教皇選挙のレビュー・感想・評価
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渋いが過ぎる
信仰とは何かとふと考えた
私はキリスト教徒では無い。
しかし何故か子供の頃からずっと、
イエス様とお釈迦さまに関心があり、
色々と本を読んだり調べてみたりした。
二人がどんな人なのか何故か知りたかったから。
そして現在、結局のところ、
キリスト者では無い、
神道の国に住む、
現世利益の時々なんちゃって仏教徒として、
この映画を見た。
しかしそれでも、大ラスがとても刺さった。
最初からかなり長い間、
カトリック教会の総本山の世俗的な権力闘争、
権力への露骨な欲望が描かれ、
ここら辺は言わば、
我々の社会にも起こっている事の縮図なのだけれど、
最後の最後で、
教皇に選ばれた人の中に宿る、
「社会的弱者への寄り添いの心」、
「他者ではない、自分の中にこそある偏見と、
そこから来る闘争心、排他的な心の克服」、
そして、
「その時代のその社会に於いて、
最も偏見に晒され、特異な存在こそを、
神様は愛されるのではないか」的な、
告白に胸熱になった。
現代社会に蔓延する偏見と差別、
自分だけ良ければいいという利己的な世界の拡大、
ジェンダー問題、
そういう事ごとと向きあう象徴としての結末とも言えるが、
私個人はさらに、
もしもイエス様が現代に生きていたら、
そう言ったのかもしれないなと、
そういう方向で感動してしまった。
複雑化する現代を教皇は救えないかもしれない。
しかし、その精神は生き続ける。
そういう事がそもそも「信仰」なのではないか。
教団とか信仰団体というよりも、
宗教の始祖の持っている、
素朴で切実な、
人間への強い愛情とか理念とか、
それそのものが現代に復活しているような感慨に襲われ、
とても余韻があった。
信仰と現実の間で、
この映画の新教皇はどう生きていくのだろう。
実はそれも色々想像して感慨深かった。
最後に。
システィーナ礼拝堂が爆破されるシーンには、
流石に度肝を抜かれ、
カトリックの枢機卿たちの衣装の色彩と、
建造物や庭の美しさも印象深い。。
スリリング
教会巨大組織のスキャンダル合戦
結果的には面白かったです。
が、盛り上がりに欠けるシーンも多くあり少々「ダレる時間」もありました。
……不覚にも、第3回投票の終わりから第5回投票の始まりまでの間、意識を失ったしまいました。
ちょっと盛り上げ要素の一つの「音楽」が、同じテンポが多く、演出も極度の誇張した表現を抑えていたのか、盛り上がれなかった自分がいました。なので、眠気に……。
さておき、教会内のしかも最上位の教皇を選出する場が、あまりにも「俗世的」過ぎて、スキャンダラスまみれの欲望まみれの利己的まみれ。
そこがある意味で、聖職者とはいえ人間だもの「ですよね~」と、映画として面白く見れました。
はっきり言って、選出された代表格には誰一人としてふさわしい人がいなかったことが、風刺的な見解も織り交ぜて制作されたのかなと思ったりします。
あくまでもフィクションなので、余りにも選出されるには不適合の人物たちが普通に候補に上がり、もしローレンス枢機卿が取り仕切らなかったら、そんな人物が教皇になっていたと思うと、「ただの会社組織じゃん」と、思う次第でした。
そのローレンス枢機卿でさえ、感情的で利己的な人物像として描かれていましたので、聖職者って何なんだろうと呆れていた矢先、唯一の「適合者」選出がギリギリの最終投票で出現。
ベニテス枢機卿。
まず協会自体において選挙初日直前まで存在が隠されていたり、活動していた地域が過酷な地ばかり。
物語の途中途中、淡々と存在し自分の信じるものを曲げない、冷徹に見える態度。
最後の身内会談の際に、今まで奇妙なほど他の聖職者たちが口にしなかった、余りにも慈悲深く聖職者らしい発言。
そして当確。からの、「実は……」とローレンス枢機卿に打ち明ける同僚聖職者。
このくだりの時点で、今までのスキャンダラス合戦から考察して、病院?え、薬物?二重人格的暴力者?
