「作品としては平均以上だが、作品賞に値するかというと疑問が残る」ANORA アノーラ シモーニャさんの映画レビュー(感想・評価)
作品としては平均以上だが、作品賞に値するかというと疑問が残る
『ANORA』は、軽快なテンポと皮肉を効かせた語り口で、現代社会の矛盾を描こうとする意欲作だ。
軽いタッチの中に“世界の矛盾”を鋭く突くような深さを期待していた。
しかし実際には、
• テンポは良いが内面の掘り下げは浅い
• キャラクターの感情の揺れが表層的
• 印象に残るシーンが少ない
• 余韻が弱く、心の琴線に触れない
という仕上がりで、「よくできているが、深くはない」という評価に落ち着いてしまった。
作品としては平均以上だが、作品賞に値するかというと疑問が残る。
アカデミー賞作品賞の“選出基準の変化”の強調ポイントで、以下の部分が、私が感じている問題意識の核心です。
最近のアカデミー賞は、価値観を揺さぶる作品よりも、
・偏りが少なく、無難で、安全に楽しめる作品”を選ぶ傾向が強まっている。
・深い内面や身体性、倫理の揺れを描く作品より、テンポ・アイデア・勢い・多様性を重視する方向へシフトしている。
・その結果、観客の価値観を変えるような作品が減り、平均以上だが深みのない作品”が作品賞を取るケースが増えている。
私の鑑賞軸(静けさ・身体性・倫理・深度)と、アカデミー賞の現在の価値観がズレてきているのは、まさにこの点にあります。
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