ANORA アノーラのレビュー・感想・評価
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アメリカンジョーク
t.A.T.u.は今でもお騒がせロシア人のポップアイコンなのか?
2024~25年の世界各国の映画賞受賞(ノミネート含)した作品を、世界の人は何を見て、どこを評価したのだろう。
職業差別や親の教育のあり方などへのアンチテーゼか?
いくらR指定されているとはいえ、冒頭からセクシーを超えたエロティックシーンだらけ。そしてその後は「Fワード」だらけ。ここまで連発され続けられると不快極まりない。本当に帰りたくなった。しかし30分位過ぎたら話の内容が大きく変わった。帰らなくて良かったが、不快の質が変わっただけで不快なのは変わらない。
『ロシア系アメリカ人でストリッパーのアニー』と『ロシア大富豪のバカ息子イヴァン(「イワンのばか」っていうロシア民話あったね)』が結婚したが、両親の部下が二人がいる家に乗り込みわちゃわちゃする。その隙にイヴァンは逃走する。拘束、暴行、拉致、器物破損、なんでもあれ。
泥酔状態での結婚無効は実際にあるらしいが、成人二人の結婚を親が無効化できるのか?ただイワンのばかは、独り立ち出来そうにないので無効化に同意は正解だと思う。でもラストのアニー、本当は別れたくなかったのかな。
R18+
紹介文にある通り、ストリップダンサーのアニーことアノーラが
ロシアの金持ちのボンボンと結婚したことから始まるドタバタ劇。
で、なぜこの映画がR18+なのかというとやはり全裸になっての性描写が
刺激的すぎるから。でもこの作品には重要な要素であった。
親の金で遊び放題のイヴァン。当然抱いた女は数知れないだろう。
そんな彼が高額報酬で「契約彼女」になる話を持ち掛けたり挙句には
「結婚しよう」と言い出す。恋愛感情が芽生えるほどの深い付き合い
ではないのに彼女を独占したいとまで思うのは、やっぱり体の相性が
良かったからだろう。
表向きはストリップダンサーでも個室で”裏オプション”をしていた。
劇中で「イヴァンが娼婦と結婚した」「私は娼婦じゃない」という会話が
あるが、肩書は違ってもやることは一緒だった。目的はお金だし。
イヴァンが夢中になるくらい良い女性はつまり「床上手」「名●」
だったに違いない。これを言葉で説明するよりも映像で見せた方が
説得力がある。それであんなにベッドシーンを入れたのだと思う。
マイキー・マディソンはセクシー系に特化した女優ではないが
よくぞ体当たりでこの役を演じたなと思う。スクリーンの彼女は
とても魅力的だった。
米国人と結婚すればグリーンカードが取得できて米国に永住できるから
という思惑がイヴァンにはあったにせよアニーを結婚相手に選んだのは
体が堪らなく魅力的だったからに違いない。
そして親に相談もせずイヴァンが結婚、しかも相手が風俗嬢と知れば
反対して当然だし二人を引き離そうとするのは目に見えていた。
そこからのドタバタは思っていたよりもコメディー要素満載だった。
見た目が屈強な男2人が送り込まれる。片方(イゴール)はどことなく
プーチン大統領っぽい外見(個人の感想)。予告編で見た印象では
2人はもしかしたらロシアンマフィア?と思ったが反社ではないみたい。
で、見た目とは裏腹にちょっと間抜けでアニー相手に苦戦するところが
面白い。
勢いに任せてノリで結婚してしまったとは言え、成人男女が自分の意志で
結婚して法的に認められているのだから撤回しろと言うのは理不尽だ。
アニーが正論をぶつけて真っ向から対立するところが小気味よい。
ところが甘やかされて育ったイヴァンはアニーを置いたまま一人で
逃げ出してしまう。しょうもない奴だ。
この映画の上手いところ。登場人物が、それぞれの成り立ちや属性に
相応しい振舞い方をする。物語自体は現実には起こりそうもない話なのに
彼らの行動には妙に納得できてしまう。
馬●息子は最後まで馬●息子のままだし、大富豪の両親も「やっぱりね」
な感じ。そして結婚を全力で撤回させに来る連中は雇用主の意向に沿う
必要性であのような行動を取った。
アニーの職場の人間関係も「こういう人いるよね」と思える。
アニーことアノーラは、お金のために風俗店で働く女性だが決して馬●では
なくて状況に適応するしたたかさ、ちゃんと自己主張する強さを持っている。
めちゃくちゃお下品な言葉で相手を罵ったりするのは育った環境からか。
途中ちょっと中だるみを感じる時もあったが全編でジェットコースターの
ような疾走感で話が進んで飽きなかった。人物描写もさすがだと思った。
騒動が決着してからのラスト。伏線を小出しに入れてはいたが、そう来たか!
