていきたい。まず一つ目の「ある程度稼ぎのある主人公という設定にしたこと」について、本作は主人公のアノーラを「賢くて抜け目なく、したたかに生きるプロフェッショナル」として描いている。その様をオープニングから一気に見せつけられ、ストリップには高度なテクニックやスキルに加えて適性と忍耐力が必須なんだと否応なしに納得させられる。
このアノーラに扮したマイキー・マディソンは、小松菜奈を崩したような顔立ちというか、一度見たら忘れがたいファニーフェイスだ。その宮本信子みたいな容貌に妙に惹きつけられる。これがエマ・ストーンだったら美形すぎてダメだろう(…と引合いに出したが、実はエマ・ストーンもじっくり眺めると「典型的な美形」というわけでもない)。
そのマディソンが体現する「自立した女性の生きざま」には清々しさや小気味好さすら覚えるほどだが、一方でこれは諸刃の剣でもある。自らのカラダを武器に稼ぎまくるアノーラは「客とは恋愛しない、お金にならない恋など願い下げ」といわんばかりのタフな人間だからだ。そんな彼女が、ベイカー監督の過去作の女性キャラと同様、ロクデナシに夢中になるとは思えない。キモチの半分は財産目当てだとしても、アルメニア人のボンボンにまんまと騙されるだろうか。
ここでの監督の演出は一つの見どころとなる。本作で「新たな試み」の二つ目として挙げた「大金持ちの御曹司が結婚相手という設定にしたこと」にもつながるのだが、カネこそ全てと信じるバカ息子を、一歩間違えれば庶民感覚を逆なでしかねない「王子様/クソキャラ」として描かず、いつもの監督作に出てくるような「人間味溢れる憎めないキャラ」として描いてみせたのだ。
バカ息子は、極端な過保護のせいでこんな聞き分けのないお子ちゃまみたいな成人に育ってしまったのだろう。それでもツルツルに磨かれた大理石の床を無邪気に滑ったり、でんぐり返しでベッドイン(!)する仕草などはハッとするほどチャーミング。アノーラの心を武装解除させるのも無理ないと思えるほどだ(※この「無心のでんぐり返し」は、ロベール・ブレッソン監督の『白夜』で主人公が突然でんぐり返しをするシーンに迫る秀逸さだと思う)。
ただし……このあほぼんと主人公がママゴトみたいに体を重ねた末に結婚に至るまでの前半は少々長すぎて、さすがにダレてしまった。も少しチャッチャと要領よく描けなかったものか。
ここで、あほぼんから周囲の登場人物に目をやると、表向きアルメニア正教会司祭だが実は地元の“世話役”も、その手下で一見コワモテな二人組も、ひいては新興財閥オリガルヒのバカ親たちでさえも、各人愛すべきキャラとして分け隔てなく、監督の温かい視線が注がれていることが分かる。カネはあってもどこかトンチキな連中全員が、アノーラ一人にきりきり舞いさせられる様子は、観ていて思わずにやにやしてしまう。
では、本作における「新たな試み」の三つ目に挙げた「ラストシーンの思わずほろりとさせるような二段オチ」についてはうまくいっているか。ここで言う「二段オチ」とは、イゴールが差し出す“アレ”とそれに対するアノーラの一連の“リアクション”のことを指すが、ここは人によって感じ方が分かれるのではないか。個人的には最初のオチのところで止めておいた方が良かったように思う。
ライムスター宇多丸さんは本作について、ショーン・ベイカーが落語の「長屋もの」みたいな話を撮る名手であり、今回は「芝浜」のような人情系落語になっている、とコメントしている(※「アフター6ジャンクション2『ANORA アノーラ』コラボ試写会トークショー」での発言より)。ナルホドと得心しつつ、この宇多丸さんの見立てをもう一歩押し進めると、一番最後のアノーラの“リアクション”によって、それまでの「上方落語のからりとした味わい」が流れてしまい「江戸落語の湿っぽい人情噺」に取って代わった、と言えないだろうか。
江戸落語と違って、上方落語には「三枚起請」「らくだ」「算段の平兵衛」のように、善悪抜きで人間の小狡さや欲深さ、愚かさ、したたかさなどを乾いた笑いとともに味わう噺が幾つもある。その意味で本作全体はまさしく「上方落語」的なのだが、したたかに再起せんとするアノーラの予兆で話を終わらせず、彼女が脆さ弱さを覗かせるという「情」で落としたあたりがきわめて「江戸落語」的なのだ。
「おしつけがましい情てなもん、わてらの最もかなわんもんでっさかい」と言ったのは、たしか故・桂枝雀だったか。胸アツになる、湿っぽくなるのは観客に任せて、作品自体は最後の最後までクールに突っ張り抜いてほしかったな、と思ったのだった。
