ANORA アノーラのレビュー・感想・評価
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コンパートメント症候群
2023年の『コンパートメントNO.6』が非常にいい映画だったので、気になっていたユーリ・ボリソフが出演というのと、海外での評価が高い、との前情報のみで鑑賞。
個人的には前半の、ストリップバーでの酩酊感と若さゆえのキラキラ感、スピード感が良かった。ただ、その前半の輝かしさも、海外に行ってみると割と普通に見かける光景。豪勢な暮らしとは裏腹、御曹司とのセックスは実にありきたり。後半失踪したイヴァン探しのドタバタ劇からは失速気味で、イゴールの意味有りげなアップから、さあどうなる?と期待したが、結局は一緒に疲れる感じで正直ウンザリさせられた。ただ海外で暮らしたことのある者、または英語ネイティブには、彼ら/彼女らのやりとりは実に滑稽に映るかもしれない。
イゴールのアノーラに対する気遣いも、われわれが日常で見かける思いやりの域を出ないように感じ、特別彼が優しいとは思えなかった。
最後、セックスでしかお礼をする術のないアノーラの悲しい性は堪えたが、よくわからないフワフワした結婚がふいになって、”夢物語?ううん。これが現実”とするくらいなら、イゴールが最後は拒んだうえで「アノーラ。自分を敬えない人間は、他人からも敬ってもらえないよ」と諭して、前向きに歩いていくアノーラを描く、くらいはしてほしかった。現実だって夢なんだから。
まあそうなるとまた別の映画になってしまうだろうが。
そんな中、劇中でわずかに映る、幸薄そうな家政婦のほうが個人的には強烈だった。アノーラは華やかな世界に身を置きつつも等身大の若者っだったので、ああいうのをメインに添えると面白い映画になるんだよなぁ...と勝手に妄想が膨らんでしまった。
その後の2人を想像してみる
心ある人間いるじゃん?!友達になれそうだよ!あんな形のお礼になっちゃうアノーラ、自然とキス求めるイゴール。泣けちゃいましたラストシーンは。元の仕事に戻る…なんて事はしないよね、アノーラ、いや…戻っちゃうかな~。見る目養って逞しく体を武器にしていくか、敏腕弁護士にでもなってほしい(実は頭良さそうだし)。イゴールもバカ息子に「謝るべき」楯突いたしアホ臭すぎる一族にウンザリして転職…。3年後に偶然再会し、過去から成長した2人、今度はアノーラがイゴールのピンチを助ける。ホンネぶつけられる親友関係始まる、とボンヤリと想像を巡らせます。
いまだに身分の差?-こんなに笑える作品だったとは!
開始直後のパリピ的なノリから、結婚を無かったことにしようとする両親とその手先たちが登場してからのスラップブティックなドタバタ劇への怒涛の展開を経て、諦観へと続いていくテンポが抜群に良い。
前半ではR18+に当然なるような性描写がてんこ盛りではあるが、あっけらかんとし過ぎていて余りいやらしさすら感じない。セックスワーカーの仕事としてこなしている様は、家政婦が部屋を掃除しているのと何ら変わらない。
アニーが好きなプリンセスはシンデレラだという台詞が出てくる。舞踏会で夢をみるシンデレラは午前零時を迎えると魔法が解けてしまう現実を抱えている。しかし、魔法が解けたら終わりなのではなく、それでも自分は自分なのだというブレない芯の強さをアニーは持ち合わせている。彼女の職業に対しては嫌悪感を持ったとしても、この強さに共感し応援したくなる女性も少なくないのではなかろうか。
にも関わらず、如何ともし難い状況のやるせ無さにも直面し、思わず涙をこぼすアニー。朝ドラの『虎に翼』ならBGMにインストゥルメンタルで「うちのパパとうちのママが…」と流れてきそうな展開。セックスワーカーを見下し、蔑みの目で身分の差を突きつけてくるイヴァンの母親に象徴される資本主義的階級社会の冷酷さ。そこでは弱いものどうしが支え合っていかざるを得ない。
だが、アメリカ合衆国という国が、そもそもの成り立ちとして、信教の自由とともに(プリンスやプリンセスが存在し、身分が生まれながらにして定められている)階級社会からの自由を求めて旧世界からやって来た人々によって建国された国では無かったのか?
