劇場公開日 2025年2月28日

ANORA アノーラのレビュー・感想・評価

全338件中、81~100件目を表示

3.0長さは半分でいい

2025年3月8日
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前半の「ポルノ&享楽」シーンが一時間もある。長すぎるだろう。そこからドタバタコメディになって面白くなってはきたが、人探しのくだりも長すぎる。

あと、ドラ息子の母親ににやられっぱなしなのはアノーラが可哀想すぎた。ちょっと言い返したくらいではね。負けて終わるのはいいとしても何か一矢報いてほしかった。

良心的なゴロツキと心を通わせるという展開、そこからのラストシーンなど部分的に見るべきものはあった。なので佳作とは言える。
ただ、アカデミー賞とか言われるとね。そこまでのもんじゃないでしょと。

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水原秀策

3.5女性のための女性の作品

2025年3月8日
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60代の男です

4.0ラストシーンの主人公の心情が複雑すぎる

2025年3月8日
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楽しい

難しい

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nashi

4.0もらい泣き・・

2025年3月8日
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最初、この映画のサブタイトルかと思った「BITTERS END」は配給会社でした♪・・・。
シリアスでもあり・・ドタバタコメディーの要素もありの・・R-18のオスカー作品賞映画♪

成金のボンボンは、どこの国でも似たようなボンクラなのでしょう・・。
イゴール役ユーリーボリソフさん、助演男優賞ノミネートに相応しい、素晴らしい表情の演技♪
表情の一挙手一投足に、イゴールさんの真の心の内が滲み出ているようで・
アニーがプライベートジェットに搭乗拒否した時の繊細な表情など・・♪
ラスト・・やはりそういう人でした♪

もう「プリティウーマン」や「シンデレラ」は、おとぎの国の話なのかもね・・・。
本当に悔しくて悲しくて・・そんな時は・・あのように号泣するのでしょう・オスカーの主演女優賞も納得のシーン
・・心中思い計って、思わずもらい泣き・・
パリ五輪の、阿部詩さんを思い出しました。
でも・・涙を受け止めてくれる人がいて良かった・・。

ハリウッドも色々と問題もあるでしょうけど・・アメリカのショービジネスの懐の深さを感じ取れる映画でした♪

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J417

4.0アンチシンデレラ

2025年3月8日
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違うかもしれませんがギャルの生き様を感じました。
ストーリーはそんなに突飛ではありませんでしたが人生讃歌というかイチャつき具合がたまらなかったです。

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rakugoya1

4.5タイトルなし

2025年3月8日
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ひとつの映画にふたつの物語があるみたいだった

アニーことアノーラの仕事、出会い、享楽にふけるだけの日々、結婚…
ここまででひとつの夢物語

そこに当然現れる現実
その現実を連れてくる人々
ここからもうひとつ

その日々の元資金はどこから?と考えるまでもなく、そこ抜きではその先はない、という現実がやってくる
とはいえ、予想よりコメディだった二幕目の役者が出揃い始めてのしばしドタバタ劇

予想を裏切ることのない御曹司の御曹司っぷり
分かってたけど、どうしようもないわ、こいつ(笑)
ただ、アニーがたくましいし、賢い
若さ故の現実見えてない部分はあっても、あの状況で、あのたくましさ、弁が立つ抵抗っぷり
そして、エンディングへ向かう心の動き

ダイヤモンドの嫉妬がうっとおしいくらいだけど、アニーも見えてなかったわけではないんだろうな
だから、余計に腹立ったんだろうな
そんなことも分からないバカな小娘ではない
でも、しばし、夢を見たんだろう

両親出て来てからのアニーの様子は見ていて切なくなるし、腹立たしいし、、
けれど、ちょいちょい啖呵切ってくれるとこがよい
しようもない親、しようもない息子

イゴールが、なにげにこの人、悪い人じゃないよな感があったけど、いいキャラだったな

ラストのラスト、そう終わったかー
ワイパーの音かー

オープニングとは真逆な静かで色のないエンディング

なんだ、これ?
めちゃくちゃ面白いじゃないか!!!

