「羽ばたきの疾走感に満ちた秀作」バード ここから羽ばたく 牛津厚信さんの映画レビュー(感想・評価)
羽ばたきの疾走感に満ちた秀作
『レッドロード』『フィッシュタンク』などで英国におけるインディペンデント映画の可能性を押し広げてきたアーノルド監督。これまでの作品に比べると、『バード』のヒロインの年齢はやや低めで、その目線で見つめるホームタウンは多少荒れていて、家庭環境もはちゃめちゃではあるものの、決して絶望しているといった感じではない。むしろこの映画には過去のアーノルド作品よりもずっと心地よい光と風が差し込み、少女の人生や逞しさを優しく包み込んでいるかのよう。そこで出会う一人の無垢なる男。その存在を助けようと奔走する姿は、自分で考え、自分で行動し、ここではないどこかへ羽ばたこうとする彼女の、未来へ向けた助走のようにすら感じられてならない。彼女の息を飲むほど堂々とした演技と、バードが醸し出す浮遊感。そして何よりタトゥーだらけの父親役バリー・コーガンがもたらす、奔放で身勝手ながら憎めない人間味と無軌道なパワーに圧倒される。
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