劇場公開日 2025年2月28日

「それでも女は負けてない・・・」ANORA アノーラ 泣き虫オヤジさんの映画レビュー(感想・評価)

4.0それでも女は負けてない・・・

2025年3月10日
PCから投稿
鑑賞方法:映画館

アカデミー賞作品賞受賞作。俺が観賞したのは発表の前で、結構良い作品だとは思ったのだけど、結果を聞いたときは「そうか、これが取ったんだ」と少々意外だった。

【物語】
ニューヨークの風俗店で働くアノーラ(マイキー・マディソン)。ある日店を訪れたロシア人の男がロシア語を話せる女性を要求したため、アノーラが呼ばれる。イヴァンと名乗る男(マーク・エイデルシュテイン)はアノーラを気に入り、自宅に遊びに来るように誘う。

アノーラが訪れた男の家はとんでもない豪邸だった。イヴァンはロシア富豪の御曹司であることを知る。イヴァンの提案で高額の報酬で1週間の契約彼女になることに合意。パーティーやショッピングなどを楽しむ。 ラスベガスにも足を延ばして享楽の夜を過ごした2人は衝動的に教会で結婚する。

しかし、ニューヨークでのイヴァンのお目付け役が事態を知り、部下を連れて2人のいる家を訪れる。彼らは両親の指示で2人の結婚を無効にしようと強硬に迫るが・・・

【感想】
観賞前に現代の“プリティー・ウーマン”という形容を目にして、勝手にコメディータッチな明るい作品を想像していたが全く違った。 確かに富豪と風俗嬢の短期契約彼女というところまでは一緒なのだが、作品のトーンがかなり違う。アノーラが彼女を取り抑えようとするイヴァンのお目付け役の男達を相手になりふり構わず抗うシーンはかなり笑えたが、声を出して笑えたのはそこだけだった。後半から結末にかけては、哀愁感たっぷり。

最後に痛快な結末が待っているのかと少し期待したが、それも無い。世の中の不条理というか、非情と言うか、庶民あるいは社会の底辺にいる人間の無力感を味わうことになる。ただ、他人のレビューを読んでなるほどと思ったのだが、そんな中でもアノーラは僅かながら風俗の世界に生きる女の矜持というか、誇りと言うか、もっと平たく言えば意地を捨てていないところが本作の救いなのかも。

凡庸な感性の俺には本作を絶賛する気にはなれないけれど、それでもオープニングシーンの音と雰囲気にいきなりワクワクさせられたりするなど、映画として質の高さは感じられる作品だった。

泣き虫オヤジ