ANORA アノーラのレビュー・感想・評価
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何故に?作品賞?なのか?賛否分かれるのは納得。
脇役こそが私たちの主人公
たまたま富豪の息子と出逢って意気投合し、結婚して幸せになる絵に描いたようなシンデレラストーリーなんて現実にはなく、そうなりそうになってもすぐに転げ落ちていくリアリズムを描いた映画。
金持ちドラ息子の気まぐれを本気にしてしまったが為にすべてを失うアニー。
富豪夫婦の手先の末端として仕えるイゴール。
映画やドラマでは脇役として描かれがちなこの2人こそが現実にはたくさんいて、それを真正面から映し出すショーン・ベイカー監督らしい作品。
抗いようのない圧倒的な力を前に屈するしかないアニー。たとえ娼婦だと誤解されるような仕事に就いていたとしても、同じように幸せを求める権利があって、自分の尊厳は誰にも奪えないのよと叫ぶ。
こういったメインストリームではない人にフォーカスした映画は好き。
でもちょっと物足りないかも。それぞれが自分の主張をするだけの応酬などは観ていてすこし辟易したかな。
絶賛されるほどかしら?という想いはあるわね。
まあ、良い映画ではあったけれども。90〜100分くらいに収めてくれていれば尚良かったかも。
アメリカにアメリカンドリームなど、もはやない。
アメリカ映画だし、アカデミー賞作品賞なので「プリティー・ウーマン」のような素敵なシンデレラストーリーの筈で、辛い出来事があってもどんでん返しのハッピーエンドが待っているものかと真面目に思っていた。しかし、。コメディタッチのドタバタはあるものの、映画はあくまで冷徹に今の世の中の当たり前の現実を突きつけてこの物語に決着をつけた。
持ってる人間は裕福で、持たざる人間は貧乏で、這い上がることなど出来ない。アメリカにアメリカンドリームなどもはやない。トランプ側について環境を破壊し、性差別をする方が生きていける。ロシアもプーチン側につき武器商人にでもなった方が富を得る。ロシアの富豪のバカ息子が勢いで結婚したのはアメリカの市民権(トランプは世界の金持ちに市民権を売ると言うほど価値あり)をとってみたかっただけ。愛などは微塵もない。観てて、しんどい映画でした。
マイキー・マディソンの体当たりの演技のアカデミー主演女優賞は納得。
だが作品賞は「名もなき者」にとってもらいたかったなぁ、。
夢は見えるが掴めない
ショーン・ベイカーと言えば、フロリダ・プロジェクトが印象的だ。ディズニー・ワールドのすぐ側のモーテルに住んでいる親子が目の前に見えている夢の国だが、そこへ行く夢さえも叶わず、日々の生活に困窮している社会問題を提起した作品である。
本作も同様のテイストで、ストリッパーをしているアノーラが富豪と結婚し、セリフにもあるディズニー・ワールドに行くという夢を寸前で掴み損なってしまうという共通点がある。
ショーン・ベイカー自身がディズニーに思い入れがあるかは分からないが、低所得者との対比でディズニー・ワールドを出してくる辺りが共感しやすい。
フロリダ・プロジェクトはドキュメンタリータッチで音楽も殆ど掛からず、淡々と進行していく印象だったのに対し、本作はエンターテイメントとしての要素もありとても見やすくなっている。と思ったが音楽自体は店やプレイヤーから流れる曲ぐらいしか無いので環境音としての音楽がなければ、フロリダ・プロジェクト同様に硬派になっていたかもしれない。
逆に音楽すら日常的にない生活がフロリダ・プロジェクトなのかもしれない。
正直、本作が作品賞を取ると考えていた人は少ないのではないだろうか。作品賞=硬派というのがこれまでにあったが、エブリシングが取ってからアカデミーとしてもやはり業界が盛り上がるような作品、つまり万人受けしつつテーマ性のある作品が近年選ばる傾向にあるのだろう。
口喧嘩を楽しむ映画!?