以上、宇多丸さんほか登壇「アフター6ジャンクション2」トークショー付きコラボ試写会にて鑑賞。
追記その1:
下世話な話で大変申し訳ないが、ショーン・ベイカー監督作品お約束の(?)ゲロッパ・シーンが今回も登場する。『フロリダ・プロジェクト 真夏の魔法』『レッド・ロケット』…と回を重ねるごとに量も増し増し(不適切発言ごめんなさい)。ここまできたら、ゲロッパ映画(?)の最高峰『スタンド・バイ・ミー』(ブルーベリーパイが…いや、重ねての不適切発言ごめん)に追いつけ追い越せ、と人知れず応援する今日この頃デス(ホントごめん!)。
追記その2:
この映画と似通った落語をあえて選ぶなら、上方落語の「たちぎれ線香」が挙げられるだろう。大金持ちの若旦那と芸者の悲恋もので、上方落語が限りなく江戸の人情噺に近づいた一席だが、それでも最後のオチは金銭がらみでキッチリ落とす。「あらゆる落語の中で屈指の大ネタ」と称される名作だ。
いいラスト・・・って、いやいやいや
思わず感動しかけたけど、ラストの号泣シーン、合体したままですよね?・・・などと野暮なことは言いませんけどね。あの号泣からの、BGMなしのエンドロールは中々印象的。
劇場の予告しか情報入れてなくて、「現代のプリティウーマンかあ?ロミジュリかあ?」って思ったけど、逆にぼっちゃんが予想通りなクズでよかった。
前半、中盤、後半と味変もよかった。ハリウッドもまだ、こういう新機軸を出せるんだ!と感心しました!
うん、面白かったよ。
冒頭の出会いの部分はぼっちゃんのセレブぶりを見せつけられすぎてちょっと、あれだったけど、ぼっちゃん逃走後からのあの怒鳴り合いの掛け合いや、なんだかわかんないけど行動を共にするところ、手下の1人との微妙な距離感の変化など、
いいねぇ
さすがオスカー取るだけのことはある。極悪非道なキャラがいないことで、コメディタッチが生まれ、シンデレラストーリーがハッピーエンドにならない流れなど、上手かった!
当然★5+パンフですわ!
好きなのは「名もなき者」だけど、面白かったのはこっちかな?
2025年度劇場鑑賞12作品目
オスカー受賞が邪魔に思える、オスカーぽくない良作
性欲と金銭欲の果てにあるものは
雪が降るなか、とことこ歩いて映画館へ。アカデミー賞取ったんだから観とかないとね。そして感想文です。
アノーラの富への欲望とイヴァンの性欲が見事に一致し、それが恋愛に発展した。それはそれで偽りではない。そしてイヴァンがアメリカの市民権を欲することと相俟って結婚へと急展開。
若い2人は欲望のままに激しいSEXを繰り返す。そしてらんちきparty。もちろんこんな経験はないけど、心象風景として若い頃を思い出す。
しかしそんな愛情も長続きをするわけもなく、イヴァンの両親であるロシアの大富豪の登場でThe End。当たり前すぎる結末を迎える。恋愛というのは波がある。その二人の波長がばっちり合えば二人にとってその恋愛は映画(小説)のようなロマンチックな状況にもなる。しかし掛け違いが起こると苦しみや喧嘩、そして坂道を転げ落ちるような結末を迎えることもある。その繰り返しだ。そんなもんだ。
性に溺れるバカ息子イヴァンも性風俗で働く尻軽なアノーラも、批判する気には到底なれない。そしてあの嫌みったらしいロシアの大富豪も彼らからすれば当たり前の行動だ。あの程度の横槍で止めてしまえる恋愛なんて長続きをするわけないからね。
そして見事なラストシーン。最後のアノーラの心の痛みはよく分かる。あれは本当に切ない。がんばれアノーラです。
全部わかってしまう、そして認めてしまえる僕は年をとりすぎたのかな。いや、映画監督の手腕というやつだろう。だってこの映画に出てくる人達、誰も憎めないんだから。
面白くなかったわけではないが……
なにを見せられたのかがよくわからなかった
序盤は、主役ふたりのラブラブを見せられるわけだけど、なんで結婚したいと思ったのかよくわからず
イヴァンが逃げたあとの捜索もうるさいだけで捜索が長く、コメディタッチなのはわかるけど、あまり笑えるものでもなく……
ロシアの両親が到着したあとも、なにか反撃があるのかと思ったら単に罵っただけで、ただここはロシアのお父さんが高笑いしてたのは良かった