イゴールは必要に迫られてアニーを拘束したり嫌われる行動はあったが
根は良い奴のようだった。
馬●息子との結婚が結局撤回されて良かったしそれなりのお金を受け取って
いたし、意外と誠実な男性と出会えたしで人生捨てたもんじゃないと思った。
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余談
平日の午前中の回。予約した時点では空席がたくさんあったが当日入場すると
約300席の7割近くが埋まっているまあまあの入り。アカデミー賞効果を実感。
両脇が空いていればいいなと思ったが上映時間ぎりぎりに自分の左に若い男性が
着席。紙袋に入ったフライドポテトに味付け用の粉をかけてシャカシャカ。
ポテトの匂いもしてきた。これって売店で売っていたっけ?
同じ列の右側2席ほど離れたところに老カップル。女性は呼吸器系の疾患?
まるでいびきをかいているかのような呼吸音。時々咳もしていた。
何となく気が散った。
終映後の老カップルの会話。「何だか思った通りじゃなかった」
「プリティ・ウーマンと全然違ったね」←何を期待していたの?
比較対象がプリティ・ウーマンとは恐れ入りました。
(追記)プリティ・ウーマンと比べたのはそういう宣伝の仕方をしていた
からだと分かりました。失礼しました。
バカップルのゴタゴタを2時間以上観るのはしんどい
身分違いの恋
現代版シンデレラストーリー 愛を知らない姫の心を射止めた真の王子は...
アノーラは愛を知らない。家庭のぬくもりを知らずに育った彼女の周りに集まってくる男たちはみんな彼女の体が目当て。彼女のセクシーダンスに男たちはこぞってお金を払う。
アノーラはまともな教育も受けられず、食べていくための職業はおのずと限られる。それでも彼女は生きていくために真摯に待遇の悪いエロティックダンサーの仕事を日々こなしていた。
そんな彼女に転機が訪れる。店に訪れた上客のロシアの大富豪の息子に見初められるのだ。もちろん二人の間に愛情などというものはない。バカ息子はただのお遊び、アノーラはお金が目当てだった。そんな二人の結婚生活が破綻するのは誰が見ても明らかだった。
前半はうんざりするほど彼らの狂乱っぷりを観客は見せられこの二人が幸せになれるはずがないと誰もが確信する。その通り物語は進んでいくが意外なダークホースが現れる。
イヴァンの両親に雇われているアルメニア系アメリカ人の三人。この中で独特な空気感を漂わせる男イゴールは用心棒としてアノーラたちの前に現れるが、けして冷酷な暴力をふるう男ではなく暴れるアノーラに怪我をさせないよう彼女を慎重に抑え込む。
しかしそんな彼に暴力を振るわれたと言い続けるアノーラ、自分をレイプする気だった、自分に暴力を振るったと言い続ける。しかし、イゴールにはそんな気はなかった。これはアノーラの中に培われた男性観によるものだろう。男はみんな自分の体が目当て、金を出すか暴力をふるうか。彼女の生い立ちがそんな男性観を作り上げたのだろう。
もちろん彼女も彼に向かってアルメニア人が、と罵る。ユダヤ人同様受難の歴史を持つ彼らへの配慮を教育を受けていない彼女は持ち合わせていなかった。彼女もけしていい子ではない。愛を知らない彼女はまだダイヤの原石でしかない。誠実な相手との出会いと摩擦で磨かれることにより彼女はその輝きを手に入れることができるんだろう。その相手はもちろんヘタレのイヴァンではなかった。
中盤は延々とアルメニア人三人組とアノーラによるイヴァン捜索の爆笑珍道中が描かれる。駐禁を食らった車をレッカー車から無理やり引き離したり、聞き込みをする店の無礼な若者に説教たれたり、車内で嘔吐したりと、いったい何を見せられてるんだろうか。現代版プリティウーマンを期待した観客は肩透かしを食らわされる。しかしこの珍道中の合間にもイゴールはアノーラへの気遣い忘れない。そんな彼に相変わらずひどい言葉を浴びせ続けるアノーラ。
すべての決着がつき、アノーラを家に送り届けたイゴールは隠し持っていた結婚指輪を彼女に手渡す。それを受け取った彼女はイゴールに体を与えようとする。
彼女は常にこうしてきた。お金のために見返りとして体を与える。男は自分の体目当てにお金を払う。