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yukarin

5.0前半エロ後半コメディの傑作

2025年3月8日
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2025年劇場鑑賞74本目。
エンドロール後映像無し。

アカデミー賞獲ったというので、堅苦しい陰鬱としたストリッパーの映画かと思いきや、まぁ前半はエロエロで、いや脱いでダンスで満足できるなんて皆さん紳士だね、と思ってたらやっぱり裏オプションがある子もいますよね。主演の子がとにかくエロかわいくて、ベッドシーンも何回も出てきます。シーン自体は短いのですが、もうなんかおつまみ感覚で随所に提供されます。ぼかしが入るような野暮な撮り方はしていなくて、なんかこううまく見えない感じでパンパンパンという流れです。

このまま肉欲に溺れた感じでいくのかな、と思う頃にロシアから送られたずっこけトリオの登場で一気にコメディになります。みんなハゲ頭のイゴール君に頑張れ!くじけるな!と声援を送っていたのではないでしょうか。

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ガゾーサ

4.0シンデレラ

2025年3月8日
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泣ける

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難しい

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まこやん

1.5なぜこんなに評価が高いのかわからなかった

2025年3月8日
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長い

見る気ないけど、どんな話か知りたい方の為に、令和版プリティウーマンのバッドエンドverです。

正味45分もあれば完結する話なんだが、無駄にセックス描写が多くて、散々擦り倒されてきた話だし。
パパ活女子の金銭感覚バグらせるために豪遊させるおっさんの話思い出した。
道楽のために人の人生を振り回して何とも思わない人間なんてざらにいるしなぁってなっちゃって、、全く良さが見出せなかった。
うんうんほんで?って話だと思う。
40分くらいであの話描いて残りの60分でその後のアノーラを描かないと令和の時代ではあのままで別にいいとか何も変わらない現実とかも描かないときちんと理解できる人少ないのでは?という気がしてならない。

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ぽな

5.0良い意味で期待外れ

2025年3月8日
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楽しい

興奮

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shin-zy

5.0アメリカの中のロシア

2025年3月8日
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アメリカの中のロシア人を通してアメリカ社会の陰を描く力作。アニーの抵抗に拍手喝采。

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YUKI

5.0今回は数少ない女性のフォロワーに見捨てられてしまう男の本音を語るぞ❤️

2025年3月8日
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病人28号

3.0映画版ノンフィクション

2025年3月8日
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悲しい

興奮

ジョーンベイカー監督の作品はタンジェリン、フロリダプロジェクト、レッドロケットと鑑賞済。自分の中ではアメリカの映画版ノンフィクションと勝手に思っている。容赦なく現実を突きつけてくるので好きな監督である。
しょっぱなからエロ全開でテンポよくノリノリで話が進み、快楽に溺れる夢のような展開で観ているこちら側も夢心地にさせられる。
が、後半は悪夢の一夜が一時間くらいかけてほぼ会話劇で展開され、一気に現実に引き戻される。鑑賞中はナゲーな。。と思っていたが、いま振り返ると、夢のような幸福な日々は一瞬で過ぎ去り、辛く重い現実は永遠に思えるほど長く感じる、その対比を出すためだったのかなと。予想通りの展開ではありましたが、余韻の残る終わり方はとても好物。アノーラ役のマイキーマディソンもエロくて可愛過ぎて100点。
イヴァン役のロシアのティミーと言われるマークエイデルシュテインも富豪の放蕩息子っぷりが外見と動きに滲み出てて素晴らしかった。イゴール役のユーリーボリソフは単純に好きなタイプ以上。
パルムドール作品大好きマンなので、パルムドール受賞は納得なんだけれども、アカデミー作品賞となると、個人的にはなんか、ちょっと違うかなと思ってしまいました。

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kuronelius

3.0物足りない

2025年3月8日
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喜怒哀楽を爆発させて表現し描いたエロチックな映画。感情表現は素晴らしい特にセクシャル行為は圧巻して激しいです。
ただストーリーは平凡でした。
失踪した男の行方は予測できますが発見した時に二転三転した展開を期待していたが物足りない映画でした。

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アトレイル

4.0いやーさすがのショーンベイカー監督作品って感じ。フロリダプロジェク...

