ANORA アノーラのレビュー・感想・評価
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傑作
アカデミー賞受賞作とは信じ難いほど小さなスクリーンで鑑賞。いつものショーン・ベイカー節が全開で、これがアカデミー賞獲ったのかと思うと痛快としか言いようがない。
いつもとちょっと違うのは、映画のタイトル。1人の人間の名前をそのままタイトルにしたのは今回が初めてでは?そのタイトル通り、今作はアノーラという架空の1人の女性を描くことに徹している。世界の片隅に生きる何処にでもいそうな1人の女性の、刹那的で思慮のかけらもない行動の数々。でもそれは当人にとってはおそらく真剣に選択した結果であり、それが最終的にもたらす破滅のやるせなさを、丸ごと受け止め包み込むラストのあまりのリアルさに言葉を失う。
そして今作でも圧巻の美しい映像の数々は、この世界が本質的に可笑しく、哀しく、そして美しさに満ちていることを伝えてくれる。これほど映画の醍醐味を味わえる作品が他にどれだけあるだろう?
ベイカーの他の作品同様、登場人物の背景はほとんど説明がない。アノーラが何者で、何を考えていたのか、全ては映像の中にある。それを感じる意思のない観客にとっては、この作品はおそらく何も刺さらない、退屈で騒々しいだけの雑多な場面の寄せ集めでしかない。
どうか多くの人に、この映画が作る美しい時間を体験して欲しい。
アカデミー賞に誘われて観ました
映画の説明や「あらすじ」と大きく相違した印象です。
ストリッパーしてる芯の強い性格の良い女性と勝手に思い込んでいたので(自分が悪いです、はい。)、冒頭部分のルームメイトとの会話(買い物の確認への返事)にまずびっくり。
「奮闘」は「暴れる」や「悪態をつく」や「邪険にする」ことではないので、どこでどう奮闘するのかなと思ったまま終了。
「人間讃歌」、誰の人生が肯定されているのかもわからずでした。あえて言うならイゴールや普通に働いてるイヴァンの友人達でしょうか。
大金持ちの手下の聖職者と弟とは思えず、やりたいことを押し通す大金持ち家族を肯定する映画だったのか。
映画は自分で観ないとわからないものだと、そんな当たり前のこと改めて思いました。
ただ中盤の探索場面は興味深く最後まで見終えることができました。
大人の映画
この映画のどこが良いのか、中盤ぐらいまでよくわからないままみていた。ただのランチキパーティ好きのバカ息子とストリッパーのラブストーリーくらいのつもりでずっと続いていたので、どこかに捻りがあるのだろうとは思っていたが、最後にそれがあるとは。乾いて狂った世界にも、救いがあることを暗示させる最後。このひねりのために、延々とsex描写がある。とても良い映画だが、さすが18禁だ。普通のロードショー館で、大ヒットとはいかない映画だが、これを選ぶとはさすがのアカデミー会員達だと思う。相手がロシアの大富豪という舞台設定にも皮肉が効いていて、救いもロシア男というところも、何かを暗示しているのか。
あのな、アレな、あの、アノーラ
アノーラという人のことがよく伝わってきて良かった。セックスワーカーが圧倒的に弱い立場であることに関心を集めるのに成功してる映画だと思う。脚本監督が女性じゃないのが惜しい。作品は作品だから別にいいけど、どうしてこういう映画を作るのが男なのか。
面白いけど、あれがベストな終わり方だったのかな?