しかしイゴールはそれを拒む。彼がしてきたアノーラへの数々の優しい気遣い、それは純粋な思いやりからだった。彼女を憐れんで彼女の力になりたいという純粋な思いからだった。
見返りを求めようとしないそんなイゴールの姿に彼女は戸惑う。見返りを求めない、彼女の体が目当てでない人間がこの世にいることを初めて知り戸惑いそして涙する。
無償の愛を与えようとするイゴールの姿に人間の優しさをはじめて感じ取った彼女はただただ涙するのだった。
不遇な生い立ちにより彼女にかけられた愛を知らないという魔法はイゴールという本当の王子により解きほぐされていくのだろう。
タイトルなし(ネタバレ)
2023年のマイベスト映画が「コンパートメントNo.6」な私はこの映画、もはやすごい早い段階で涙が出てきて、ラストで静かに泣き、パンフレットを涙ぐむしまつでどうやっても泣いてしまう。
アノーラの家(正しくはイヴァンの両親の家)に入ってきたイゴールがコンパートメントメントでリョーハを演じていた彼だと気がついたときから
アノーラを目で追うイゴールを私もつい目で追ってしまう。イゴールはあの奇妙な人探し珍道中の中で状況を理解し、疑問を持ち、静かに考えていた彼がアノーラの救いになる結末にほんとうに泣いてしまった。
最後の夜、自分のことをレイプしない(したいと思わない)男を珍獣を見つけたような驚きでアノーラは見つめている。
そんなやついるのか?というフレッシュな驚きを感じられる環境で彼女が生きてきたことがわかる。
ショーン・ベイカーはセックスワーカーをジャッチしない説教しない、搾取しないとゆう言葉がパンフレットにあるように、フラットで注意深い目線でマイノリティ達を写すことが分かっているから、とんだ乱痴気騒ぎの物語だけど安心して観れるのが彼の映画の好きな所。私は過去作の中でタンジェリンが好きなので原点回帰的なこの作品の作りも大好きだ。
この作品に出会えさせてもらい感謝
現実を突きつけられる
だからなんやねん!!
結構音がうるさい映画なので、映画用耳栓の着用をお勧めします。以下バリバリ主観の駄文失礼🙏私、ラブコメ作品は基本グッとこない冷めた人間です…なんでこれ観たんやろ…
アカデミー賞というところは意識せずに観たかったんやけど、うーん作品賞も主演女優賞も受賞か…よくわからんと思ってしまう。数多く上映された中でこの映画が2025年度の最も優れた作品なん?
笑えないし、泣けないし、昨日のブルータリストに引き続き一体この長い時間何を見せられてるんやろ?と思い時計を何回も見てしまった。特にあのお家の中での乱闘シーン。もううるさくてうるさくてたまらずアノーラが叫ぶシーンで観るのやめようかなとも思った。この映画、英語がわかるかたなら見方が違うのかな?とも思う。ギャグシーンとかあったんかな。
それぞれキャラクターは個性あふれているのだが、どの人にも感情移入できず。みんなめっちゃ怒鳴るし。アノーラに対してはよく考えてみ?冷静にならなあかんで。そんな上手い話あるわけないやろと🙄(辛口ごめんね、アノーラ。)最後も都合いいなあなんて思ってしまいいまいち好感が持てないキャラクターやった。ただ、都合いいなと思いつつ最後のシーンは印象的。
ここ最近のアカデミーは、大衆受けではなく通だね〜!と言われるような作品が評価される流れがあるなあと思う。
デミムーアのサブスタンスはこれから公開やからそちらに期待することにしよう…
R 18に相応しい
アカデミー賞受賞とお洒落なポスター、彼女を誘って観に行くと引かれてしまうくらいR18に相応しい前半。
いきなり説教を始めるトロス、鼻が折れて吐くほど気分が悪いのに行く先々で女の子を口説いてるガルニク、サイコ野郎ゲス男がだんだんとカッコよく見えてくるイゴール、アルメニア・トリオが憎めない、愛おしくさえ思えてくる中盤。
降り頻る雪、車内に響くエンジン音と断続的なワイパーの音、どんな美しいメロディや歌詞よりも哀しく胸に残るラスト。
アカデミー賞作品賞に相応しいかどうか、賛否はあるだろうが、賞を狙いにいっているような作品じゃないこういった作品が受賞するのは嬉しいサプライズですね。(近年はアカデミーがサプライズ狙いにいってるみたいですが)
どこまでも応援したくなる魅力的なアノーラを演じたマイキー・マディソンは文句なく主演女優賞に相応しい。
HEAD QUARTERSへ行きてぇー!
