教皇選挙のレビュー・感想・評価
全114件中、21~40件目を表示
素晴らしい間の取り方
教皇選挙(コンクラーベ)の話。キリスト教最高権力者を決定する選挙なので、「白い巨塔」「清洲会議」のような被選挙人のストーリーを予想していたが、違うものでした。
選挙を執り仕切る人の苦悩を描いたストーリーで新鮮でした。
選挙が進むなかで、スキャンダル、陰謀、不正が発覚していき、選挙が難航する。
新しい切り口のストーリーも良かったが1番印象に残ったのは静寂の間が素晴らしく、その時の全体的構図もシンメトリーが意識的に使われていて美しいです。また、全体的に黒や灰色が多い中、赤い服や赤い絨毯など、まるで絵画の様な美しさがありました。
難点は
①人の名前が多い
日本人からすると外国人の名前がなかなか覚えられないものです。○○枢機卿が大量に登場するので誰が誰か分からなくなります。
②キリスト教のルールが分からない
キリスト教のルール、戒律が分からないので一部意味が分からない所があります。
そうだよね 最後はそう思いました
荘厳さに圧倒されました
コンクラーベ
なんだかユーモラスにも感じられる名前だけは知っていましたが、教皇の選任式、程度の知識しかありませんでした。
この映画では教皇の逝去から次の教皇が選任されるまでの過程がつぶさに描かれます。
異教徒の外国人である私にとっては映画でなければ見る事のできない世界に圧倒されました。
綺羅びやかな衣装、荘厳な建築物、伝統の重さを感じさせる儀式の流れ…
108人の枢機卿が一堂に集い、誰かが必要な得票数を得るまで繰り返し投票が行われます。
伝統か変化か。
信仰か野心か。
舞台は枢機卿たちの宿舎と投票会場であるシスティーナ礼拝堂のみ。
灰色の背景に緋色の法衣が鮮やかに映える映像美を背景に、厳かなはずの儀式の裏では人間の欲得が渦巻き、虚々実々の駆引きが繰り広げられます。
多様性、ジェンダーギャップなど昨今注目度が高まっているキーワードを巧みに盛込んでドラマティックでありながら淡々と進行するストーリーが、人間性をじっくりと描き出します。
この機会を逃しては見る事のできない世界。
是非ご覧になってください。
玉座の審判に向かい絡み合う策謀。聖職者たちのエゴはいつしかむき出しに…喝采!これは珠玉のミステリー映画だ!
日本でも最近は「ローマ法王」ではなく「教皇」と呼ぶようですね。
「教皇選挙」=「コンクラーヴェ」。邦題は原題の直訳ですが、シンプルで秀逸。いいじゃないか……。
物語の幕開けは、あまりにも静かで厳か。眠気を誘うほどの静寂が支配する——。
だがしかし、次第に、ゆっくりと動き出す策謀。
赤い礼服が意味するのは「信仰のために命を捧げる覚悟」だと言うが、それは果たして神への忠誠か、それとも権威への執着か……?
物語が進むにつれ、絡み合う思惑はむき出しになり、そこからラストまで一気に集中モードに突入!
波乱あり、問題のクリアランス(解決)があり、ラストの選択も含めて満足度は極めて高い。
まるで海外の秀作ミステリー小説を読み終えたときのような、濃厚な読後感が味わえた。
有力な後継者たち、枢機卿それぞれの思惑が錯綜するが、観客が迷わぬよう巧みに整理されているのも見事だ。
本作の脚本を手がけたピーター・ストローハンに俄然興味が湧いた。機会があれば、『裏切りのサーカス』も観てみたい。
レイフ・ファインズ演じるローレンス枢機卿。その瞳が見据えた先には、「最後の審判」の壁画があったのだろうか。
重厚な演技に圧倒される。
他の役者たちの演技も申し分なく、どっしりと揺るぎない安定したパフォーマンスが物語を支えていた。
キリスト教に詳しくなくても、純粋に映画として面白い。
もし「ミステリー映画史」というものがあるならば、本作はまさにカトリック(=普遍)な立ち位置に据えられ、長く語り継がれていくことだろう。
修道婦は見ていた
現教皇の状態の今、この作品を観るタイムリーに驚愕しました。正に権謀術数の根競べでした。記憶に残ったセリフ、「ここに居る者、潔白は居ない」そうですね、潔白の戦いでは無く、不純の戦いですね。あの人、出てきた時からゲイだと思ってましたが、驚きました。感性では無く身体でしたか。主人公と同じ衝撃を持ちました。最初から最後迄緊迫感ありました。
期待度○鑑賞後の満足度◎ 驚くべき結末!「神が全てを創造したのであれば、この世にある全てのものはあるがままの姿が神の御心に適っている」正に其の通り。それを変に解釈して歪めているのは人間。
①因みに私はキリスト教徒ではありません。
②「確信」と「盲信」と「狂信」と…これらの境って確かにグレーだわ。
③こういう緊張感のある演出は心地好い。演技的にも出演者はみんな演技巧者なので安心感と安定感はたっぷり。