自由と平等を希求する人々の国だったはずなのに「独立宣言」の理想を覆すように自らを「王」と称する男が大統領になり、大富豪が貴族のように振る舞っている。そして、大国ロシアが隣の小国を蹂躙している。そんな現実世界に思いをつい馳せながら観ていると、小娘だと思っていたら意外と手強かったのは誤算だった、という場面で劇場に笑いが起きる。
あれだけ身体を張った演技をしたんだから、ご褒美にオスカーの主演女優賞が与えられてもバチは当たらないよね。
バイオレンスではない暴力
2024年。ショーン・ベイカー監督。ニューヨークで夜の性産業に従事する女性は、ロシアからやってきた若い客に見初められて自宅に招かれると、とんでもない豪邸に住んでいることがわかる。一週間の専属契約の後でプロポーズされるが、やがてその男の親に雇われた男たちがやってきて、、、という話。
「そこに愛はあるのか」という恋愛映画の永遠の主題が、あからさまな性と金の問題として描かれる。筋だけ追えば「主人公が疑いながらも得ていると思っていた愛らしきものが最初から幻だったことがわかる悲劇」ということになる。最初からある性的な格差(男と女)と資本力的な格差(富豪と夜の女)は愛の力では超えられなかった(この愛の疑わしさは当初からわかっているのだが)、ということだ。
しかしこれは喜劇でもある。男の親から派遣されてくるこわもての男たちは銃を持ってないし、人を殴らない。この映画で人を殴るのは主人公をはじめとする女性たちだけだ。悲劇をもたらす力であるはずの富豪一族、特に母親も最後の最後で主人公の女性に痛快にやられている。こわいおにーちゃんたちが女性をめぐってあたふたし、鼻を骨折してゲロをはく様子や、権威的な母親がやり返されて痛いしっぺ返しを食らう様子は単純に笑える。力の転倒の喜劇。悲劇と喜劇が上手にブレンドされた映画はたいてい面白いから、この映画も面白いのは当然だ。
それでもやはり、これは「暴力」の映画だ。こわもての男たちのうちのバイオレンス担当の男は、主人公の女性に「底辺に生きる者同士の連帯」のようなものを示し続けている。その男を忌み嫌っていた女性は最後に男のまごころに触れたおもいになった時、性的な行為で感謝を示すことしかできない(これが新たな愛の認識だと純粋なラブストーリーになるところう。この作品においては、あくまでも男の思いは共感的同情的なものであり、女性の思いは感謝だろう)。女性には性的に搾取される貧しい人間の行動規範が身についてしまっているのだ。これが人間に振るわれる最悪の暴力でなくてなんなのか。最後の涙は身につまされる。
罵倒は本質を現す
つまらなくはないが面白くもない
第97回アカデミー賞では作品賞や監督賞、主演女優賞など5部門を受賞。
ストリップダンサーのロシア系アメリカ人アノーラがロシア人の御曹司イヴァンと知り合い期間限定の付き合いを契約しラスベガスで衝動的にノリで結婚。その後のイヴァンのボディーガードや両親を巻き込んでの結婚を破棄させるまでのドタバタ劇です。
ストーリー自体はコメディ要素もありますが、R18+ですので演技が妙にリアルで生々しい。
冷徹なイメージのロシア人達の慌てぶりをアメリカ映画としてエネルギッシュに描いているのですが問題はこの主人公二人の行動に全く共感できずラストも微妙でなんとも言えず。
印象には残りますがアカデミー賞の作品賞受賞が個人的には疑問でした。
おススメ度は普通のやや下です。
ビッチなシンデレラ。面白くて、切ない!
