「もう一度観たい脳汁飛び出すほどの快楽の日々。」ANORA アノーラ てつさんの映画レビュー(感想・評価)
もう一度観たい脳汁飛び出すほどの快楽の日々。
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ストリッパーとして働く主人公がある日、客のロシア人御曹司と出会い、1週間限定の彼女となる契約を結び、しまいには勢い余って結婚してしまうが、そこに向こうの家族の手先が来て婚姻無効の手続きを迫られるという話。
ストーリーはわかりやすく、テンポ感もいい上に色々な感情を抱かされ、この物語の行先から目が離せなかった。
特に前半の酒、セックス、ドラックの快楽の日々の描写はまさに脳汁ドバドバそのものといった感じ。
そこからロシアの刺客が来るところから物語は急展開。
夫の逃走や喧嘩、罵倒、途中笑いも挟みながら物語は進んでいく中で刺客の男・イゴールだけが最後までアノーラの気持ちに寄り添っていたことに主人公は気付いていたのだと思う。
ラストシーンの涙はセックスだけが自分を取り戻す手段であるためか、信じていた人から自分に愛されてなどいなかったからか、娼婦などと散々に言われて存在を拒否されたからか。
色々なことが起きた1日が終わり、必死に堰き止めていた感情が涙となって溢れ出す最後のシーンには感動した。
そして何よりこの主人公のパワーが凄いと思った。
もうここから2人の元通りの生活を取り戻すのが難しいだろうなという局面においても、主人公が離婚を拒否するのは2人の愛よりもむしろ自身の尊厳のために闘っているように見えた。
アンチ・シンデレラストーリー、ちょっとビターで最高に刺激的。
まさにその言葉通りの傑作でした。
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