「期待はずれ 単なるロマコメ」フライ・ミー・トゥ・ザ・ムーン 町谷東光さんの映画レビュー(感想・評価)
期待はずれ 単なるロマコメ
印象に残るのは、これ見よがしに映る「SONY」のテレビ受像機だろう。
制作こそ、アップルだが配給元は旧コロンビア=現ソニー・ピクチャーズなんだもんな。
1960年代末に米国市場でいかにメード・イン・ジャパンのソニーのテレビが普及していたのか、というのに感心した。
映画の感想より、そっちのほうに気持ちが行っちゃったよ。
アポロ9号の月面着陸はでっち上げ、作り物だ…という「都市伝説」にひっかけ、月への旅立ちをめぐるあれこれを、ロマンスを絡めて描いている。
月面ではなく、火星を舞台にした1970年代の映画「カプリコン1」(テレビで見たかも)を思い起こさせる内容だが、こちらは内容的に軽く、浅く、見ていてハラハラドキドキみたいな感じはない。
ただ、スクリーンに映し出される今から55年も前のアメリカが、すばらしく豊かで進んだ国だった、というのは改めて感じさせられた。
当時のわが日本は東京五輪こそ成功させたが、大阪万博の前年。高度経済成長期にあったとはいえ、あの敗戦から20数年しかたっていない、まだまだ貧しい、社会インフラも先進国とはいえない状態だったのである。
この映画で描かれるアメリカの姿から豊かなアメリカについて考えさせてくれた点では興味深い映画だとは思った。
しかし、それを除けば物語としても、仕掛けの面でも浅く、食い足りない。
こちらの映画.comの記事が「次のアカデミー賞有力候補作が、早くも攻め込んで来ているぞ!」などと囃しているが、まったくそんなレベルにはない。大ウソだよ。
金払うまでもない、わざわざ映画館まで行く必要もない。
ただ、そういう感想も実際に見て初めて分かることではあるんだけどね。
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