最後、指輪返してもらって、また、いろいろな道中の間に気を許したのはわかるけどいきなりそういうことするのか、って感じで……うーん多分倫理観がnot for meだったのかなあ……
ばかにするなとがんばるアノーラのキャラが最高! 自然と付き合わされる男連中が笑える
祝、まさかのアカデミー賞主要部門独占!そこまで良かったか?とも思いますが。
シンデレラストーリーのその先を描く。
まずは、セレブの若者連中のバカ騒ぎラブ・ストーリーで始まり、結婚。
しかし、思った通りの現実に還る。
あれだけ虚勢を張って言い切っていた男が、両親が来るとなると途端に態度を変えて、女を守るどころか、置いて行って一人逃走。
遺されたアノーラは、彼の重り連中と共に男を探しまわる羽目になる。
ます、男連中に負けじと抵抗するアノーラの大暴れに応援したくなる。
男の方が、世間知らずからの「純愛」かと思えば、アノーラをそういう仕事の女として話すような、救いようのないバカ息子として描かれているから、全面的にアノーラに感情移入してしまう。
脱ぎっぷりもよくて、からみのシーンもあっけらかんとしていて全くいやらしく見みれてしまう。
自然と付き合わされる男連中が笑える。
その常に前向きに頑張って前へ前へと進むキャラクターが最高でした。
ついにその緊張の糸も着れて、泣けてしまうところもまた可愛らしい。
Greatest Day
祝アカデミー賞作品賞受賞という事で、R18+ですがどうにかヒットしてくれ〜と思っている今日この頃です。
ストリップダンサーのアニーが金持ちのボンボンのイヴァンと出会ってエッチしまくって結婚までしちゃって…そこまではシンデレラストーリー、そこからは怒涛の展開が巻き起こるヒューマンドラマで、パリピな雰囲気こそ苦手だなぁとは思いつつも、絶対後々効いてくるんだろうな…とじっくり構えながら観ていました。
日本でもこういうお店があるとは思うんですが、これって何が楽しいんだろう?と思っていましたが、こういう楽しみ方があるってしっかり視覚化できていたので、こういうのが好きな人もいるんだよな〜世界回ってるな〜ってなりました(すっとぼけ)。
アニーとイヴァンが幸せになっていくのか?と思ったら、結婚した情報が流れてお付きのものたちと部下たちがやってきてイヴァンを連れ帰ろうとするけれどイヴァンはそそくさと逃亡して、アニーはブチギレまくってるというスクリーンの情報量が過多していましたが、ハイテンションプリプリな神父のトロス、どこか抜けててドジしまくりなガルニク、屈強で冗談が通じないスキンヘッドのイゴールとなんだか憎めない3人組とアニーとの珍道中が始まって行ってからは面白さが加速していきます。
画面の中で罵声と怒声が溢れかえっていて、ロシア語と英語の字幕もごっちゃになってるっていうカオスな状況下なシーンが延々続くんですが、もうとにかく言い争っているのがだんだん面白くなってきて、段々優しい目で見ていられるようになる不思議な体験ができました。
この手の言い争いって基本顔を顰めたくなるくらい不毛なものだったり、ただただ気分が悪くなるものが多いのに、コメディっぽくなっているのはバランスの妙だなと思いましたし、重苦しくなく観れたのも良かったです。
イゴールが生温かい目で見守り、トロスが自論垂れ流しまくりで発狂、ガルニクが嘔吐と披露でぐったりばったりとそれぞれの役割を果たしに果たしまくっており、ボケとツッコミどっちもできるアニーが右往左往したりと、スクリーンに一切映らないイヴァンを巡っててんやわんやする流れがとても好きでした。
イヴァンがクソ野郎なのはもちろん、自分で何も判断できずに無闇に暴走しているというのは甘やかされていて、かつ親からの愛情を一心に受け取っていない感じの解像度がめちゃくちゃ高かったです。
酔っ払いまくってまともに会話をもできない状態のくせに悪態はついたりと、アニーがそそくさと突き放してくれてスッキリしました。
両親はやはり難ありで、母親は愛情を与えているように見えてどうにも自分のための保身に走っているようで、周りへの態度もキツいときたもんですからイヴァンの親だなぁって感じでしたし、父親は無関心に近い感じだったので、イヴァンもそりゃそうなるよと頷きっぱなしでした。
ラストにかけてはそれまでのハイテンションっぷりはどっしり抑えて、しっとりしたイゴールとアニーのやりとりが哀愁を感じられるものになっていてじっくり眺めることができました。