もしかしてベニテス枢機卿は反社会組織関係者?教会の計画的支配??などと、どうしようもない人間の集まりの中において、ある意味期待をしていたら……あの展開は、正直感心しました。
そして、エンドロールを見ていながら考察したのは、以下。
①ベニテス枢機卿の姿がまさにキリスト様を連想させており、そのスキャンダル内容も、キリスト様を連想させるものだったのでは。
※キリスト様は性別に関しては明確な表現がなかったはず。
②その存在に、故教皇はキリスト再来を想い、あえて周囲の目から遠ざけていたのでは。
③聖職者とはいえ、組織は所詮俗世的である事は必然だし避けれない。だが、上層部ではない聖職者達は、心から慈愛を信じているという事に意味があり、本作の教皇選出は、真の聖職者の出現を期待するメッセージも込められているのかなと思えました。
④また老婆心的に、歴史を振り返ると「真の聖職者」は欲望の権化である人間社会からは、いずれ必ず滅ぼされてしまうのも運命なのかも……とも思ってしまいました。
以上、結果的に結句の「観せ方」はとても感心しましたので、観てよかったと想いました。
最後に、本当に普通の会社組織の役職者達だったなーと思いながら、面白く感じながら帰路についた作品でした。
前教皇の慧眼
滑り込みで鑑賞。ほぼ満席でびっくり。
前教皇の描いた筋書きが、見事にハマっていく、最後になってわかる爽快感があって楽しかった。
一つだけ、前教皇は、手術しないという選択まで読んでいたのかだけ気になった。(そうだったらいいな)
名誉・権力・人の妬み
現在を深さで捉え直す傑作だと思われました。
(完全ネタバレですので必ず鑑賞後にお読み下さい!)
結論から言うと、今作の映画『教皇選挙』を大変深く面白く観ました。
私が観た範囲の今年のアカデミー賞の関連作品で、個人的には、1番アカデミー賞に相応しい深さある傑作に感じました。
今作は、亡くなったローマ教皇を継ぐ、新しいローマ教皇を選ぶ選挙(コンクラーベ)の話です。
主人公・ローレンス枢機卿(レイフ・ファインズさん)は、教皇選挙(コンクラーベ)を執り仕切る役割でしたが、選挙に先立って行われた彼の「確信は団結の最大の敵であり、寛容の致命的な敵です。」という趣旨のスピーチは、映画の序盤で既に感銘を感じさせていたと思われます。
ところが、この主人公・ローレンス枢機卿の、観客にも感銘あった序盤のスピーチは、すぐに伝統保守派のテデスコ枢機卿(セルジオ・カステリットさん)への投票を弱め、主人公・ローレンス枢機卿も支持するリベラル派のベリーニ枢機卿(スタンリー・トゥッチさん)への投票を増やす意図があったことが明らかになります。
つまり、主人公・ローレンス枢機卿が行った感銘ある序盤のスピーチは、スピーチ内容とは別に、ある種の党派的な意図が背後に隠されていたとその後に分かるのです。
このことにより観客は、(伝統保守派の「確信」を半ば否定している)感銘を感じた主人公・ローレンス枢機卿の序盤のスピーチの背後に疑念を持ち、主人公・ローレンス枢機卿を含めたリベラル派にも疑いを感じることになります。
しかし今作の凄さは、このリベラル派にも向けられた観客の疑念に、制作者側も全く自覚的だった所にあると思われました。
問題あった候補者が脱落して行く中、リベラル派のベリーニ枢機卿を含めて誰もローマ教皇の選出のための投票の2/3を超えない中、多くの紛争地域を渡って来たベニテス枢機卿(カルロス・ディエスさん)は、選挙前に行われた主人公・ローレンス枢機卿のスピーチによって、主人公・ローレンス枢機卿こそ教皇に相応しいと彼自身に伝えます。