世界中のアノーラたちに幸あれ
祝!本年度アカデミー賞作品賞受賞!
昨年度のカンヌ国際映画祭でもパルムドール受賞!
カンヌのパルムドールとアカデミー作品賞をW受賞したのは『パラサイト 半地下の家族』以来。
どんだけ敷居の高い作品かと思ったら、これが意外や意外。
身分違いの恋×シンデレラ・ストーリー。
私的にはドタバタ・コメディにも思えた。
だけど勿論、ただのそれだけじゃない。
身分違いの恋×シンデレラ・ストーリーに一捻り。
ドタバタ劇はヒロインのパワフルな姿。
アノーラに喝采!
NYのストリップクラブでダンサーをするロシア系アメリカ人のアノーラ。通称アニー。
生活は貧しく、特に夢も無く、安い賃金の酷い職場で、毎日毎日客の相手。
この社会のピラミッドの底辺。それがある日突然一変するのだから、人生は分からない。
ロシア語を少し話せるので、ロシア人客の相手。
今時な青年。名はイヴァン。
ロシア語で会話したり、その場のノリノリ雰囲気で楽しい一時を過ごす。
この時一回限りの客かと思いきや、気に入られ、彼の自宅へお呼ばれ。
訪ねてみたら…、驚いた!
粗末な我が家なんて言うが、超豪邸。セキュリティも万全、家の中は広く、高価そうな家具、エレベーターも付いている。専属家政婦もいる。
あなた、何者…?
ちょっと濁すような言い方だが、両親はロシアで“凄い人”らしい。ググればすぐ出るほど。
イヴァンは超金持ちの息子。ボンボン、御曹司。
しかしそんなお高い性格じゃなく、人懐っこく、無邪気な子供のよう。アニーにぞっこん。
アニーも超金持ちの息子と昵懇になれて、豪邸で過ごせて悪い気はしない。
以来、何度かお呼ばれ。お酒を飲んで飲んで、ヤッてヤッて、楽しいエッチな時を過ごす。
ある時イヴァンから提案。ただの客じゃなく、専属になって欲しい。つまり、“契約彼女”。
一週間。報酬は1万5000ドル。
双方合意の上でのお遊びの筈だった。
イヴァンはセクシーでキュートでホットな“彼女”を自慢。
友人らを招いたり、外で遊び歩いたり、毎日毎日どんちゃん騒ぎ。
ベガスにもひとっ飛び。美味しいもの食べて、お酒ガブ飲みして、時にはハイになって、勿論ヤッてヤッてヤリまくって…。
クッソ、金がありゃ何でも出来る。羨ま…いい加減にしろよ、こら!
ずっと底辺にいたアニーにとっては、信じられない別世界。そこに、アタシがいる。
やっぱり悪い気はしない。イェーイ、サイコー!
楽しい時はあっという間。一週間なんて秒。
イヴァンはロシアに帰ったら父親の会社で働く事が決まっている。が、どうもイヴァンは両親の事が好きじゃないよう。
ロシアに帰らず、このままアメリカに残りたい。
方法は一つ。アメリカ人と結婚して、アメリカ人になれば…。
例えば、君と。
…えっ? プロポーズ…?
いつもおふざけのイヴァンもこの時は真剣に。
あくまでお金や契約など割り切ってたアニーも、熱い想いがたぎる。
そのままの足でチャペルに赴き、結婚。夫婦に。
君を愛してる。あなたを愛してる。
世界は私たちのもの。世界は私たちを中心に回っている。
合意の上の契約交際が本気となり、結婚。
王道の身分違いの恋×シンデレラ・ストーリーは、エネルギッシュで若さに溢れたラブストーリーに。
ひと昔前の映画だったら、ここでハッピーエンド。
でも、まだ半分も経ってない。
それにたくさんの映画を見てれば、何となくこの後の展開は予想出来る。
一見、ハッピー。が、違う見方をすれば、ハイテンション女の子と金持ちバカ息子が衝動的に結婚しただけ。
ハッピーエンドだけで終わらない。
イヴァンが結婚した。しかも、娼婦と。
噂で持ち切りになる。NYに住むとあるロシア人たちの界隈で。
アルメニア人のトロスは、子供の洗礼式の途中、誰かからの電話に冷や汗。二人の男、ガルニクとイゴールをイヴァンの豪邸に向かわせる。
アニーとイヴァンが真っ昼間からヤッている所に、やって来たガルニクとイゴール。
イヴァンは物凄い剣幕で追い返そうとするが、二人は引き下がろうとしない。
トロスやあなたのご両親から言われてきました。
“両親”という言葉に急に萎縮するイヴァン。
何故彼がそんなに両親にビビるのか。まあ、すぐ予想は付く。
ガルニクとイゴールは雇われ用心棒。トロスはお目付け役。
つまり、“そっち”の世界。
イヴァンの両親はただの超お金持ちではなく、ロシアの裏社会の超大物。ロシアのゴッドファーザーのような、新興財閥の一族だった…!