ラストシーンのゆったりと引き締まった空間からのやり取りなんかもなるほどなぁ〜と自分なりの納得をしながらエンドロールに持っていくもんですからにくい演出でした。
役者陣は最高でマイキー・マディソンの体の張りっぷりと強気な態度はとにかく見応え抜群で、ユーリー・ボリソフのニヤッとする感じの演技も良い味出しまくっていました。
若干長いかなと思うシーンはありましたが、最初から最後まで妥協なき責めっぷりに圧巻されました。
こういうテイストの作品も偏見なく評価されるのはいいなと思ったので18歳以上の方は映画館に駆け込んでいきましょう。
鑑賞日 3/2
鑑賞時間 17:45〜20:15
座席 D-10
ラスト3分は見応えあり
少し心離れてしまった
18禁は勿体無い
まさに今の世界そのもの
めちゃくちゃ面白かったです!
あっという間のラスト。
とにかくアノーラたちの言い争いが面白い。
そのテンポやバランスがまぁ見事。
こんなにたくさんの言い争いで溢れている映画ってあるんでしょうか?
私は初めての体験だったので、すごいなこの作品とそこでもう衝撃を受けました。
ただこの作品、そんな表面的な面白さだけではないのですよね。
私にはアノーラに起きた出来事=ウクライナがロシアから受けている侵略戦争にしか見えなくて。
戦争って各々の国の主張のぶつかり合いなんだと、すごい具現化を見せられたなと思いました。
なので面白いけどとても辛くも感じました。
トロスのボスの命令が何よりで、それには警察だろうが何だろうが他人の都合お構いなし、自己中心的な行動は正に軍の侵略。
そして極めつけはイヴァンの母親!
プーチンそっくりの顔だったのでここまで似せてくるか、と笑ってしまいました。
父親は中国ともアメリカとも取れるのかな。
おそらく他にもっと何層にもメッセージが隠れているのでしょうね。
他のミネート作品をまだ観てないので何とも言えませんが、私はアノーラはアカデミー作品賞を取るに十分適した作品だと思いました。
ラスト、イゴールがイヴァンに「謝ったほうがいい」と言い、アノーラに何もせずただ優しく受け止めてくれたことが救いでしたが…。
でも今の世界にこの存在がいるんだろうか。
私たちはなれるのだろうかと考えさせられます。
エンドクレジットの無音の黒画面が現実を有り有りと突きつけてくるようでした。
明るい気持ちになる映画ではありませんが、私はこういうやるせない気持ちになる作品も大好きですよ。
そこに愛はあるのかい
ストリップダンサーのアノーラがお金持ちの御曹司と出会い結婚するも、御曹司の家族から反対されてしまうというお話です。
前半の結婚に至るまでの盛り上がりにワクワク、アノーラの見事なプロポーションに私もドキドキしちゃいましたよ。
後半は洗礼を退席しちゃう口の悪い神父と、使いの係り2人とアノーラがイヴァンを探すためにニューヨークの街を転々とするのですが、これが面白い。皆んな言いたいことばっか喋るからかなりやかましい笑
掴んだ幸せを信じて喰らい付いていくアノーラがとても逞しかった。あの息子は働くよりも更生施設に入れないと…。
最後は娼婦でもエロティックダンサーでもエスコート嬢でもなく1人の女性として咽び泣くアノーラに胸を打たれました。
いつもは満点なのに
タンジェリン以来「この人が撮ったなら無条件で観る」監督なので、オスカー獲得は全くご同慶の至りではありますが、いつものベイカー節は若干不足気味と感じました。
ドラッグ、同性愛、移民など貧困層の悲哀をカラッと描くのがこの人の真骨頂で今回も定番の移民を扱ってはいるものの、室内場面が多くてスラムなどの屋外描写が殆どないので、いつもの「アメリカの現実」感が希薄な印象です。
全体的には前半がやや冗長、後半はドタバタ気味ってとこでしょうか。
尤も、アイリッシュ、イタリア、ユダヤ、ポーランドなど国籍ごとの移民に対する明確なイメージを持ち得ない他国人には直感的な理解は無理、とするのが本当のところでしょう。
とはいえ個人的には「ベイカー・メーター」は期待の水準は十分満たしています。
ただ、これがオスカー、すなわち2024年を代表するアメリカ映画なのか?という疑問も残りますし、2000年代以降のオスカーはどんどん三大映画祭に近付いていますね。
面白いから観てみなよ、ってオススメできる作品かどうかは微妙ですし、どこが面白いの?って感想を持つ人がいても不思議はありません。
前半はパリピ映画過ぎてアウェー感ビシビシだったけど 途中からアニー...
