「エンタメの王道」フライ・ミー・トゥ・ザ・ムーン うぐいすさんの映画レビュー(感想・評価)
エンタメの王道
アポロ11号の月着陸については「月に行っていない」「月面からの中継映像は偽物だ」等の都市伝説があり、本作は「偽の映像があった」という大胆な前提からスタートする物語である。
プロジェクトの行方・中継映像を巡るスリル・対立から始まるメイン2人の関係の変化など、様々な要素を盛り込んだ王道エンタメ作品だった。
ケリーの「訳アリの経歴を隠している、美貌とアイディアと駆け引きを武器にする広告業界のヒットメーカー」という設定は、アメリカのドラマを思い出した。古いドラマ風の演出もあり、当時や当時を描いた作品をオマージュしているのだろうか。
ケリーの手腕として、当時のプロパガンダのテクニックを明け透けに描いている点も興味深かった。また当時は軍出身者でなければ宇宙飛行士にはなれない時代で、彼らが現代とはレベルの違うリスクを受け入れ、危険に目を瞑ってミッションに向かっていることをきっちり描いている点も良かった。砲弾が飛び交うわけではないにせよ宇宙開発の場もアメリカの戦場だったという点に触れたことや、ストーリー内の中継映像の扱いに、当時の関係者へのリスペクトを感じた。
色々なイズムを主張する作品や、刺激的な描写を競うような作品が日々送り出される中、久々に明るく熱く微笑ましい王道エンタメを楽しんだ気がした。いざ打ち上げが成功してしまえばヒューストンに全てを任せるしかないフロリダの面々をメインに据えた点や、第一線を退いて裏方に回ったエンジニア等、日本で受けそうなポイントも多く、誰とでも観に行ける作品だと思う。
コメントする