とてもよかった
アニーの暴れん坊ぶりが凄まじい。『プリティ・ウーマン』の現代版みたいな触れ込みだったけど全然違う。話は途中からアニーと用心棒たちがバカ息子を探し回る話になる。彼らが目的は同じだけど各々考えや気持ちが噛み合っていないところが面白い。
アニーがバカ息子の母親に塩対応されて可哀想。ラスベガスからの帰りは自家用ジェットにも乗せてもらえなくてエコノミーで帰る。本当にあんな家族の一員にならなくてよかった。
いいぞいいぞ、行け行けアノーラ!!
これまで見た中でダントツ一番に色々桁違いのバカ坊ちゃん。
アノーラとの関係は、お互いに欲しいものを与え合った気もするけど、何しろ相手は頭スカスカ馬鹿坊ちゃん。
キラッキラなパッケージに皆寄ってくけど、中身は不良品かもしれない坊ちゃん。
でもこのレベルの大金持ちなら中身は入ってなくても、気前よく支払いしてくれたら皆気にしないから、本人も気にする必要なかったんだろな。。
この子の最後の良心は一緒に逃げようとした所までだったな。笑
いいぞいいぞ、やれやれアノーラ!!
自分がいかように傷つこうとも、相手に必ずダメージを与えるやり方、嫌いじゃない。
なんでも持ってるからって何やっても良いってわけじゃ無いんだ。
自分の権利は主張すべきだし、自分が信じたものを自分の目で確認する彼女の勇気はすごくカッコよかった。
好き!!
ノーマル版タランティーノ
今年のアカデミー賞で最多5部門(監督・脚本・編集のショーン・ベイカーは一人で4冠)を受賞した。カンヌは「バービー」のグレタ・ガーウィグ監督が審査員長なればこそのパルムドールだと思っていたがハリウッドでもこの「性労働者」を真正面から捉えた独立系映画が選ばれたことが今の時代を象徴していて快挙だろう。主演女優賞を獲ったマイキー・マディソンは監督賞のオスカー像を手渡したタランティーノが「ワンス・アポン・ア・タイム・イン・ハリウッド」に起用していたのがきっかけだそうでそういえば本作も放蕩バカ息子の親から雇われたチンピラ3人組が登場する後半は俄然タランティーノ風味が強くなる。しかしあくまで危険領域を踏み外すことのないノーマルおバカでトホホな感じが愛おしく腕力担当のイゴールもちょっと良い男過ぎて大雪が降る車内での感動エンディングシーンへと分かりやすく導いてくれて切なくも小さなハッピーエンディングに泣ける。
ショーン・ベイカーのシンデレラストーリー
上映開始三分の一でラストシーンが解った
アカデミー作品賞受賞ということで、早速見参。
のっけからエロシーンと濡れ場の連続で辟易。助演の用心棒役の言動でタイトルの感想となりました。あんなにエロシーンばかり長々と写す必要はあるのかね。中盤の破壊的映像も騒がわしいだけ。金持ちの放蕩息子と庶民?のラブストーリー的な展開も手垢にまみれています。もっと作品賞にふさわしい作品もあったのでは。最近のアカデミー作品賞はわからん。主演女優さんは日本風に言えば「体当たり演技」です。これからが楽しみな人だが、もっと普通の脱がない映画にこれからは出て欲しい。
口直しに同様の展開だが、本作に比べればほのぼのとした「ミスター・アーサー」(ダドリー・ムーアとライザ・ミネリが出演した版)を再見したくなりました。
刺激とリアリズムが交錯する衝撃作――『アノーラ』が映し出す欲望と哀しみ
アカデミー賞で作品賞、監督賞、主演女優賞、脚本賞、編集賞の5部門を受賞した話題作『アノーラ』。事前にあらすじを調べずに映画館へ行き、先入観なしで楽しもうと思ったのですが…さすがR18指定、衝撃的な内容が盛りだくさん!
