「エロくて可笑しく物悲しい」ANORA アノーラ ケイさんの映画レビュー(感想・評価)
エロくて可笑しく物悲しい
事前知識は劇場予告だけだったのですが、ラブコメディだと誤解していました(苦笑)。
合体で始まり合体で終わる18禁エロ映画だったとは。そこも含めて堪能しましたが。
物語の中でロシア大富豪の息子イヴァンが失踪します。イヴァンの関係者誰もが、主人公アノーラがイヴァンにとって都合の良い売春婦だと指摘しますが、アノーラ自身は認めようとしません。
シンデレラ役はアノーラ自身の魅力で勝ち取ったはずだ、イヴァンに会って認めさせなくては。
アノーラはやっとイヴァンを見つけますが、彼はアノーラのクラブで別のダンサーと寝ていました。この裏切り者が。
結局イヴァンもアノーラを特別な存在だと思っていなかったことは、アノーラが認めたくなかった現実と思います。
最後、アノーラは用心棒役のイゴールにサービスをしますが、アノーラの自暴自棄な心と共に、イゴールへの感謝もあった、複雑な気持ちから起こした行為と思います。
イゴールだけがアノーラのアイデンティティを認めていたのです。アノーラ自身は自分をアニーと呼び、名前に意味など無いと答えますが、イゴールはアノーラの意味を調べ、良い名前だと伝えます。
強面のイゴールですが、物語を通して人に直接暴力を振るうことがなく、良い人を貫きました。
危なっかしくて不安定なアノーラの生き方ですが、イゴールによって救われるところもあったと思います。
タイトルが「アノーラ」なのは、どこにでも居るアニーでは無く、ただ一人のアノーラを意味していると感じました。
心がほっとするレビューでありがとうございます。20代は程度の差こそあれ誰もがこんな感じでもがく(本人に自覚のあるなし問わず)のではないかと、映画見ながらずっと思ってました。