特に、教皇選挙のしきり役を任され(しきり役って我々庶民の仕事や活動でも大変な役回りなんですよね)、公平・公正な立場に立とうと思いながらも、革新派と反動派の板挟みになり、自分もパワーバランスの戦いに巻き込まれそうになりながら、やがて前教皇が何故自分を辞めさせなかったのかを理解するようになり、最後前教皇の(おそらく)希望通りの結果に辿り着くまでの上席枢機卿の苦悩を演じきったレイフ・ファインズがやはり見事。
④泉水のある広場を白い傘を指した赤い衣装の枢機卿たち(レイフ・ファインズだけ傘を指していない)が通っていくシーン。
昔の(特にヨーロッパ)映画には必ずこういうシーンが挿入されていたように思う。最近の映画ではあまりお目にかからない。
こういうシーンが映されると“ああ、映画を観せてもらっているなぁ”という気になりますね。
⑤中盤までの緊迫感が凄かっただけに、法王有力候補の二人が脱落する原因が世俗的過ぎて(まあ、普通こんなもんなのでしょうが)、こんな感じで最後まで行くのかな?、っとちょっと緊張感が緩んでしまったが、終盤にかけての捻りで盛り返しました、って感じかな。
⑥若い頃あんなにキレイだったイザベラ・ロッセリーニが初老の修道女役で助演している姿が、若い頃は神々しいほど美しかったのが晩年『オリエント急行殺人事件』(1974年版)で冴えない中年女を演じた(でも、この演技で3回目のアカデミー賞獲りましたけど)お母さんのイングリッド・バーグマンの姿とダブって感慨深いものが有りましたねぇ。
⑦自分が死んだあとに教皇の座を巡って醜い争いが起こることを予想しつつも極秘に秘密兵器を仕込んでおいた前教皇はタイトルに書いたような考えを持つオープンな心の人だったようだが、自分が死んだあとに親族内で血で血で争う事件の発端になる遺言書を残した『犬神家の一族』の犬神佐兵衛翁みたいだな、とちょっと思った。
本作では血で血を争う様なことは起こらないけれども、或る意味それより醜いことを炙り出すことになる。
⑧原題の“Conlave”ってそのまま片仮名読みすると「コンクラベ」⇒「根比べ」ですね。
1番相応しくない、と勝手に思っていた人物
「相応しくない」なんてぬるい表現じゃない、「あり得ない」と表現した方が正しい。
事前に「ラストに驚く」との情報を得ていたので、ある程度「驚く」パターンを予想したりして観に行ったのだが、それすらも手玉に取られたような気分だ。
女性では枢機卿にもなれない「閉じた男社会」の教会という組織で、染色体的に女性と見做される教皇が誕生するなど、あり得ないと「確信」していたから。
しかし確信ほど危ういものはない。確信とは思い込みであり、思い込みは可能性の芽を潰す。認識を曇らせる。本質から遠ざかり、隘路へと追い込まれていく。
常に疑念とともにある教皇を求め、これ以上ない適任者を戴いたラストは天晴としか言いようがない。
オープニング、レイフ・ファインズ演じるローレンス枢機卿が歩いていく姿のバックショットが続くのだが、歩くローレンスの荒い息遣いが推測を掻き立てる。不安か、怒りか、恐れか。
否応なく高まる緊張感が心地良い。この時点でサスペンスとして最高、という予感が湧き上がってくるのがまた良い。
コンクラーベを取り仕切る、という立場である首席枢機卿のローレンスが探偵のような役回りとなっている。もちろん事件が起こるわけではないのだが、協会の頂点である教皇に相応しい人物が選出されるよう、慎重に不穏な要素を調査していくローレンス枢機卿の苦労がしのばれる。
一方で、キリスト教徒裏技「告解」を利用し、情報を集めるしたたかな一面もあり、組織を仕切る手腕に関して言えばローレンスは抜群に秀でているだろうことも伺える。
ローレンスが表の目立ったコンクラーベを取り仕切るのと同様、裏方としてこの一大事を仕切っているのがシスター・アグネス(イザベラ・ロッセリーニ)である。
同じ神に仕える身でありながら、シスターたちは決して表舞台に立つことはない。描かれないが、枢機卿たちが広場に捨てた煙草の吸い殻を片付けたり、ベッドメイキングをしたり、コンクラーベだけではなく日々の教会運営に必要な「再生産労働」を常に引き受けている彼女たちをまとめている。
教会だけじゃなく、日本の一般企業なんかでもよく見る光景だなぁと思ったのは、アデイエミ枢機卿とのトラブルで泣きじゃくるシスターを慰めるアグネスの姿だ。
「女のことは女同士で」みたいな丸投げを、アグネスはずっと引き受けてきたんだろうなと思う。選挙にとって大事なことだから、という理由こそあれ、ローレンスがシスターの話を聞きたい、と申し出たこと自体、結構珍しい出来事なんじゃない?