話が面白いし、観ていて楽しいし、「おっ!」となるカットがあった。
ただ終わり方は、「どうなんだろう?」という感じ。イゴールはちょっと不気味だがアノーラを心配して気遣っている。最後に彼はアノーラに指輪を返す。アノーラはおそらくその「お返し」に性行為をしようとする。しかし、イゴールは多分喜んでいないし、そもそもそういうつもりで指輪を返した訳ではない。それに気づいたアノーラは怒り、悲しみを彼にぶつけ、彼の胸で泣く。彼女の怒りと悲しみは多義的で、流した涙にはこれまでの色んな感情が蓄積されている。自己嫌悪もあるだろう。イゴールはそんな彼女をそっと抱きしめていた(気がする)。なんだかイゴールが主人公のハードボイルドもののようで、アノーラというけばけばしいキャラがイゴールに包まれてしまったような気がする。アノーラは当然人間だから弱さはあるし、ずっと戦うのも無理で、泣く時はあるだろうけど、男の胸で泣く姿がこの映画の終わりとして相応しかったのかな、という疑問が残る。それと、イゴールのことあれだけ信頼していたのが意外だった。
真実の愛の物語
被害者の視点と結束感
ショーン・ベイカー監督の視点。それは、前作『フロリダ・プロジェクト』では6歳の少女の視点。本作ではアノーラとイゴールの視点。二つの視点に共通するのは貧困だ。視点の向こう側は、『フロリダ・プロジェクト』では、資本主義の象徴「ディズニー・ワールド」。本作ではロシアの御曹司一家。そして、6歳の少女はトレーラー暮らし。アノーラはその日暮らしのストリッパー。ベイカー監督にぶれはない。
この視点で見れば、過度なセックスシーン、ロシアの御曹司の無軌道ぶり、御曹司を取り巻く連中のていたらくすべてがどうでもよくなる。アノーラと御曹司の結婚に反対し、彼女を娼婦呼ばわりする、御曹司の両親も想定内になる。むしろ被害者の立場で共感する、アノーラとイゴールのさりげない会話にぐっとくる。
ふたりはお互い名前の由来を言い合う。ロシア系アメリカ人のアニーは、ロシア名のアノーラが嫌い。イゴールは、アニーのほうがいいと言う。イゴールは、「戦士」の意味。アノーラは、ただの暴力男だとつきはなす。ふたりの間が秀逸だ。ロシアの御曹司のボディーガードたちとアノーラが、みな御曹司の被害者だという結束感も悪くない。
お金がすべての合理主義の中で、ひたすら人間の熱情に価値を見出す。そんなベイカー監督のポリシーが、アカデミー賞を呼び込んだような気がする。
誤解を恐れず言えば・・・
誤解を恐れず言えばこれはコメディ映画!
ただし、見た目も中身も研がれた刃物のように
ギラギラなので要注意
ストリップダンサーのアノーラは店に来たロシアの大富豪の息子イヴァンに気に入られ、契約彼女として付き合い始める
その後「結婚すればロシアに帰らなくて済む」と言われてスピード婚するのだが、イヴァンの親はそれを許さず手下の人間を使って婚姻関係を解消させようとしてくる・・・
というあらすじなのだが、とにかく登場人物の
ノリで物語が進んでいく
ノリでラスベガスに行ってノリで結婚して周りもノリで口げんか始めちゃったりする
ただし「登場人物の」というのが大事なところ
行き当たりばったりの行動を取るキャラを
しっかり計算で描ききっている
このテーマ、この物語をコメディ要素をまぶさず真面目さだけで創ったら辛すぎたのかもしれない
諸々のシーンやあの登場人物のセリフ。なによりラストを観たら到底笑っていられないんだけど「苦しいだけの映画じゃないよ! みんな観てね!」という声が聞こえるような、伝えたいものを伝えるための技術を見た気がした
なにもかもがエネルギッシュ!
これまでのレビュー読んでると、やはり好き嫌い分かれてますね😆
昨年たまたま気になって観たレッド・ロケットがほんとインディーズ映画らしくて、でもエネルギッシュで主人公サイテーだしエンディングもコレでいいのか?だったけど面白かったので、あのとっちらかった感じでアカデミー捕ったのか?ってストーリーには期待しないで観に行ったのですが、
良かったです!!
Fワードとくるくると忙しく変わる華やかなシーンの合間に入る、アノーラの鉄道車線沿いの家に帰るシーンの静けさと暗さとか、雪を見る静寂とか、動と静のコントラストが美しい
この娘は幾度となく危険をかいくぐってきたんだろうなって想像できる戦いぶりとか
心やさしいイヴァンも所詮チンピラなとことか職場の女同士の相性とか
ロシアの親父も嫁めんどくせえなと思ってるんだろうかとか、
ちょっとしたシーンでバックグラウンドを説明しているのがテンポ良くて
登場人物がみんなエネルギッシュで全然中だるみを感じなかった。
昔アメリカのシッコトムにハマってたので、後半のドラ息子探しの会話のやりとり
大好きです😆ほんとこのへんは好き嫌い別れると思う。
一部でエミリア・ペレスの失速によるタナボタ受賞と言われているけど、これは普通にアカデミー賞ありだな、と思いましたですよ(あちらはこれから公開なので観ないと判らないですが)。
とにかくものすごい勢いで進んでって、最後にあれ。
ズシンときます。
あと、ロシアのドラ息子の瞬速脱衣はすごかったな🤣
フロリダ・プロジェクトも観なきゃ。
それほどでもないような気がするな、というのが正直なところです
アメリカン・ニューシネマの片鱗を感じさせる
前半30分はとにかくヤりまくりで、そらR18になるわ、という印象だったが、追走劇のような中盤を経て、ラストのワイパーのシーンは流石としか言いようがなかった。展開にやや粗さはあったが、終わり良ければ全て良し。ラストシーンのほか、フレンチ・コネクションを彷彿とさせるアノーラの自宅界隈など、アメリカン・ニューシネマを強く意識させられる。やはりこういう監督がハリウッドにはいてほしい。
これが受賞作品かぁ
アカデミー賞でいくつも受賞してたことなど全く知らずに、事前知識もほぼなく鑑賞
娼婦のシンデレラストーリーなのかなー?と思ってたらとんでもないバッドエンド迎えてましたね
娼婦という設定からも、終始女性が弄ばれる内容なので、同姓からは胸糞な映画になってもおかしくないかなと
ありきたりなストーリーではありますが、それなりに楽しめました
カップルで鑑賞してた人いたけど、マジでチョイスミスでしょ...