ショーン・ベイカーは負け犬を描かせたら天下一品だな。
●ヒロインをあくまで売女として描いたのがいい。自分本意で身勝手で欲深な女。性的表現も妥協なく、シンデレラの要素はカケラもない。だからこそ自分を嘆くラストが胸打つ。
●登場人物、全員が自分本位な言動ばかりで笑える。ちょっとお前らだまれよ、一斉にしゃべるな!…なノリ。現実世界であるある、こんなシチュエーションあるって。
●自分本位なのに後ろめたくてちょっと優しい。それも人物たちがリアルで豊かに感じる。
ありがちなのは娼婦を銃で始末するみたいな展開はなく、攻めた後、ちょっと悪かったなぁって感じがいい。
●雪がいい。やたら寒い寒いと連呼してマフラーのための伏線かと思ったら、窓辺に立つと雪。ゾクッときた。
●雪の車内。ばあちゃんの車。最後に情感が盛り上がる。
●最後の涙。シンデレラになれなかった。なれないんだと思ったら、本当に切なくなった。
そして悪態ばっかりついていたアノーラがどういう人だったか初めてわかるのだ。
このラストに痺れた!
笑った、ハラハラした、そして泣かされた。
パルムドールとは一体何だったのか・・・
アカデミー賞受賞&R18という異色の組み合わせに期待したのですが・・
美人じゃないのに段々彼女の魅力にハマってしまう
アカデミー賞おめでとう!
楽しい映画でした。
出だしのノリのいい映像の編集と音楽で、一気に引き込まれる。
(ちょっと映画「マイアミバイス」の出だしを思い出す)
で、アノーラにとっての夢のような前半の後…。
後半が面白い。前半は映像のノリで引き込まれるけど、後半は、痛いドタバタコントの趣もあり、こちらは話で引き込まれる。
で、ラストにこの監督らしいサプライズが。(見ながら、絶対サプライズがあると思っていたけど、案の定)で、ちょっと深い。
主役のマイキー・マディソンは見ながら誰かに似ているな、と思ったら、後半ダメ亭主を「ヘタレ」と言っていたのを聞いて思い出した。「カーネーション」の尾野真千子だ〜!
パワフルな演技は、尾野真千子を思い出す。で、とても魅力的(美人じゃないのに段々彼女の魅力にハマってしまう。)
それと、今回の助演男優賞にノミネートされたユーリー・ボリソフがいい。で、とてもいいヤツなんです。彼も大好きなキャラでした。
アカデミー賞主演女優賞、脚本賞、編集賞、監督賞は納得だけど、作品賞は別の作品の方が…。
面白かったけど、アカデミー賞の作品賞の作品じゃない思った。
監督賞は、取れてよかった。やはり気になる監督ではある。それにこの監督は編集を自らやっているので、編集とセットだね。この監督の良さは。編集賞も取れて良かった。
前半はラリってて、後半はしんみり。
観る前にハードル上げすぎたかな・・・。
ショーン・ベイカー監督の作品といえば、前作の「レッドロケット」が衝撃的に面白くて自分好みでしたが、R18だし「絶対にメジャーヒットは無理」って感じの印象でした。今回、カンヌとアカデミーのダブル受賞ということで、大いに期待して鑑賞したのですが、感想は満足感と物足りなさが入り交じりましたね。
アンチシンデレラストーリーとはよくいったもので、確かにこの映画を的確に表現していると思います。ただ、「レッドロケット」のような、意外な展開はなく、「こんなバカ息子と結婚なんかしても上手くいくわけないやん」と思って観てたら、ある意味当たり前に強制離婚という顛末で終わり。なので、ストーリー自体の面白さとしては物足りなかったかな。
大満足だったのは後半展開される、どこか憎めない連中とアノーラとのバトルチックなやりとりで、ショーン・ベイカーらしさ全開でした。普通なら観てて不快になるようなケンカのシーンが、おかしくて仕方ないというのは、脚本・演出・演者が全部そろって上手いからでしょうね。
あと、ラストシーンとエンドクレジットがそれまでのタッチから急に変わった(ように感じた)ので、少し戸惑いました。観る人によっていろんな解釈ができるラストだと思いますが、イゴールと結ばれてメデタシ、みたいなロマンティックなものではなく、そもそも彼女の人生はまだ続くのだということを示すために、あえて終わりっぽくないエンドロールにしたのかと。とにかく余韻の残るエンドロールでした。