主人公は23歳のトップストリップダンサー・アノーラ。彼女と21歳のロシア人御曹司イヴァン、そして30歳の堅実なボディガード・イゴールという3人の関係が物語を大きく動かします。アメリカとロシア、お金のある人とない人、享楽と堅実さといった対比がうまく描かれていて、それぞれの立場の違いが物語に深みを与えていました。
また、風俗業界のリアルな側面も描かれており、美しく若い女性がトップに立つ一方で、そこに愛は生まれず、真の愛を求める人はその世界に足を踏み入れない——そんな冷酷な現実が浮かび上がります。欲望に満ちた世界の裏にある寂しさや哀しみが、じわじわと心に響く作品でした。
本作は単なる過激なエンタメではなく、現代の若者が直面する問題にも切り込んでいます。TikTokなどの短い動画文化に影響されやすい世代が、ギャンブルや麻薬、お金、セックスといった危険な誘惑にどう引き寄せられてしまうのか。そのリアルな描写には警鐘を鳴らすような力強さがありました。刺激的なストーリーを楽しみつつも、どこか他人事ではないような、生々しいリアリティを感じさせる映画です。
『アノーラ』は、ショーン・ベイカー監督の持ち味が存分に発揮された力作。衝撃的な内容を扱いつつも、ただの刺激的な映画に終わらず、人間の本質や社会の歪みを浮き彫りにする作品でした。刺激を求める人には十分楽しめる映画ですが、その奥にあるメッセージに気づくことができるかどうかで、見え方が変わってくるかもしれません。
アカデミー
It can be said, a modern version of Pretty Woman.
But ⅰt's not a Cinderella story. More realistic, charming, and but really sad. Anyway, I like it!
現代版プリティウーマン、またはマイフェアレディと言えなくもない。しかしリチャード・ギアもジュリア・ロバーツも、ましてやオードリーヘップバーンも出てこないし、終始現代的、現実的なストーリーにおとぎ話要素ほぼゼロ。しかし、観客はとにかく頑張るアノーラを応援したくなる。
アカデミー主演女優賞は確かにわかる。しかし作品賞に相応しいのか?(ちょっと心配) そういう風に持ち上げて美化(?)してしまうには、この映画が描く(主人公の)現実世界はダークすぎるかも
前半はシンデレラストーリー、中盤はドタバタコメディ、そして終盤は...。139分と短くはない映画ですが、テンポよく進むストーリーと個性的な、そして憎めない登場人物達に引き込まれ、一気にエンディングまで退屈せずに観られます。
中盤から暴力シーンが少なからずあるものの、コメディの域を出ないドタバタに留めて"バイオレンス"にはならない絶妙な仕上がり。この映画全体の印象を軽やかにして、"ロマンティックコメディ"(中身は全然そうじゃないけど)を上手く成立させています
「ロシア人大富豪の放蕩息子が勢いでNYのストリップダンサーと結婚」という設定が"現実的"かどうかはさておき、登場人物のキャラクターやプロットがしっかり作り込まれていて、シチュエーションごとの言動や出来事にリアリティが感じられます。まさに、よくできた映画という感じ。
ラストシーンは好き嫌いが別れるかもしれませんが、私は気に入りました。主人公の境遇や人格、人生を否定も肯定もせず、ありのままに描いているように見える。それが悲しくも美しい(と言えなくもないような...)。
心を抱くということが、どれだけ難しいのかを感じさせる物語だった
2025.3.6 字幕 MOVIX京都
2024年のアメリカ映画(139分、R18+)
ブルックリンのストリップダンサーとロシアの富豪の御曹司の結婚を巡るドタバタを描いたコメディ映画
監督&脚本はショーン・ベイカー
物語の舞台は、ニューヨークのブルックリン
「ヘッド・クォーターズ」でストリップダンサーとして働いているアニーことアノーラ・ミケエヴァ(マイキー・マディソン)は、姉ヴェラ(エッラ・ルビン)とともにブライトンビーチのアパートに住んでいた
店は客の取り合いになっていて、個室に連れていくことで給与に反映されるシステムになっていた