息子の衝動結婚に猛反対の両親。離婚ではなく、そもそも結婚を無効にする為、こちらにお出でになるという。
その間、トラブルが無いように。トロスもイヴァンの豪邸(正確にはイヴァンの“両親”の豪邸)に向かい、ガルニクとイゴールに釘を刺す。
ところが、イヴァンが隙を付いて逃げ出す。アニーを置いて…。
哀れ置き去りのアニー。ショックに沈むかと思いきや、ギャーギャー喚き、Fワードを吐き散らし、物を投げ付けるわ、逃げ出そうとするわ、大暴れ。
ガルニクとイゴールも負傷するほどたじたじ。力自慢のイゴールがようやく取り押さえる。
トロスがやって来てもまだまだ収まらない。
仕舞いには、「レ~イ~プ~!」と大絶叫。
猿ぐつわで黙らせ、少し冷静になり、トロスと取引。
アニーはイヴァンと会って話したい。この結婚が合法である事、私たちは愛し合っている事、無効になど絶対させない事。
話せばいい。が、イヴァンを探し出したら、即結婚無効手続き。勿論手切れ金は払う。
目的は違えど、逃げたイヴァンを探したいのは双方同じ。
イヴァンを探しに4人で街をあちこち訪ね歩く事に…。
幸せの頂点から、一気に急落。
怪しい男どもと逃げた夫探し。アタシ、何やってんの…?
見てて気の毒なアニー。トロスたちにもちと同情。ボスの命令とは言え、バカ息子に振り回され…。うんざり面倒臭い仕事。
真冬の夜。手掛かりナシ。疲労困憊。イライラも募る。
それでもまだアニーはイヴァンを信じていた。
探し回って、探し回って、遂に意外な場所で見つかった。
イヴァンと出会ったアニーの元勤め先のクラブ。そこで泥酔した状態で、アニーの同僚とやってる最中に…。
イヴァン確保。でも、これで終わりじゃない。寧ろ、ここから。
アニーはイヴァンと話をしようとするが、泥酔状態で埒が明かない。
夜が明けた。たった一夜の出来事なのに、何日も経ったような…。
早速裁判所に赴いて無効にしようとするが、ベガスで結婚したのでベガスで手続きしなければならない。
何処まで面倒掛ける!? イヴァンの両親が来る前までに済ませておきたかったが、間に合わず、イヴァンの両親がお出でに。
母親は開口一番ヒステリック。父親に事情を説明するトロスは低頭しきり。
酔いが醒めてきたイヴァン。面と向かってバカ息子、バカ息子と言われ、さすがのバカ息子も言い返すかと思ったら、根っからのバカ息子だった。
両親の言いなり。両親と会う前の威勢の良さは何処へやら…。
やっと気付いたアニー。気付くのが遅いかもしれないが、彼女は最後の最後まで信じていたのだ。それだけに…。
イヴァンの両親はアニーをアウト・オブ・眼中。殊に母親は話し掛けてようやく顔を合わせたら、あからさまに見下し。アンタや家族や友人皆を破滅させてやるとまで脅し。
イヴァンはイヴァンで、あんなにヤリまくって愛し合ったのに、急に冷めたように…。
イヴァンも、この家族も、最ッ低!
