「その土地に敬意を持てない人が、敬意を持って接してもらえるとは思えない」ロイヤルホテル Dr.Hawkさんの映画レビュー(感想・評価)
その土地に敬意を持てない人が、敬意を持って接してもらえるとは思えない
2024.7.29 字幕 アップリンク京都
2023年のオーストラリア映画(91分、G)
あるパブで働くことになった女性二人が不穏な空気に苛まれる様子を描いたスリラー映画
監督はキティ・グリーン
脚本はキティ・グリーン&オスカー・レディング
原案はPete Gleesonのドキュメンタリー『Hotel Coolardie』
原題の『The Royal Hotel』はふたりが働くことになったモーテル&パブの名前
物語は、シドニーの客船にてハメを外している、ハンナ(ジュリア・ガーナー)とリブ(ジェシカ・ヘンウィック)が描かれて始まる
リブはバーでカードを切ろうと思ったが切れず、ハンナもお金が尽きてきた
そこで二人は地元で働こうと考えるものの、働ける場所は僻地のホテル&パブしかないと言われてしまう
3日に1回しかバスが通らないその場所は、バス停から迎えに来てもらえないと到着できないところだった
パブの厨房を兼務しているキャロル(アースヨ・ヨビッチ)に迎えに来てもらったふたりは、空いている部屋を間借りしながら働くことになる
パブのオーナー・ビリー(ヒューゴ・ウィーヴィング)は接客について簡単に教えるものの、いざ商売が始まるとカウンターの外に出て一緒に飲み始めてしまう
ふたりで何とか切り盛りするものの、制御の効かない客たちのカスハラ、セクハラなどの無法地帯でハンナは危険を感じてしまう
逆にリブの方は雰囲気に馴染んでいき、目標のお金を貯めるまで辛抱しようと励ますのである
映画は、ひたすら不快な時間が続く内容だが、その環境に耐えられるリブと生理的に無理と突き放すハンナが対比になっている
酒が入っている場所で理性的な行動を期待する方も無茶だと思う
もともと無計画で、条件を絞ったために劣悪な環境しかないのだが、そこでハナから距離感を置くと反感を買うのは当然である
イギリス女性ふたりのようにはっちゃけるのもどうかと思うが、ある意味その場を凌ぐための演技のようなもので、そう言ったことを器用にこなせないと厳しいだろう
この内容で「女性にとってのホラー」というのはいくら何でも無茶な話で、紳士的なふるまいを求めたいのなら、そう言った人が集まる場所で働くしかないように思えた
いずれにせよ、暴力もなく、言葉や態度が許せないという中で、恐怖心だけを増大させていくのだが、バカにされたと感じた男たちの不穏さを想像力で増大させているようにも思える
このあたりは男性と女性で感じ方が違うと思うが、この状況でも女性は怖さを感じているというのは確かなことのように思う
そのうえでうまく立ち回っているように見えるリブは、逃避旅行の終着点を見誤っている部分もあるので、それはそれでダメなのだと思う
彼女たちがどのような経緯でオーストラリアに来たかははっきりと描かれないが、オーストラリアを選んだ理由を「一番遠いから」と言ってしまうのは現地民をバカにしていると思われても仕方がないだろう
郷に入っては郷に従えとまでは言わないが、その場所に敬意を持てない人が邪険に扱われるのは当たり前の話で、自身の歪んだマインドを棚に置いて、自身の理想を重ねるのは無謀であるように思えた