ただ、主人公・ローレンス枢機卿は、自分は教皇の器ではないと、このベニテス枢機卿の申し出を断り、リベラル派が勝つためにベリーニ枢機卿に投票しようとしないベニテス枢機卿に怒りすら覚えます。
しかし、リベラル派のベリーニ枢機卿から、”自分の教皇名を考えてないのか、誰しも教皇になろうとする野心があるはずだ”、などの話もされながら、ついに主人公・ローレンス枢機卿は、リベラル派の代表として自身の名前を投票する決意をします。
ところが次の投票時、主人公・ローレンス枢機卿が自身の名前を投票した直後に、テロの爆弾が投票場所のシスティーナ礼拝堂で爆発し、選挙は中止になります。
その後に枢機卿たちが集まった中で、伝統保守派のテデスコ枢機卿が、テロ犯と伝えられたイスラム過激派を非難、彼らと戦うべきだと主張します。
しかし、紛争地を回り実際の戦争を経験して来たベニテス枢機卿は、伝統保守派のテデスコ枢機卿のテロを起こしたイスラム過激派との戦いの考えを否定し、教会の教えを周縁まで伝える重要性を訴えます。
この時の、本来のカトリックの教えに通じるベニテス枢機卿の訴えは、静かに枢機卿たちの心に届き、そして再開された選挙で、ついに紛争地を数多く回って来たベニテス枢機卿が新しいローマ教皇に選ばれるのです。
ところで、予想外でもあったベニテス枢機卿が新しいローマ教皇に選ばれた直後に、ベニテス枢機卿は、即座に自身の教皇名「インノケンティウス」を示します。
このことは、ベニテス枢機卿にも教皇になるという野心があった(前もって自身の教皇名を考えていた)ことが、暗に、主人公・ローレンス枢機卿や観客に伝わった瞬間だとも思われました。
つまり、ベニテス枢機卿に対しても、最後に皆が持った彼への全面的な正しさの「確信」に、ここで作品として疑念を差し挟んでいると思われるのです。
今作は最後に、ベニテス枢機卿に関する驚きの深層が明かされます。
そしてこのことは亡くなった前ローマ教皇も知っていたことが、主人公・ローレンス枢機卿に伝えられます。
主人公・ローレンス枢機卿が、ベニテス枢機卿の深層を知った時に、”さすがに新しいローマ教皇としては問題があるのでは”、と、ローレンス枢機卿も思っただろうと、彼の表情などから観客にも伝わります。
しかし同時に、主人公・ローレンス枢機卿が、新しくローマ教皇に選ばれたベニテス枢機卿の深層に抱いた”新しいローマ教皇には問題あるのでは”との疑念の想いは、彼が大切にして来たリベラル的な考えとは異なる、伝統保守的な考えから出ていると伝わるのです。
そして主人公・ローレンス枢機卿も、いかに自分も保守的な「確信」から逃れられていないかを、この時認識したと思われるのです。
今作の映画『教皇選挙』は、「確信」を疑い、人々への寛容を取り戻すことが、根底に流れた作品だと思われました。
そして、その過程で遭遇する人間の矛盾と、寛容を取り戻すことの困難さを描いた作品にも思われました。
この今作の根幹の眼差しには、個人的にも深い感銘と同時に共感し、エドワード・ベルガー 監督や脚本のピーター・ストローハンさん、原作者のロバート・ハリスさん、などに対して、称賛と心からの同意の握手を求めたいと、僭越思われました。
今作は、描かれている舞台は狭い範囲ですが、そこからの内容の広がりと深さは、現在に必要な最重要な作品になっていると、深い感銘を感じながら今作を観終えました。
テーマありき?