2025年3月8日
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いやーさすがのショーンベイカー監督作品って感じ。フロリダプロジェクトから一貫して変わらない「物語の続きを観たくなる」エンディングがたまらない。
赤いスカーフの使い方もめっちゃ良い。
バカ息子に謝罪を迫るシーンは笑えた、あのお父さんは良い! イゴールの無骨不器用な感じも大好き!

アカデミー賞受賞するのは意外だった、そのお陰で劇場には結構な高齢の夫婦とか多かったけど大丈夫か?と心配になった。
あの監督の映画を見慣れてない方には刺激が強いと思う

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Mk.plass

4.0ばーちゃんのクルマ

2025年3月7日
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カリメロ

3.0最初っからお尻!18禁ってこんなん? ストリップダンサーって言うか...

2025年3月7日
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最初っからお尻!18禁ってこんなん?
ストリップダンサーって言うからもうちょい踊るんかと思ったけどエロばっかで…
これを見させられるのかと思ってウンザリしてたら、途中から展開が変わった?と安心してたら暴れるしうるさい。
もしかしてアホボン?どうやらシンデレラストーリーではないようだ。
そりゃそうだよな。そんなうまくいくわけないやろ
ママから逃れたかったって言うのを聞いてパパが笑ってるのだけは救われた。
最後はまた…。ヤリ過ぎ。もっと短くできた。
アノーラ、好きにはなれないが可哀想になって来た。惜しげなく披露した体も綺麗だった。
金持ちのアホボンに振り回された大人達。
これがアカデミー賞か

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花

4.0煌びやかでセクシュアリティーなガワの裏にある、確かな寓話性。

2025年3月7日
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悲しい

【イントロダクション】
ストリップダンサーとして働く1人の女性、“アノーラ(アニー)”が、客として訪れたロシア人の御曹司に見初められた事をキッカケに、豪華で煌びやかな世界へ足を踏み入れるシンデレラ・ストーリー…の先にある“現実”を描いたR-18指定作品。主人公アノーラを演じたマギー・マディソンの体当たり演技が炸裂する。監督・脚本に『フロリダ・プロジェクト/真夏の魔法』(2017)のショーン・ベイカー。
第77回カンヌ国際映画祭〈最高賞〉パルムドール受賞。第97回アカデミー賞、作品賞、脚本賞、主演女優賞、監督賞、編集賞の5部門受賞。

【ストーリー】
ニューヨークのストリップ劇場でダンサーとして働くアノーラ。ある日、店を訪れたロシア人男性客のイヴァンは、アノーラの事を気に入り、プライベートで自宅に招く。召使いやエレベーター付きの豪華な邸宅に住むイヴァンは、財閥の御曹司だった。彼との契約で、1万5,000ドルで1週間をイヴァンや彼の仲間達と共に過ごす。突然の思い付きで訪れたベガスで、イヴァンはアノーラに求婚。彼女もそれに応え、2人はベガスの簡易結婚式場で夫婦となる。
ストリップ劇場を辞め、豪華な邸宅での煌びやかな生活を手にし、順風満帆かに見えたその矢先、結婚に猛反対したイヴァンの両親が、部下のトロス、ガルニク、イゴールを遣わせ、自分達もニューヨークに向かってくる。
両親の来訪に慄いたイヴァンは、アノーラを残して何処かに姿を消してしまう。残されたアノーラとトロス達は、消えたイヴァンの行方を追って捜索を開始する。

【感想】
破天荒なアノーラと、典型的なドラ息子のイヴァン。それに振り回されるトロス達とのやり取りの面白さ。しかし、バカバカしく騒々しい物語の裏には、確かな寓話性が満ちている。日本のキャッチコピーにある、《おとぎ話?ううん、現実(リアル)》という言葉が指し示す本当の意味が、鑑賞後には何とも皮肉めいて突き刺さる。