ある日のこと、ロシア人の青年ヴァーニャことイヴァン・ザハロワ(マーク・エイデルシュテイン)が店にやってきた
アニーはロシア語が聞き分けられるとのことで、マネージャーのジミー(ヴィンセント・ラッドウィンスキー)から接客につくように言われる
アニーはカタコトのロシア語で話し、ヴァーニャもカタコトの英語で会話を交わす
そして、二人は意気投合し、そのまま個室にてセックスをすることになった
ヴァーニャはアニーを気に入って、外で会うにはどうしたら良いかと持ちかける
そこでアニーは、友人のダンサー・ルル(ルナ・ソフィア・ミランダ)とともに、彼の家へと出向くことになった
映画はその後、1週間の専属契約してラスベガスでハメをし、そこで勢いのまま結婚してしまう二人を描いていく
だが、その結婚はやがてスクープされ、ヴァーニャの父ニコライ(Aleksey Serebryakov)と母ガリーナ(Darya Ekamasova)にバレてしまう
ヴァーニャのお目付役には、司祭のトロス(カレン・カラグリアン)が任されていて、彼は弟のガルニク(ヴァチェ・トヴマシアン)に事実かどうかを確認させる
ガルニクは何かあった時のための用心棒イゴール(ユーリー・ボロゾフ)を連れて、ヴァーニャのいる屋敷へと足を踏み入れることになったのである
映画は、ヴァーニャを捕まえるシーンのコメディセンスが素晴らしく、色々と残念な人たちのてんやわんやが描かれていく
彼らは至って真剣なのだが、そのひとつひとつが笑いの種になっていて、愛おしくも感じてしまう
さらに両親が登場してからの顛末も面白く、ヴァーニャが確保されてから、ガラッと展開が変わる流れになっていた
基本的にうるさい映画で、前半は音楽がうるさいし、中盤はアニーの絶叫がやかましい
ところ狭しと動き回るシーンが多く、セックスシーンも激しいものばかりが描かれていく
だが、この動の動きの多彩さが、ラストシーンの静の動きの対比になっていた
劇中でヴァーニャとアニーが欲していたものがすれ違っていることがわかり、ヴァーニャはそれを母親には言えない
それゆえにアニーが代弁することになるのだが、アニー自身も相当なストレスを抱えていた
彼女が欲しがったのは純粋な愛で、愛する人と結婚することを夢見ていた
それが叶ったと思ったら、母親から距離を置きたいための道具になっていて、お金さえあればその立場で我慢できるんでしょ?という精神的な乖離が生まれていた
当初はお金と結婚したと思って、それを肯定していたアニーだったが、それらが現実のものになった時、ふと自分が本当に欲していたものに気づいてしまう
そして、そういった複雑な想いが絡まった先に、イゴールとの抱擁があったのである
映画では、アニーは常にヴァーニャのそばにいるのだが、セックスは快楽で愛を確認し合う行為にはなっていない
それ以外のシーンでも、アニーはヴァーニャにはくっついてはいるけれど、抱擁という感じの温もりを与え合うという行為はなかったように思えた
イゴールとのセックスも当初はヴァーニャと同じような激しさだけだったが、イゴールはそれを拒み、彼女をしっかりと抱きしめていた
そこにはアニーが求めていたものがあって、それゆえに彼女は本当の涙を取り戻すことになる
イゴールがアニーの求めるものを与えられるかはわからないが、少なくとも、彼女が欲しかったものを再確認させる役割を担っていて、ある種の絆というものが生まれたように思えた
また、イゴールは事あるごとに「おばあちゃんのもの」というのだが、アニーのおばあちゃんはアメリカに来て英語を話さない人だった
それがアニーに夢と希望を与えたのだが、同時に絶望を味あわせることにも繋がっている
そう言った面も含めて、うまく練られたシナリオなんだなあと思った
いずれにせよ、お子様が見てはいけない映画なのだが、それはシンデレラを皮肉っている部分が多いからなのかな、と思った
お金を持った王子様はお母様の言いなりで、家族を持つという意味の深さにも繋がっていく
成人になれば本人の意思で結婚はできても、いずれは避けられない家族の問題に直面していく