厳しい見方かもしれないが、ちょっとうんざり。ローマ教会の風通しが悪いことはわかった。しかし、アフガニスタン出身の教皇が、戦争や対立を肌身で知っている「記号」として登場して、最後にかっさらっていくという構造が強引すぎる。言いたいことはわかるが、リアリティがなさすぎ。あの主人公の羊の管理人を仰せつかった人の方がまだリアリティがある。あとはシスターたちかな。シスターが下働きしかしていないことが驚きだった。そこが光っていた。ラストシーンも。つまり、あれだけ教皇選挙を見せられたが、何も変わらないという予感しかない。そんな映画だった。
祈りへの疑念
誰が教皇にふさわしいかという問題は、歴史を踏まえて、これから求められる世界がどのようなものかということと関係していると思う。
したたかに金で票を得る者。
陽気で明るいが、過去の過ちを隠す者。
宗教戦争を厭わず、差別を行う者。
それを冷静に諌める者。
最後に選ばれた者の言葉と、枢機卿たちによる選択に、未来への希望を持つことができた。
それは、戦争を肯定すべきではないということ。
また、世の中の考え方が正しいか疑念を持つことを肯定するということ。
傷つけられる世の中に、疑念を持って良いのだと、救われる気がした。
ピーター・ストローハン(脚本)と、エドワード・ベルガー(監督)の手腕を評価する
❶相性:上。
➋時代:現代。
❸舞台:バチカン宮殿、システィーナ礼拝堂。
❹主な登場人物(全員架空)
①トマス・ローレン〔イギリス出身・ローマ教皇庁〕(✹レイフ・ファインズ、61歳):主人公。ローマ教皇庁・首席枢機卿(Cardinal-Dean)。コンクラーベを主宰する。有力候補の一人。リベラル派。信仰に関する悩みを抱えており、前教皇に辞職を申し出たが慰留されていて、自身は教皇に相応しくないと考えている。
②アルド・ベリーニ〔アメリカ出身・バチカン教区〕(✹スタンリー・トゥッチ、63歳):ローマ教皇庁・次席枢機卿。ローレンスの友人。知識人でリベラル派。有力候補の一人。
③ジョセフ・トランブレ〔カナダ・モントリオール教区〕(✹ジョン・リスゴー、78歳):枢機卿。保守派。有力候補の一人。前教皇が亡くなる直前に辞任を要求したとされて裏がありそう。
④ゴッフレード・テデスコ〔イタリア・ベネチア教区〕(セルジオ・カステリット、70歳):枢機卿。保守派にして伝統主義者。有力候補の一人。スキャンダルとは無縁の存在だが、改革派の前教皇との関係は悪かった。
⑤ジョシュア・アデイエミ〔ナイジェリア教区〕(ルシアン・ムサマティ、47歳):枢機卿。有力候補の一人。史上初となるアフリカ系教皇の座を狙う。
⑥ヴィンセント・ベニテス〔メキシコ出身、アフガニスタン・カブール教区〕(カルロス・ディエス、52歳):枢機卿。紛争地域や教会の勢力が弱い地域での奉仕を行ってきた。その功績を評価されて前年に前教皇から枢機卿に任命されたが、活動経緯から秘密の任命であり、ローレンス達もその事実を知らなかった。コンクラーベ開始直前に任命状を携えて到着し参加する。
⑦サバディン〔ローマ教皇庁〕(メラーブ・ニニッゼ):枢機卿。修道会所属。リベラル派。ベリーニへの票集めに奔走する。
⑧シスター・アグネス〔ローマ教皇庁〕(✹イザベラ・ロッセリーニ、71歳):修道女。コンクラーベ中の宿泊施設の管理最高責任者。
⑨モンシニョール・レイモンド・オマリー〔ローマ教皇庁〕(ブライアン・F・オバーン):神父。ローレンスの秘書役。枢機卿団の補佐役を務める。ローレンスから依頼を受け、トランブレに関する調査を行う。
⑩ヤヌシュ・ウォズニアック〔ローマ教皇庁〕(ジャセック・コーマン):大司教。教皇公邸管理部の責任者で、前教皇の身の回りの世話を行なっていた。前教皇の遺体の第一発見者で、死の直前に前教皇とトランブレの間で行われたやりとりを目撃していた。
❺要旨(参考:Wikipedia & IMDb):
①時は明示されないが現代。ローマ教皇が心臓発作のため帰天したところから幕が開く。
②首席枢機卿のローレンスは、新教皇を選出するコンクラーベを執行することとなり、世界各地から枢機卿団を招集する。その数百数十名。
③有力候補は、アメリカ出身でリベラル派最先鋒のベリーニ、ナイジェリア出身で社会保守派のアデイエミ、カナダの保守派のトランブレ、イタリアの保守強硬派のテデスコの4人。