それにしてもこの映画がアカデミー賞作品賞を受賞するというのは、時代の変化を感じます。昔はカンヌ受賞作はアカデミー賞にノミネートされることすら少なかったのに。アカデミー賞らしい、メジャー大作で質も高いという作品が少なくなっている昨今、当面こういう傾向が続くのかなと思いますが、こういう賞って個性があって全然別の映画が受賞するほうがファンとしては楽しいのですが。
久々納得のアカデミー賞
前半、後半でガラリと異なる展開。ラストは意味深
ストリップダンサーではなく、性的サービスをする風俗嬢アノーラ。
そこに遊びに来た、世間知らずの金持ち息子。性的サービスに大満足しすぎて出張サービス、さらには7日間の契約まで求めます。金持ちの道楽に付き合う程度でいたアノーラでしたが、この男からのまさかのプロポーズ。遊びの延長か勢いとしかおもえないのですが、あまりの真剣さに同意して結婚してしまいます。「プリティウーマン」ばりの恋愛ドラマ展開と思いました。ところが後半は急展開に、バカ息子のお目付け役が登場して後始末をつけようとします。するとバカ息子は逃亡。お目付け役とアノーラでバカ息子を探すロードムービー展開となります。恋愛とは打って代わり笑い飛び交う珍道中です。オチはどうなるのか?親の反対を押しきり女性を一途に愛する男となると期待するも。生々しい現実でバカ息子はバカ息子のままでした。家に帰るアノーラでした。彼女はシンデレラストーリーを夢みたのではなく、一人の女性として幸せを求めたのでした。しかしそれは叶いませんでした。ラストをどう解釈するかでこの作品の評価となります。お目付け役イゴールがバカ息子に返さなかった結婚指輪を渡します。アノーラはイゴールの上に乗りセックスをします。イゴールがキスをしようとすると拒むアノーラ。そしてイゴールの胸で号泣します。
指輪を戻してくれたイゴールへのお礼がセックス。しかしキスをしたらイゴールが勘違いして愛してくるのではと思い拒んだ。もうこんな恋愛はこりごりという号泣と解釈しました。
なるほどそう来たか
ラストシーンが全てか。そこまで持っていくためにドタバタ劇を長々と流したのか。主役をアノーラとイゴールと見做せばシックリ。アニーはイゴールに跨る。イゴールが拒否しないのを責めるのは酷。パンフレットのコメント欄で、ここの受け取りが私と異なる意見があった。しかしイゴールが欲しいのはセックスよりキスだった。明らかにアニーに対して情が湧いている。同情より愛情だろう。そりゃあ、あの立場で親分の息子に謝罪を求めたのは相当な覚悟だったと思う。アニーはイゴールのキスを拒む。これは予想通り。身体を提供すること以上にキスは特別なのかもしれない。どう対応すべきかわからなかったのだと思う。その過程を経ての最後もたれかかっての涙は、ポジティブに受け取って良いと思う。二人は恋心を確信したはずだ。
ラブラブ映画と思いきや全編ぶっ飛び映画
R18映画は苦手で観に行くの嫌でしたが
オスカー5部門取れば観に行くしかないでしょう
観た感じ前半はまぁ過激なシーンあったけど
全体的違和感なかった
ストーリーも脚本良かったので分かりやすく
観れました
出演者皆ぶっ飛び演技で主演女優賞取った
女優さんの体当たり演技良かった
映画の中で落ち着いていたボディーガードの
男性良かったのに賞取れなかったのに断念
ですね
最後の終わり方から無音のエンドロール
大好きです
アカデミー賞とは?
賞を取るとか考えずになんだか気になっていたので見に行ったのだけど、正直さほど心に響かなかったかなぁ。
ロシアのパリピバカ息子と、なんとか毎日生活してるセックスワーカー?とのジェットコースターラブコメ?
セックスシーンがセンセーショナルではあったけど、そういう映像がなかったら、まぁありきたりなストーリーで注目されることはなかったのではないかな。
ギリギリまでバカ息子を信じたアノーラは、本当の最後まで涙を見せず、イゴールとのカーセックスの時に号泣して、私もついつられてほろりときた。
イゴールの優しさは情なのか、それを受け取って余計に辛くなったのか…。
アカデミー賞ってこういう作品が取るものなのか…という印象だった。
イゴールいい奴
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