「Greatest Day」ANORA アノーラ ブレミンさんの映画レビュー(感想・評価)
Greatest Day
祝アカデミー賞作品賞受賞という事で、R18+ですがどうにかヒットしてくれ〜と思っている今日この頃です。
ストリップダンサーのアニーが金持ちのボンボンのイヴァンと出会ってエッチしまくって結婚までしちゃって…そこまではシンデレラストーリー、そこからは怒涛の展開が巻き起こるヒューマンドラマで、パリピな雰囲気こそ苦手だなぁとは思いつつも、絶対後々効いてくるんだろうな…とじっくり構えながら観ていました。
日本でもこういうお店があるとは思うんですが、これって何が楽しいんだろう?と思っていましたが、こういう楽しみ方があるってしっかり視覚化できていたので、こういうのが好きな人もいるんだよな〜世界回ってるな〜ってなりました(すっとぼけ)。
アニーとイヴァンが幸せになっていくのか?と思ったら、結婚した情報が流れてお付きのものたちと部下たちがやってきてイヴァンを連れ帰ろうとするけれどイヴァンはそそくさと逃亡して、アニーはブチギレまくってるというスクリーンの情報量が過多していましたが、ハイテンションプリプリな神父のトロス、どこか抜けててドジしまくりなガルニク、屈強で冗談が通じないスキンヘッドのイゴールとなんだか憎めない3人組とアニーとの珍道中が始まって行ってからは面白さが加速していきます。
画面の中で罵声と怒声が溢れかえっていて、ロシア語と英語の字幕もごっちゃになってるっていうカオスな状況下なシーンが延々続くんですが、もうとにかく言い争っているのがだんだん面白くなってきて、段々優しい目で見ていられるようになる不思議な体験ができました。
この手の言い争いって基本顔を顰めたくなるくらい不毛なものだったり、ただただ気分が悪くなるものが多いのに、コメディっぽくなっているのはバランスの妙だなと思いましたし、重苦しくなく観れたのも良かったです。
イゴールが生温かい目で見守り、トロスが自論垂れ流しまくりで発狂、ガルニクが嘔吐と披露でぐったりばったりとそれぞれの役割を果たしに果たしまくっており、ボケとツッコミどっちもできるアニーが右往左往したりと、スクリーンに一切映らないイヴァンを巡っててんやわんやする流れがとても好きでした。
イヴァンがクソ野郎なのはもちろん、自分で何も判断できずに無闇に暴走しているというのは甘やかされていて、かつ親からの愛情を一心に受け取っていない感じの解像度がめちゃくちゃ高かったです。
酔っ払いまくってまともに会話をもできない状態のくせに悪態はついたりと、アニーがそそくさと突き放してくれてスッキリしました。
両親はやはり難ありで、母親は愛情を与えているように見えてどうにも自分のための保身に走っているようで、周りへの態度もキツいときたもんですからイヴァンの親だなぁって感じでしたし、父親は無関心に近い感じだったので、イヴァンもそりゃそうなるよと頷きっぱなしでした。
ラストにかけてはそれまでのハイテンションっぷりはどっしり抑えて、しっとりしたイゴールとアニーのやりとりが哀愁を感じられるものになっていてじっくり眺めることができました。
ラストシーンのゆったりと引き締まった空間からのやり取りなんかもなるほどなぁ〜と自分なりの納得をしながらエンドロールに持っていくもんですからにくい演出でした。
役者陣は最高でマイキー・マディソンの体の張りっぷりと強気な態度はとにかく見応え抜群で、ユーリー・ボリソフのニヤッとする感じの演技も良い味出しまくっていました。
若干長いかなと思うシーンはありましたが、最初から最後まで妥協なき責めっぷりに圧巻されました。
こういうテイストの作品も偏見なく評価されるのはいいなと思ったので18歳以上の方は映画館に駆け込んでいきましょう。
鑑賞日 3/2
鑑賞時間 17:45〜20:15
座席 D-10