「赤ちゃんのカメラ目線はNGじゃない」ANORA アノーラ Lhowonさんの映画レビュー(感想・評価)
赤ちゃんのカメラ目線はNGじゃない
最初に申し上げておきますが、ショーン・ベイカーの作品が大好きです。
ボンクラの生態を描いたら、世界一です。
映画では題材として、暴力的なボンクラ、性的なボンクラ、依存症のボンクラ、心が病んでいるボンクラなどが良く取り上げられています。自分はボンクラではないと思っている観客は、興味をもって見るからです。その結果、ボンクラ立ちは、嘲笑の対象になり、破滅にむかったり、よくても牙を抜かれてつまらない人間になり、消費されていきます。これが本当は嫌いです。ショーン・ベーカー作の登場人物は、程度の差はあれ、みんなボンクラです。しかし、彼らにはダメ人間であり続ける理由があったり、わずかながらまともなところが残っていたり、嫌いになれないところがあるわけです。それを、丁寧に、優しく、少し引いた位置から描いているところが本当にうまいと思います。本作でも、アルメニア人Toroとか、オルガルヒのお父さんとか、お掃除のLuluとかとっても魅力があります。
本作は、(昨日みた)ブルータリストと同様に3幕構成ですが、こちらはまともに3幕あります。ボーイミーツガールの第1幕、ドタバタコメディーの第2幕、エピローグの第3幕です。私的には、はっきり演出を変えているなと思いました。それぞれのパートの味を良く味わえました。そして、短いエピローグは、まあ、そう終わるだろうなと思った通りかと思ったら、最後の1分→ブラックアウト→エンドクレジットで泣きましたさ。星4つから格上げしました。二人が何やっているのか(まあ、やってるんだけど)良く分からないんだけど、良く動きを見て下さい。おそらく、ちゃんと演出してやっていると思います。
撮影監督のドリュー・ダニエルズも、前作レッド・ロケットにつづいて良いですね。Wavesのときから最高。
あと、冬のコニーアイランドで泳いでる人がいるよ。Robot Dreamsはうそじゃない?僕が行った時も、正統派ユダヤ人が黒いコート着ていっぱいいたもの。
と言うことで、皆さんにショーン・ベイカー好きになっていただいて、フロリダ・プロジェクトもみて頂きたいです。