ヴァーニャが何を求めているのかにアニーが向き合えばここまでのことにはならなかったし、ヴァーニャも最初からその欲求というものを仄めかしている
失敗から学ぶことは多いとは思うが、煌びやかに見えるものには多くの闇が隠れていると思うので、そう言ったところをしっかりと見極めることも、自分の幸せにとって必要なことなのかな、と感じた
親の財で生き
現実を見据えたシビアさ
ストリップダンサーがロシア人の御曹司と恋に落ちるシンデレラ・ストーリーと思いきや、さにあらず。相手の男イヴァンは裕福な両親に甘やかされた放蕩息子で、この交際は破綻の危機を迎えていく。
アノーラとイヴァンが親密になっていく序盤から小気味いいリズムで進み飽きさせない。ただ、世間知らずなお坊ちゃんイヴァンが余りにも軽薄過ぎて、この交際が上手くいかないことは火を見るよりも明らか。アノーラの想いとは裏腹に、厳しい現実が彼女の前に立ちふさがることになる。
身分の差によって引き裂かれるメロドラマというお馴染みのストーリーだが、本作はヒロイン=ストリップダンサーという設定にしたところがミソだと思う。そこには、昨今のアメリカ映画の潮流とも言える、女性に対する性的搾取という問題が垣間見える。
例えば、昨年観た「哀れなるものたち」は、エマ・ストーンが娼婦に身を落とし、そこから自らの人生を見出していく物語だった。あるいは、「プロミシング・ヤング・ウーマン」はキャリー・マリガンが下衆なナンパ男に報復していくという物語だった。実話の映画化「SHE SAID/シー・セッド その名を暴け」や「スキャンダル」という作品もあった。
これらに共通するのは、性的に虐げられてきた女性が男根主義社会に反撃をくらわすというジェンダー平等の提言である。
本作のアノーラもセックスワーカーであり、男性客に性的な奉仕をして生活をしている。そういう意味では、一連の作品に共通するヒロイン像と言える。ただ、本作がこれまでの作品と違うのはその描き方である。
これまでなら自分を虐げてきた周囲を見返すような反撃が描かれていただろう。しかし、本作は極めて現実主義的でシビアな展開に終始するのだ。
確かにアノーラはイヴァンの両親が差し向けたお目付け役に反抗して見せるが、所詮は非力な女性である。腕力では男たちに到底かなわず、彼等の前では屈するしかない。特に中盤、彼等に軟禁されるシーンは印象に残る。彼女は大声で「レイプ!」と連呼する。しかし、その声は屈強な男たちによってかき消されてしまう。
本作を観ると、先の作品が全てファンタジーのように思えてしまう。
昔に比べたら確かに女性の地位は向上したと言えるだろう。しかし、現実にはまだアノーラのように身体的、社会的に力の弱い女性がいるということを、この映画は語っているような気がする。昨今の潮流を考えると、こうした厳しい現実を提示して見せた所は本作の大きなトピックではないだろうか。
製作、監督、脚本、編集はインディーズ界の雄ショーン・ベイカー。一貫して社会の下層に生きる人々を描いてきた俊英である。
持ち前の軽妙な演出は前半のラスベガスの豪遊シーンや、中盤のドタバタ騒動劇で発揮されている。シリアスとコメディが入り混じるバランス感覚も絶妙で、とりわけラストシーンは秀逸だと思った。
キャストでは、何と言ってもアノーラを演じたマイキー・マディソンの圧倒的なパフォーマンスに痺れた。フィルモグラフィーを見ると「ワンス・アポン・ア・タイム・イン・ハリウッド」にチョイ役で出演していたらしいが、まったく覚えておらず。今回改めその魅力を確認した次第である。
劇中では非常にパワフルで快活なのだが、時折見せる憂いに満ちた眼差しが印象に残る。セックスとゲームしか頭にないイヴァンを見る目に彼女の不安が透けて見える。彼女自身、この関係が長く続かないと、心のどこかで予感していたのではないだろうか。
また、イヴァンのお目付け役の一人イゴールを演じたユーリー・ボリソフは、本作で最も好感を持てた俳優である。彼は「コンパートメントNo.6」でも似たようなキャラを演じており、そちらでも好印象だった。
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