「真実は真実、嘘は嘘」フライ・ミー・トゥ・ザ・ムーン おじゃるさんの映画レビュー(感想・評価)
真実は真実、嘘は嘘
予告は目にしませんでしたが、主演はスカーレット・ヨハンソンで内容もおもしろそうだったので、公開2日目に鑑賞してきました。夏休み初日ということで劇場は賑わっていましたが、本作にあてがわれたのは小スクリーン。中高年10人程度のやや寂しい客入りでしたが、なかなかおもしろい作品で楽しかったです。
ストーリーは、宇宙開発競争でソ連に遅れをとったアメリカが、巻き返しを図るため人類初の月面着陸を目指す「アポロ計画」を推し進めるが、失敗を重ね犠牲者を出すNASAに対して国民の関心は薄れ、計画存続が危ぶまれる中、その敏腕ぶりが大統領側近のモーの目にとまり、NASAのPR担当となったケリーが、発射責任者のコールと衝突しながらも、次々と斬新なイメージ戦略をしかけていくというもの。
月面着陸映像がフェイクだという噂は何度も聞いたことがありますが、それを映画化するという発想がおもしろいです。しかも、政府や関係機関の陰謀として描くのではなく、一人の女性の恋と生きざまと変容の物語としてストーリーを組み立てているところが素敵です。全身に嘘をまとった女が、誠実が服を着て歩いているような男に出会い、その人柄に触れてしだいに変容していく姿が鮮やかに描かれます。
終盤、一旦は逃げ出したケリーが、スケッチブックを手にして、NASAで働く多くの人々の信念に思いを巡らすシーンが沁みます。数えきれないスタッフが人生をかけて挑んだ真のプロジェクトを、決して嘘で穢してはいけないと思ったことでしょう。そこからケリーが仕掛ける逆転のシナリオがお見事です。
また、ケリーの隠された過去、バレる前に逃げるという信念、黒猫、無名監督、消火器、コールの愛機などの伏線を回収しながらテンポよく展開しているのも心地いいです。それでいてコメディというほど軽くなく、ドキュメントというほど重くなく、月着陸船イーグル号同様に絶妙なバランスでソフトランディングしているように感じます。
本作はNASAの全面協力を得ているということで、NASAの舞台裏やロケットの組み立てシーンなども見どころとなっています。中でも発射シーンは胸熱で、これだけで訳もなく泣けてきます。一方で、フェイク映像の撮影シーンも具体的に描かれており、当時の低画質なテレビなら絶対に見破られないだろうと思います。それだけに、まことしやかにフェイク映像制作を描く本作に、NASAが協力していることに懐の深さを感じます。
ラスト、ケリーとコールの間で交わされる会話。「みんなが信じなくても真実は真実。みんなが信じていても嘘は嘘。」 ケリーの変容とともに、二人の間にある真実の愛に心が温まる思いがします。と同時に、昨今ネットにあふれる無責任なフェイクニュースやフェイク動画を思い出し、実は本作はそんな風潮にも一石投じようとしているのではないかと感じます。いやはやなかなか奥深いです。
主演はスカーレット・ヨハンソンとチャニング・テイタムで、水と油のような正反対の二人が互いに影響を受けながら惹かれあっていく感じがいいです。スカーレット・ヨハンソンの60年代ファッションも見どころの一つです。脇を固めるのは、ウッディ・ハレルソン、ジム・ラッシュ、レイ・ロマノら。
コメントありがとうございます。
邦画の入りの方がやはり良いです
夏休みは特にですよ
その中でこれだけ入っているのは頑張っていますね
来週はヒュー様です。
楽しみです。
コメントありがとうございます。
何か捏造映像が必要な時はまた彼に依頼してくるかも、とすればケリーを介して。意外と無名のままウハウハになってたりして、フェイクの巨匠とか。
アポロ11号月着陸のフェイク画像と、フェイクニュースを結び付けるとは、さすがおじゃるさんです。それならトランプさんの暗殺未遂事件も、作られた事件のように思えてきます。アメリカだから。