劇場公開日 2025年9月5日

「人はどんな環境でもささやかな幸せを見つけることができる」バード ここから羽ばたく Tofuさんの映画レビュー(感想・評価)

3.0 人はどんな環境でもささやかな幸せを見つけることができる

2025年9月10日
iPhoneアプリから投稿
鑑賞方法:映画館

イギリスの田舎街に暮らす12歳の少女ベイリーはシングル・ファーザーの父親と2歳年上の兄と一緒に暮らしていたが、何の前触れもなく父親がいきなり再婚相手を連れてきて、来週結婚式を挙げると告げられてショックを受ける。そんなとき、ベイリーは牧場で風変わりなバードと名乗る男と出会う。初めは警戒するものの、その雰囲気が気になって話をするうちに、バードは自分の両親を探していることを知り、手伝うことにしたのだが……。

貧しい田舎街の最底辺の人々の暮らしでは、生活の一部に暴力が組み込まれているかのようにDVは当たり前、結婚と離婚を繰り返し、「貧乏人の子沢山」と言われるように異父母兄弟が何人もいる。

でも、見ているだけでも心苦しくなってくるそんな暮らしの中でも、人はささやかな幸せを見出すことができる、ということを伝えたいんだろうな。

そして、いかにもヨーロッパらしいなと思ったのが、風来坊が何処からかやって来て希望をもたらして去っていくというモチーフ。それは現実かも知れないし、希望的感想に過ぎないのかも知れない。しかし、一縷の望みを何かに見出すことで現実に押し潰されずに何とか生きている、という人も少なくないのだろう。

ベイリーが撮ったスマホの映像なども多用しながら構成されるカメラワークでモキュメンタリー的なタッチになっていることも、現実感を増し、我々の世界と地続きにある日常生活を見せられている気分にさせることに寄与しているのだろう。

Tofu