「コメディかと思いきや、ラストは」ANORA アノーラ キレンジャーさんの映画レビュー(感想・評価)
コメディかと思いきや、ラストは
予備知識はほぼなく観賞。
前半は「シンデレラストーリー」、金持ちの息子とストリップバーで働く女性のカップルが描く逃避行…かと思いきや。
逃避行するのは放蕩息子のイヴァンのみ。
中盤から両親からのお目付け役が絡み始めるとコメディのギアがグンと上がる。
イヴァンだけでなく、だらしなく、ふがいなく、大事なところでまったく役に立たない男性達に対して、勇敢でしたたかな女性達が「戦おう」とする姿。
友人でも敵に回るなら容赦しない。
これは痛快でもあった。
その一方で、彼女は「アノーラ」という自らの名前を嫌った。「光」「明るさ」という意味の名をあえて避けたのは、どこかで親が名前に込めた思いを直視できない自分がいたのかも知れない。
そんなアニーがこの一件でいわゆる(地位や名声・金・権力などを)「持つ者」たちと戦いを繰り広げ、ひとまずの終止符を打って、自宅に車で送ってもらったラスト。旅の間、気づけばずっと時を共にし、気をかけてくれたあの彼の優しさに対して彼女なりに答えようとしたあの時、アニーは再び「自分」というものに直面する。
そもそも私は何も持っていないのではないか。
イヴァンの母が言ったことこそが現実だったのでなはいか。
なんて残酷で、なんて切ない。
ノリノリの音楽満載で進んで来た物語が、無音で終わる喪失感。
アニー役の マイキー・マディソンはサイコーにカッコ良くて魅力的。これからが楽しみ。
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