賞を取れても日本で理解するのはかなり難しいか(補足入れてます)
今年74本目(合計1,616本目/今月(2025年3月度)8本目)。
賞を取ったという事情もあり、大阪市は小雨も降る中8割埋まりが印象的でした。
ストーリーとしては、ロシア系にルーツを持つアメリカ人のカップルが成り行きで結婚したらそれを許さない家族が介入して結婚するのしないの、離婚するのしないのといったお話。もちろん多くの方か書かれている通りR18なのでエッチなシーンは結構多めです(違法薬物を勧めるようなシーンはなかったかな?あってそちらはPG12程度か)。
結果的に賞を取ったことは客観的に評価できるし、ただ日本でいうR18相当でいう「エッチな映画」という点はあるものの賞を取っただけのことはあり、それ以上の深みのある内容になっています(まぁ、前半からそのシーンが多すぎてアレなんですが…)。ただ、最終的に大賞を取るほどか?というと微妙かなぁ(特に去年と比較として)という感想を持つ方が少なくはないと思うところ、アメリカ映画であり、日本で見る場合、相当な知識が要求される点がそうそうきついかなという印象です。
個人的には、ロシアが今リアルで置かれている現状等も勘案しても、政治とエンターテインメントを区別して作成されていた点も良かったところです。
個々気になった点を触れつつ採点いきましょう。
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(減点0.4/日本で見るにあたり特殊な知識が必要な点が2点存在する)
このことは後述します。
(減点0.2/分離不定詞について)
「あなたにやっと会えてうれしいわ」というシーンが
> It’s so wonderful to finally meet you.
…となっていますが、不定詞(ここでは to meet )の中に他の語句(通常は副詞。ここでは、finally )を入れるのは文法的には分離不定詞といって(日本語では「ら抜き表現」にあたるような立ち位置)、非文法的とされます。もっともこれ以外の解釈はそもそもできないし、許容するネイティブもいますが(ここは個人差が出る)、少し配慮が欲しかったです。
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(減点なし(上記の0.4に相当)/深い知識が必要なシーン)
・ ネバダ州で結婚したのからそこでないと離婚できない
日本では離婚などを扱う家庭裁判所に相当するシーンですが、アメリカではある州で結婚すると、その州でしか裁判上離婚ができません。このことを指しているのですが、このことは日本人には常識扱いではないので少し工夫が欲しかったです。
・ 「「トッシュ」して」について
ここは「フランス語じゃなくて英語で話してよ」のようにフランス語です。フランス語の toucher (英語:touch)は英語のそれと同様に「触る」の意味がありますが、フェンシング用語で「(剣などで)突く」の意味があり、その過去分詞形です。そこから転じて「(相手のいきなりの言動から)一本取った・取られた」の意味があります。
※ この点は先行上映された海外などで「トッシュって何?」の質問に関して回答があり、この回答で正しい模様(フランス語を話すカナダからのレビューアもこの点触れている)。
ただ、英語の touch から類推は可能だとしても発音は全然違うし、ここはある程度誘導が欲しかったです(ロシア系映画ともいえるこの映画ではロシア語ネタも出るし、かなりの言語ネタが登場するので、ここでフランス語ネタが出ると尽きる人が続出しそう)
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