無効手続きにサイン。去り際、クソ最低一族に“餞別”の言葉。
ここにアニーの味方はいない。ただ一人を除いては…。
イヴァンの両親は最低。(父親は最後、母親に言い返したアニーに喝采大笑い)
アニーを置いて逃げ、挙げ句両親の言いなりのイヴァンもクソ男。
そんなクソ男に惚れるアニーも…との意見は少なからずあるが、誰がアニーを責められようか。
ただただ真剣に愛を信じ、真っ直ぐに、幸せを自分で掴み取ろうとしただけ。
生まれや自分の境遇や逆境や偏見にも負けない。めげない。
社会の底辺で生きる人々を描いてきたショーン・ベイカー。その一つの到達点。
開幕からテンポ良く、飽きさせない演出力は確かなもの。
センスやアート性を感じつつ、本作はエンタメ性もあり。
見た事ある監督作は『フロリダ・プロジェクト』くらいだが、ずっとインディーズ・シーンで活躍してきた異才が、カンヌやアカデミーで頂点に。
監督もまた“アニー”のような体現者であろう。
立役者がもう一人。マイキー・マディソン。
突如として現れた新星と言われているが、映画出演はちょいちょいあり。『スクリーム(2022)』は印象に残った。
脇役だった彼女を監督が大抜擢。初の主演や監督の期待に遥かに応えた。
大ハッスル! 笑って、ハイになって、喜んで、楽しんで、喚いて、叫んで、暴れて、パニクって、ショックして、悲しんで、泣いて、全ての感情を。それでいて力強く、ポジティブに。
大胆なヌードや激しい濡れ場も体当たり。(監督とマイキーの双方の合意でインティマシー・コーディネーターは付けなかったという)
セクシー、キュート、作品の源とでも言うべき圧巻圧倒の演技力、存在感。
マイキー・マディソンの魅力、大大大爆発!
それにしても『スクリーム(2022)』からメリッサ・バレラやジェナ・オルテガに続き、また一人飛躍したね。改めて『スクリーム(2022)』見直したいなぁ…。
実はアカデミー主演女優はデミ・ムーアを応援していたが、マイキーも分かる気がする。いずれ『サブスタンス』を見てから自分なりの判定を。
クソバカ息子を演じたマーク・エイデルシュテインもある意味天晴れ。彼のクソバカぶりが無かったらアニーは輝かなかった。
監督の才とマイキーの魅力炸裂だが、MVPが。イゴール役のユラ・ボリソフ。
前半はほとんど無口。でもその分、誰よりも事の成り行きを見つめ、アニーを見守っていた。
言葉は発せずとも、不器用ながらも時々、アニーにスカーフを差し出したり、ペットボトルを渡したり。
彼の眼差しが物語ってる。アニーに同情。彼女の力になってやりたい…。
アニーにどんなに罵られ、侮辱差別的な言葉言われても(アニー、なかなかに言葉が悪い…)、陰ながら寄り添う。
無効手続きの場。ずっと無口だったイゴールが、思わぬ言葉を。
イヴァンはアニーに謝るべき。
よく言った、イゴール!
アニーが帰るまで付き添い。最後の夜、二人で酒やハッパをやりながら、他愛ないお喋り。
アニーの言い方は変わらずキツいが、イゴールも意外と饒舌。笑うとナチュラルなナイスガイ。
アニーは自分の事を“アニー”と呼ばせているが、イゴールは本名の“アノーラ”の方がいいと。
“アノーラ”の名前の意味は…。
カンヌやアカデミーを獲ったからって、お高く身構える事はない。
他愛ない話を捻りを加えて面白おかしく。
何より逞しいアノーラの姿に元気や勇気を貰える。
何か、思ってた以上に面白かった。
カンヌやアカデミーがこういう作品を選ぶとはねぇ…。
『オッペンハイマー』とは大違い。
人によって好みはあるかもしれないけど、近年のカンヌやアカデミーでも割かし間口は広い気がした。
だけど、明るさ楽しさだけじゃない。最後の最後はしんみりさせられた。
アノーラを自宅アパートまで送り届けたイゴール。
預かっていたイヴァンとの結婚指輪を返す。
何の感情に付き動かされたのか、イゴールとSEXを。
二人が惹かれたのは個人的には蛇足感。シンパシーだけに留まって欲しかった。
が、キスを返そうとしたイゴールを、アノーラは叩き返す。
そこに恋愛感情は無く、寄り添ってくれたお礼だったのかもしれない。
それにアノーラは愛に裏切られたばかり。まだ新しい恋もする気は起きない。
途端に泣き出すアノーラ。これまでずっと強気でいたが、急に悔しさが込み上げてきたのか。
言葉無く、ただ抱き締めるイゴール。
アノーラもイゴールも社会の底辺で生きる者。
いつだって彼らや同じ境遇の人々は、金持ちバカ野郎どもの犠牲者。
彼らのリアルな姿、涙、声を聞け。
そして世界中のアノーラたちに幸あれ。
ええー?
アカデミー賞後
これが今のアメドリなのか…
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