「人間の変化とは」エミリア・ペレス 杉本穂高さんの映画レビュー(感想・評価)
人間の変化とは
ジャック・オーディアールがミュージカルを撮るとは思わなかったが、彼の作品の中でも結構上位に好きかもしれない。これは人の変化についての物語だ、外見が変化する、あるいは本当の自分の外見を手に入れることで内面にまで変化が及んでいく。性適合手術を受けて女性として生活するようになって、マフィアのボスとして生きてきた時には思いもよらなかった慈善事業に精を出すようになる主人公。この変化は外見が導くように内面が変わっていったということなのか。ゾーイ・サルダナの歌唱パートにそれを示唆するようなセリフがあったが、これは変化なのか、本来の彼女の性質なのか。時にマフィア時代の狂暴さが目覚めそうになる主人公だが、人間は経験の蓄積によって形作られるのだとすれば、マフィア時代の恐ろしさもまた、彼女の一部を構成する要素と言えるか。
ゾーイ・サルダナの芝居は本当に素晴らしかった。彼女のベストパフォーマンスだと思う。彼女演じる弁護士の変化もまた面白い。人の本質と変化について非常に深いところまで切り込んだ作品だと思う。
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