「あの感じ…」ル・ジャルダンへようこそ つばきさんの映画レビュー(感想・評価)
あの感じ…
数年前の一時期、田舎の温泉場のスナックのカウンターを手伝っていたことがある。
そこそこ流行っていたんだと思うが、冬頃から目に見えて客足が減り始め、店の女性たちが、どれだけ営業努力をしようにも「お茶を引く」日が増えて…毎夜、場を明るく賑わしていた彼女たちの表情にも、言いようのない暗さが漂い始めたんだった。
あの時の「あの感じ」が、身に迫って思い出された。
特に、この映画のヒロイン「舞子」
の寂しい横顔が、「明美ママ」の疲れのにじむ笑顔が、お茶を引いた店でタバコを吸う彼女たちの顔と1ミリも違わなかったのが、特に胸に刺さった。
「田舎の場末も、銀座の一等地も何も変わらなかったんだな」と。
映画の顛末を書くのは無粋だし、一種の群像劇なので、69分では短い気がしたけど、逆に、この短い時間で"あの感じ"を表せる脚本、映像の美しさには凄味を感じた。
コメントする