マイキー・マディソンの体当たり演技は圧巻。冒頭からとにかく脱ぐし、濡れ場も果敢に挑み演じ切る。オスカー受賞も文句なしだ。
しかし、本作の陰の功労者ユーリー・ボリゾフに、私は堪らなく魅了されてしまった。この先の彼の活躍を願わずにはいられない。
また、イヴァン役のマーク・エイデルシュテインのドラ息子演技も忘れてはならないだろう。特に、セックスの際の痩せ細ったガリガリの身体にトランクスとハイソックス姿というスタイルには、抜群の嫌悪感を抱く(笑)彼もまた、主演のマイキー・マディソンに負けず劣らずの体当たり演技なのだ。

意外だったのは、豪華で煌びやかな見た目に反して、製作費は僅か600万ドルというから驚きだ。但し、思い返せば豪華な印象を与えつつ、予算を掛けないで画作り出来るように工夫されているのが分かる。ショーン・ベイカー監督がアカデミー賞のスピーチで語った「お金の無さ」という部分に、本作のアノーラの姿まで重なって見えてくる。しかし、少ない予算で効果的な物語を構築してみせたからこそ、パルムドールやオスカーに輝いたとも言えるのだ。「予算があれば素晴らしい作品が撮れる?」という問いと、それに対する「NO」という答えは、そのまま本作の示す「お金があれば幸せ?」という問い対する「NO」という答えにも重なるのだ。

煌びやかなストリップシーンやベガス旅行を彩るダンスミュージックの数々も個人的にヒット。また、イヴァンがアノーラの元居たストリップ劇場を訪れた際に掛かっていたT.A.T.u.の『All The Things She Said』には、思わず懐かしさを感じた。この曲のイントロ、本当に素晴らしいな。

【考察】
タイトルであり、主人公の名前でもある〈Anora〉という単語には、“ザクロ”、“光”や“明るい”といった意味があるのだそう。しかし、当のアノーラ自身は、本名で呼ばれる事を嫌い、周囲にもトロス達にも「アニー」という愛称で呼ぶよう促す。それは、彼女が自らの人生や現状に不満や負い目を感じているからではないだろうか。セックスワーカーとして、日々心と身体を切り売りしている彼女にとって、“光”や“明るさ”を示すこの名前は苦痛でしかないのだ。

思うに、アノーラは根は真面目で他人に気遣いの出来る性分なのではないだろうか。店の人気嬢として君臨出来ていたのは、単に彼女が性的魅力に溢れていたからだけではなく、お客に対するサービスを徹底していたからだろう。
イヴァンの自宅に呼ばれた際にも、目の前には幾らでも大金を引き出せる金持ちの御曹司が居るのにも拘らず、「お正月は仕事だから。割増賃金なの」と仕事に向かおうとする。
イヴァンを捜索する際の破天荒な振る舞いは、彼女にとって「ようやく手に入れた幸せ(と彼女は思っている)」を手放さない為の、孤独な戦いなのだ。

しかし、そんな彼女とは正反対に、イヴァンはどこまでもドラ息子でクズのままだ。やり方もロクに知らないであろう、女性を気遣えない身勝手なセックス。ひたすら腰を打ち付けるだけの高速のピストン運動姿はあまりにも滑稽だ。堪らずアノーラは、自らの腰を動かしてスローセックスでイヴァンを満たしてみせる。だが、別日には再び彼は高速ピストンでアノーラと交わっている。彼は、女性を満足させるセックスをするにはどうすれば良いのかという事を学習していないのだ。
そして、セックスが終わればピロートークも無しにFPSゲームに夢中になる。逃亡の仕舞いには、泥酔してアノーラの元居たストリップ劇場を訪れ、彼女のライバルだったクリスタルからサービスを受ける始末だ。
どうせなら、クライマックスでイヴァンの両親の前で彼を糾弾するのなら、「アンタとのセックス、ちっとも気持ち良くなかったわよクソ野郎!」くらい言ってほしかったような気もする。