④教皇庁長官のウォズニアックは、ローレンスに対し、教皇が死去前にトランブレに辞任を要求していたと告げるが、ローレンスは確証がないので発表を控える。
⑤土壇場でカブールのベニテスが任命状を携えて到着する。彼は、前年に前教皇から枢機卿に任命されていたが、アフガニスタンではキリスト教徒が迫害されている状況があるため秘密にされ、ローレンス達もその事実を知らなかった。ローレンスはベニテスを正当な枢機卿として認め、枢機卿団に紹介する。
⑥1日目:
ⓐコンクラーベが開幕し、システィーナ礼拝堂にて枢機卿団による投票が始まる。
ⓑ1回目の投票では当選に必要な2/3の多数を獲得した者はいなかった。
ⓒローレンスは、補佐役のオマリー神父の調査により、ベニテスがスイスの病院で診察を受けるための費用を前教皇が支払っていたことと、ベニテスがこの診察をキャンセルしていたことを知る。
⑦2日目:
ⓐナイジェリアからローマに派遣されたばかりの修道女シャヌーミが、昔アデイエミと不倫関係にあり子を出産したことを告白する。アデイエミは事実を認め、選挙戦から脱落する。
ⓑローレンスは、シスター・アグネスと協力し、シャヌーミの転勤をトランブレが手配していたということを知る。問い詰められたトランブレは、教皇の要請でそうしたと主張する。
ⓒローレンスは教皇の帰天以来封印されている部屋に侵入し、トランブレが枢機卿たちに買収行為を行ったことを示す文書を発見する。トランブレは教皇の死期を悟り、1年前より買収行為によって来るべきコンクラーベでの票集めを行っており、それが前教皇に露見して辞職を要求されたのだった。
⑧3日目:
ⓐローレンスはアグネスの協力の下、トランブレに関する文書を枢機卿団に公表する。トランブレはローレンスが、封印されている部屋に侵入したと反撃するが、アグネスが、「私たち修道女は目に見えぬ存在ですが、神は目と耳を下さった」とトランブレの策略を暴露した結果、トランブレは教皇候補から外れる。
ⓑ次の投票時、爆弾が礼拝堂に投げ込まれ、コンクラーベは一時中断する。
ⓒこの爆発はイスラム教原理主義者による自爆テロ事件であること、ヨーロッパ各地で発生した一連の自爆テロ事件の一つであり、数百人の死傷者が出ていることが枢機卿団に伝えられた。
ⓓテデスコがイスラム教に対する宗教戦争を主張したのに対し、ベニテスは暴力に暴力で対抗することに反対する。「権力争いを止めて、教会の教えを周縁の人々にまで届けるべき」と主張する。
ⓔ投票が再開され、圧倒的多数でベニテスを選出。ベニテスは教皇名「インノケンティウス」を選んだ。
ⓕローレンスは、オマリーから、ベニテスの診察予約がキャンセルされた事情の報告を受け、ベニテス本人から真相を聞く。ベニテスは、生まれつき子宮と卵巣を持っていて、盲腸の手術でそれが明らかになるまでそのことを知らなかった。その事実に悩んで前教皇に辞職を申し出るも、切除すればいいとして慰留された。予約していた診察の内容は子宮摘出手術だったが、神に創造されたままの自分であり続けるべきだ("I am as God made me.")と考えて出発前夜に手術を断念した。
ⓖローレンスは、この秘密を、自分だけの胸に納めることを決意した。外からは、新教皇の選出を祝う群衆の歓声が聞こえていた。
❻まとめ
①コンクラーベに関しては、下記❽に示した映画等で、ある程度の知識があったが、詳細なプロセスは本作が初めて。
②首席枢機卿のローレンスが、公正かつ冷静にコンクラーベを仕切っていく様子が頼もしい。
③一番納得したのは、紛争が多く危険も多い、イスラムのアフガニスタンで活動するベニテスが新教皇に選ばれたこと。
④そして、一番驚き共感したのは、ベニテスが生まれつき女性生殖器(子宮と卵巣)を持っていて、前教皇が切除を望んだのに、本人は、神に創造されたままの自分であり続けるべきだと判断したこと、そして、ローレンスがそれを認めて、他言しないようにしたこと。
★フィクションだから出来ることではあるが、画期的・革新的であると言える。
⑤これだけの内容を、2時間に仕上げたピーター・ストローハン(脚本)と、エドワード・ベルガー(監督)の手腕を大いに評価する。
❼トリビア1:実際のコンクラーベ