カップルと女性には全くオススメできない映画なので、男性1人で見に行ってください
スタローン映画の見過ぎな僕
見終わった後、少し物足りない気がしました。
これがアカデミー賞?
アノーラは魅力的だし、イヴァンはクソだし、イゴールはいい奴。それだけか?
相手はロシアだ!ここからイゴールと一緒に敵地に乗り込んでひと騒動あるのかなあと思ってたら終わり。
他の方のレビュー見て、なるほどと思い少し印象が変わりました。
スタローン映画の見過ぎだと思いました。
アカデミー賞 ≠ 自身の好み
アカデミー賞の結果に釣られて観た口ですが⋯
結構自分の好みではないことが多いので期待はしてなかったので良いのですが⋯
やはり、個人的には、なぜこの作品???感はありました。
作品の内容自体の前情報は、まったく入れてないので、
告知のティザービジュアルで、女の人が、ショービジネスか、なんやかんやで成功するお話?
と思いながら観たら、全然違いましたね⋯笑
これは、核となる部分は、やはり女性の性的搾取問題的なやつ?
アノーラは、とにかく職業柄なのか、根底に男性に対して被害者意識を持っているよう。
イゴールに対しても、端からレ●プ魔って、だいぶ失礼な暴言吐いちゃうところとか。
そんなアノーラの複雑な心情をもっと描いて欲しかったかも。
ただ、ワーワー叫んで、なんでそんなにイヴァンとの結婚に拘るのか?
この脚本だと、やっぱお金?ってなってしまって、共感できないんだよね⋯。
イヴァンなんて、もうただのバカ。
鑑賞後にコメディと知りましたが、
笑う配分少なかったし、やはり、全体に騒々しくて疲れちゃったかな。
総括的には、イゴールでどうにかオッケーになった感。
出てきたときから、魅力的だったな、この俳優さん。
ちょっと、これから気になる〜。
もう一度観たい脳汁飛び出すほどの快楽の日々。
ストリッパーとして働く主人公がある日、客のロシア人御曹司と出会い、1週間限定の彼女となる契約を結び、しまいには勢い余って結婚してしまうが、そこに向こうの家族の手先が来て婚姻無効の手続きを迫られるという話。
ストーリーはわかりやすく、テンポ感もいい上に色々な感情を抱かされ、この物語の行先から目が離せなかった。
特に前半の酒、セックス、ドラックの快楽の日々の描写はまさに脳汁ドバドバそのものといった感じ。
そこからロシアの刺客が来るところから物語は急展開。
夫の逃走や喧嘩、罵倒、途中笑いも挟みながら物語は進んでいく中で刺客の男・イゴールだけが最後までアノーラの気持ちに寄り添っていたことに主人公は気付いていたのだと思う。
ラストシーンの涙はセックスだけが自分を取り戻す手段であるためか、信じていた人から自分に愛されてなどいなかったからか、娼婦などと散々に言われて存在を拒否されたからか。
色々なことが起きた1日が終わり、必死に堰き止めていた感情が涙となって溢れ出す最後のシーンには感動した。
そして何よりこの主人公のパワーが凄いと思った。
もうここから2人の元通りの生活を取り戻すのが難しいだろうなという局面においても、主人公が離婚を拒否するのは2人の愛よりもむしろ自身の尊厳のために闘っているように見えた。
アンチ・シンデレラストーリー、ちょっとビターで最高に刺激的。
まさにその言葉通りの傑作でした。
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