しかし、そんな間違った相手をアノーラは愛してしまったのだ。正確には、あれが愛だとは思わないが、彼女は本気だったのだ。何故なら、彼女にとってイヴァンとの結婚は、またとない“地獄からの脱出”のチャンス、まさに“蜘蛛の糸”だったのだから。
安アパートで姉(とその彼氏)との共同生活。外で風に吹かれては、タバコを吸いスマートフォンを弄る典型的、現代的な孤独。雇い主に「労災も年金も出ない」と語るも、相手はヘラヘラとして相手にしない。あの店で働いている限り、アノーラはどこまで行っても搾取される側なのだ。だからこそ、彼女はイヴァンとの結婚に誤った「幸せ」を見出し、縋ってしまった。「ここから抜け出せる」と、玉の輿に乗れた彼女は、浮かれ気分で店を辞める。同僚のクリスタルの嫉妬も何のそのだ。

ここで忘れてはならないのは、クリスタルの嫉妬心。昨日まで同じ立場に居たはずの人間が、運良く遥か高みに登り詰めてしまった事に対する強烈な嫉妬心は最もだ。だからこそ、私は彼女を悪者だとは思っていない。その「弱さ」は、実に人間的で共感出来るから。

【観る者の心を抉るラスト10分】
イヴァンとの婚姻関係を破棄したアノーラは、せめてもの情けと言わんばかりに、トロスから「今夜まではあの家に居ていい」と言われ、イゴールと共に過ごす。
互いにタバコを吸いながら、何気なくニュースを観ている。交わされる会話の内容は、互いの名前の話題から性分まで、実に他愛ない。
しかし、「アンタ、クレイジーね」「お互い様さ」と言い合えるようなこの関係性にこそ、本当の安らぎや信頼があるはずなのだ。しかし、アノーラは失ったものの大きさから、それに気付けない、又は目を背けようとしている。イゴールに「他の連中が居なけりゃ、アンタあの時間違いなく私をレイプしてたね」と語るが、イゴールは「そんな事しない」と否定する。この台詞に込められたアノーラの過去に思いを巡らせると、胸が痛む。

翌朝、粉雪が降る中、アノーラはイゴールの車で自宅にまで送られる。結婚指輪をこっそり持ち出していたイゴールは、「トロスには内緒だぞ」と、自分達と同じようにイヴァン一家に振り回され、傷付いたアノーラに、せめて手切れ金の足しにしろと言わんばかりに手渡す。それを静かに受け取り、助手席に座ったままのアノーラ。
「君があの一族の一員にならなくて良かった」と、イゴールは彼女を励ます。傲慢で他人の迷惑も顧みない、“金だけしか持っていない”人間達のコミュニティに属さずに済んだ事を心から良く思っているのだろう。
トランクから荷物を運び出し、車に戻ってきたイゴールは、「どうだこの車?」と問う。すかさずアノーラは、「アンタらしい車ね」と皮肉で返すが、彼は「ばあちゃんの車だ」と語る。聞いた話によると、車の扱い方は女性の扱い方に似ているという。祖母の車を大事に乗るイゴールは、その台詞一つで祖母から愛されていた事も、彼もまた祖母を大事に思っている事も理解出来る。
そんなイゴールに対して、アノーラは彼に跨り、性的なサービスをする。彼女はこれまで、対価と引き換えに自身の身体と心を切り売りして生活してきた。だからこそ、ラストでイゴールの損得を超えた純粋な“優しさ”に対しても、返せるものが性的なサービスしかないのだ。
しかし、イゴールは決して恍惚とした表情は浮かべない。イヴァンならば間違いなく「あぁ…良い…。最高だよ…!」と返したであろうアノーラのサービスも、彼はアノーラが無理をしている事を見抜いており、やるせない表情を浮かべている。
堪らずイゴールはアノーラにキスをしようとするが、彼女はこれを猛烈に拒否する。このアノーラの拒絶は、イゴールを異性として見れないだとか、そういう類のものではないように思う。愛の意味を履き違えて、間違った相手や地位を守ろうと奔走したアノーラにとって、イゴールという存在はあまりにも眩しかったのではないだろうか。彼ならば間違いなく、自分が求めていた「本当の愛」を与えてくれるだろうし、その証があの瞬間のキスだったのではないだろうか?だからこそ、彼女はそれを受け取る事は出来なかったのだ。自分の本名に対して負い目を感じているように。

