劇場公開日 2024年7月12日

「とぼけたツラして容赦ナシ、そこにこそ”悪の魅力”が光る」密輸 1970 Elvis_Invulさんの映画レビュー(感想・評価)

4.0とぼけたツラして容赦ナシ、そこにこそ”悪の魅力”が光る

2024年7月22日
PCから投稿
鑑賞方法:映画館

笑える

興奮

生活苦から密輸品回収に手を染めたクンチョンの海女一同、しかし税関の摘発から逃れようとした際の事故で海女のリーダーにして船主の娘ジンスクは父と兄を喪い己も投獄される。
2年後、唯一摘発を逃れたかつての親友チュンジャが引き込んださらなる密輸ビジネス。ベトナム帰りの密輸王、クンチャンに幅を利かせるチンピラ、そして税関が各々の都合をぶつけ合う中、ジンスクは何を信じるのか、そして”ふてぇ女”チュンジャの真意はいかに。

暴力と悪意の緊迫に満ちたクライム作品はそれゆえにいかに展開に緩めを利かせるかが魅力のカギを握ることが多いが、本作はそれをよく理解しているといえる。
既に他レビューにあるようにハッキリ言ってあぶく銭で70'sトレンドに耽溺するクンチャン住民の姿は我々の視点からは垢抜けないところがあるが、そうしたとぼけた絵作りは明らかに恣意的なものであり、騙しの連鎖と「お前がラスボスなのかよ!?」な展開を絶妙に下支えする世界観を築くことに成功している。

騙しの口八丁で盤面を左右すれどもいざ暴力を剝き出しにされると抗うすべのない女たち……それが海面の下では流麗に命をもぎ取る襲撃者に化ける。そのギャップに痺れる頃には既に本作の虜であろう。
中々の快作である。

Elvis_Invul