「とても変」エミリア・ペレス 吉泉知彦さんの映画レビュー(感想・評価)
とても変
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ロバート・ロドリゲス監督作品のようなメキシコで荒っぽい女たちが壮絶な撃ち合いをする映画かなと思って見たらまさかのミュージカルで驚く。主人公は弁護士だし、依頼人がカルテルのボスでなんと女になりたがっている。自分が死んだことにして妻子とも別れ、性転換に成功して女としての人生を歩みだす。
いつも思うのだけど、おじさんが女になってもおばさんだし、しかもこの主人公はごついおじさんだったのでどう見ても、『アキラ』で大活躍するみたいなごついおばさんだ。華奢な美魔女になるわけでなく、果たして納得いくのだろうか。そして性の趣向は元のままで男に抱かれるわけではなく彼女をつくる。自分とは隔たりがありすぎて気持ちがまったく追いつかない。
しかしそんなエミリアが子どもに会いたがる気持ちはとてもよく分かる。幼い息子に「パパと同じ匂いがする、パパ、パパ、パパ、パパ、パパ、パパ」と連呼され、それは人類が浴びる最上級の幸福の一つだと思うのだけど、息子はおばさんだと思っており、エミリアも実は自分がパパそのものであるとは告げない。なんという切なさだと心をむしられる。
元妻のジェシーの恋人がひどいボンクラで事態をどんどん悪くする。ジェシーも気の毒だ。
とても変で面白い。
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