しかし、それまで気丈に振る舞っていた彼女の心のダムは遂に欠壊し、イゴールの腕の中で泣き崩れる。粉雪が静かにウィンドウに降り積もって白さを増し、ワイパーの音と外の風音が静かに響くエンディングが切ない。
この涙には、どれほどの悔しさが滲んでいた事だろうか。言葉だけの見せかけの愛に縋った馬鹿な自分に対してだろうか?「ここから抜け出せる」という淡い夢に縋った事に対してだろうか?あるいは、イゴールの損得や男女間の性的な関係を超えた本当の「優しさ」に対して返せるものがない事に対してだろうか?
この涙の意味については、観る人それぞれが様々な解釈をする事だろう。私は恐らく、そのどれもこれもが正解なのではないかと思う。

【総括】
現代的な搾取構造やそこに身を置く、置かざるを得ない人々の姿を描いてみせた本作は、最初こそ煌びやか(というか下品)な描写やイヴァン達の馬鹿らしさに「本当にこれがカンヌでパルムドール?アカデミー賞で作品賞や脚本賞?」となったが、ラスト10分で強烈に胸を抉られ、鑑賞後には本編では描かれていない登場人物の背景に思いを巡らせずにはいられなかった。数々の賞に輝くのも納得の一作。
惜しむらくは、アノーラとトロス達の格闘シーンや、中盤の捜索パートが少々冗長に感じられた事。特に、ガルニクのトロスの車中での嘔吐や、レストランのウェイトレスやストリップ嬢を口説く姿は、それ自体はコメディとして面白いが、必要性はあまり感じられなかった。無駄を省き、120分の上映時間に収めてくれていれば、更に評価出来たのに残念だ。

願わくば、アノーラとイゴールが、あの先の未来で笑っていられますように。

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緋里阿 純

5.0ラストシーンが最高

2025年3月7日
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監督の強いメッセージ性をこれでもかも感じられるエンタメ作品。

ロシアの富豪の息子イヴァンは、主体性のない幼児的な人物として描かれ続けます。
幼い頃から面倒を見てくれる側近、ベガスの支配人…一見すると多くの人を従えているようですが、住まいやプライベートジェット同様に彼らの目線の先にあるのは両親です。
ストリッパーのアニーはイヴァンのお気に入りになり、彼女になり、妻になる。
セックスをしている時以外、不安げな顔でイヴァンの機嫌を伺うのは、特別を失うのが怖いからでしょうか。
名もない自分が何者かになるには、男に選ばれるのが手っ取り早い。彼女の場合それが分かりやすい職業ですが、現代日本でも同じですよね。自分で稼ぐ能力のない女性が、経済力のある男性の妻(や、その子を産んだ母)というこおをアイデンティティにする…というのはよくあります。
イヴァンの周りに集まる友人は、こぞって低収入の大衆でした。彼らもまた、裕福な友人を持つことで自分が特別な何者かになれると思っていたのでしょう。

でも、他人の力では何者にもなれない。

それはイヴァンも同じことです。
親が裕福で全てを与えられていても、彼は自分の意思すら持てていない愚か者でした。
アニーの家族は裕福ではなさそうでしたし、マイアミで新しい彼氏と暮らす母…というセリフからいい感情を抱いていないことが分かります。
この対比がまた、メッセージをより強固にしています。
生まれが裕福でも貧しくても、特別な誰かになれるかということには、本質的に影響はない。
自分の人生をいき、自分で切り拓くことでしか、人は社会で何者にもなれない。ジャンプアップで突然変異するなんて有り得ないのです。

これでもかというくらい『現実』で叩きのめされ最高でした。

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ゆる

5.0ラスト数分がものすごい傑作!!

2025年3月7日
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悲しい

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ゆきとう