劇場公開日 2025年2月28日

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「これまでのショーン・ベイカー作品と比較して、話の筋としては分かりやすい映画だなー、と思ってたら、やっぱり意外なところに着地する、まぎれもなくベイカー監督の現時点での集大成的な一作」ANORA アノーラ yuiさんの映画レビュー(感想・評価)

4.5 これまでのショーン・ベイカー作品と比較して、話の筋としては分かりやすい映画だなー、と思ってたら、やっぱり意外なところに着地する、まぎれもなくベイカー監督の現時点での集大成的な一作

2025年6月7日
PCから投稿

これまでのショーン・ベイカー監督の作品と同様、アノーラ(マイキー・マディソン)をはじめとする本作の主要な登場人物たちは、「お上品な」方々が眉を顰めるような仕事をしてるし、その上人間性も割とアレな場合が多いんだけど、でもやっぱり力のある者にいいようにされるがままでは終わらない、という意地と誇りを持っています。

もちろん様々な読み取り方のできる作品なのですが、そんな「人間としての尊厳」への確信が、確かに本作にはあります。

アノーラを中心として展開する物語は、『タンジェリン』(2015)や『フロリダ・プロジェクト』(2017)などの既存の作品と比べると、比較的物語の枠組みがつかみやすく、なんだったら少しくらいなら先を読んでしまえる話、でもあります。

で、まぁそうなっちゃうよね、という展開を経て結末近くに差し掛かったところで、語り手の視点は急速に、アノーラとある登場人物の関係に焦点を絞っていきます。

展開としてはやや予想外、ではあったのですが、ベイカー監督がこれまでの作品で繰り返し語ってきた人間観を考えると、この描写には強い必然性を感じました。

その意味で本作は、間違いなくベイカー監督の現時点での集大成的作品だし、パルムドールやアカデミー作品賞を獲得するにふさわしい、軽快だけど深みのある作品でした!

なお、『タンジェリン』でも登場した、口論していく中で、失言、言葉尻の取り合いでどんどん状況が悪化していくという、笑っちゃうんだけど地獄のような居心地の寸劇的場面が入るんだけど、作劇としては一層巧妙になっていて、やっぱり苦笑い!

yui
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