①本作が日本で公開中の4月21日、ローマ教皇フランシスコが88歳で死去し、5月8日にコンクラーベが行われ、4回目の投票でアメリカ出身のロバート・フランシス・プレヴォスト枢機卿(69)が第267代ローマ教皇に選出され、レオ14世となった。
②この投票には、日本から2名の枢機卿が参加している。
・菊地功枢機卿(東京教区大司教)
・前田萬葉枢機卿(大阪高松大司教)。
③去る6月7日、名古屋の南山大学で行われた『第4回南山大学「人間の尊厳賞」表彰式・記念講演会』に参加した。講演者は菊地功枢機卿。
④「混乱の時代に助け合う命」と題する80分の講演は、博愛に満ちた内容と巧みな話術の両面で、分かり易く深い感銘を受けた。
⑤最後に、5月8日のコンクラーベについても話があった。
ⓐ映画『教皇選挙』は往きの機内で観たが、良く出来ていて、大半が描かれた通りだった。でも違っている所もあった。
ⓑ実際に集まった枢機卿たちは、和気あいあいとした雰囲気で、お互いをけなしたりおとしめたりというような謀略的なことはなかった。
ⓒ食事は長テーブルではなく、6人単位の丸テーブル。この方が、くつろいで会話が弾む。赤の衣装は着ない。汚れると後が大変だから。
❽トリビア2:枢機卿とコンクラーベが描かれた劇映画
①『枢機卿(1962米)』:
ボストン生まれの神父がカトリック教会のなかで頭角をあらわし枢機卿にのぼりつめるまでの物語。
②『栄光の座(1968米)』:
ソ連で政治犯として20年も強制労働キャンプに送られていた元大司教が、新法王に選ばれ、世界平和に尽力する。
③『天使と悪魔(2009米)』 :
コンクラーベを前に、有力な候補である4人の枢機卿が誘拐される・・・・
④『ローマ法王の休日(2011伊・仏)』:
選出されたくないという願いもむなしく選ばれてしまった新しいローマ法王が、大観衆へ向けた就任演説直前にローマの街に逃げ出す・・・・
⑤『2人のローマ教皇()2019英・伊・アルゼンチン・米』
カトリック教会の方針に不満を抱く枢機卿が教皇に辞任を申し入れるが、スキャンダルに直面し自信を失っていた教皇は辞任を許可せずローマに呼びつける・・・・
➒トリビア3:聖職者の犯罪
①本作では、有力候補のトランブレ枢機卿が、選挙で有利になるように、陰謀や買収行為をしていたことが描かれる。これはフィクションだが、次の②は実話である。
②アカデミー賞作品賞と脚本賞を受賞した『スポットライト 世紀のスクープ(2015米)』では、神父による児童への性的虐待が世界中で幾つも起きていて、カトリック教会が組織ぐるみで隠蔽してきたことが示されている。
③「聖職者」であっても「聖人」でない人がいるということだ。
④忘れてはならないことがある。それは世界には自浄作用があるということ。邪な手段で手にした権力は、長くは続かない。それは世界の歴史が証明している。
⑤それは政治の世界も同様だ。プーチン政権もトランプ政権も、いずれ終焉を迎える。そう願っている。
教皇の選挙が興味深い
権力を手にすることがそれ程の価値があると思えなくなった今この映画はどんな意味を持つのだらうか?
聖職となされる神の家に棲む人々も組織を成してしまえばビジネスや政治の世界とも余り変わらぬと言うことなのだ。それを前提に物語は進んでいく。教皇になる為には手段など問題ではなく権謀術数は数限りなくそれを見抜くチカラは途方もない労力を要するようだ。苦悩は苦悩を呼び投げ出したくもなるのも無理はない。その苦悩を見事に演じ切ったところがまず見どころと言わざるを得ない。
そして、疑問と多様なこころ、そう、寛容である為にはどうすればいいか?そんなことを投げかける映画だった。
人としてどうするか?と疑問と間違いを犯すこと許す寛容。いずれにしても、生きることは全て修行の様なものだと割り切らなくてはならない。修行は何も宗教家だけのまのではない。
しかし、最後に投げかけられた問いに対して彼はどう向き合うのだろう?
単調
教皇とは?
次から次へと、まるでゴシップネタかと思う様なスキャンダルが‼︎
最高位の聖職者を選ぶ場とは言え、多様化は今始まった事でも無いし当然の事なのだろうと思う。只、難産の末に放たれた白い煙には、こんなに世俗的な内幕が隠れていたんだと思うと、「ローマ法王」から「ローマ教皇」に呼び名を変えた事とか意味があったのかと疑問に思う。
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