このコンクラーベは女性を「過去の過ち」という形で排除した者が退場し、女性からの告発という形で排除された者が退場し、最後に「女性の部分を切り離すことを思い留まった」者が教皇に選ばれた。
思えば、すぐ側にいるのにまるで存在していないかのように扱われるシスターたちに、感謝の祈りを捧げたのはベニテス枢機卿だけだった。
ベニテス枢機卿の食前の祈りにハッとさせられたのはきっと私だけでなく、あの場にいた枢機卿の中にも「教皇に相応しいのはベニテス枢機卿だ」と感じた者がいたのだろう。最初の得票はそう感じた何名かの枢機卿によるものなのだと思う。
「神が私をそう創られたのだから、それを受け入れなくては」
ベニテスはそう言って微笑んだが、それは世界も同じた。私は一神教徒ではないが、神がこの世界を創られたのだから、言語の違いも、身体の差異も、ありとあらゆる多様性が神の御心であり、御業であるというベニテスの言葉に雷に打たれたような衝撃と納得を感じた。
私が枢機卿なら間違いなくベニテスに投票する。それはベニテスの言葉の奥深さと、ベニテス自身が困難を乗り越え苦しみの中にある人々に手を差し伸べ続けた純粋さを否が応にも感じさせられたからだ。
ここまでストーリーにばかり触れてきたが、映像表現も見事。特にローレンスが自身の名前を書いて投票した時、天井近くの壁が外のテロによって落ちてくる構図は絵画のような荘厳さを感じた。
同時に神からの「違う、そうじゃなーい!」という叱咤のようでもあり、神ツッコミ激しいな、と感じたものである。
紛糾する枢機卿たちの言い争いに終止符を打った上段の席に座るベニテスと、最下段からベニテスを見上げるローレンスの姿も宗教画として残しておきたい素晴らしいショットだ。題するなら「新教皇誕生を目の当たりにするローレンス」だろうか。
美しい映像と、重厚なサスペンス。そしてレイフ・ファインズの静かな演技。見応えしかない傑作であった。
味わい深い作品
DS祭り
未来は亀のみぞ知る
亡くなったローマ法王は未来を見据えてこの世を去ったのだろう。
未来は神のみではなく亀のみぞ知るだ。
未来は亀のみぞ知る。
カメラを止めるなのホラー映画撮影のシーンもそうだったが前半は疲れるもののそこを乗り越えたらめちゃくちゃ面白くなる。
前半は半沢直樹か?顔芸もあるし。
銀行で1円合わないと帰れま10状態で数字が整うまで執拗な選挙のし直しが繰り返される。
べっぴんさんべっぴんさんべっぴんさんひとつ飛ばしてべっぴんさんという客いじりがあるが、ジジイジジイジジイひとつ飛ばしてジジイ、状態。
大勢のジジイの中でどのジジイが教皇になろうがどーでもええわー足の引っ張り合い醜いわ!
…からのまさかの展開。
観る前は現代の話じゃなく何百年も前の教皇選挙の話の方が方が興味深いと思っていたが、結果的に坊主がスマホを使ってる現代の話だったからこそ、今の時代の先の未来を想像できるのだ。
亡くなったローマ法王はこうなることは想定の範囲内だったのだろう。両性具有なのかはよくわからなかったが、未来を感じる結末は嬉しかった。
亀は万年生きるというから、バチカンの亀は未来を見続けるのだろう。
神の子は、前教皇により、選ばれていた‼️
誰でも良くなったような?!ラストの展開でしたね。
いいえ、違いました。
最後に選ばれた辺境を布教していた枢機卿こそ、
神に選ばれし真の教皇・・・でした。
バチカン市国という世界一小さい国の国王にして、
全世界14億人のカトリック教徒のTOP
ローマ教皇が亡くなった。
そして世界各地から呼ばれた108人の枢機卿の中で、
何回も選挙(コンクラーベ)をして
3分の2以上の票を集めた枢機卿が次期ローマ教皇に選ばれる。
弦楽合奏の荘厳な音楽(ローレンスの内面を活写する)
システィーナ礼拝堂を作ったセットや天井画の素晴らしさ。
暁光でございます。
汚い権力闘争や足の引っ張り合い、裏工作・・・の末に、
正しい選択が成される映画でした。
ラストの30分前くらいで感じたことは、
「そして誰もいなくなった」という失望。
教皇に相応しい枢機卿はもはや誰もいないのではあるまいか?
しかしダークホースがいたのでした。
紆余曲折・・・
教皇の早晩の死を予測したひとりの有力な候補の筆頭の
トランブレ枢機卿は、
早々と手を打っておく。
それが最初に失格したアフリカ系のアデイエミ枢機卿。
彼の30年前のセックススキャンダルを、知った保守派の
トランブレ(ジョン・リスゴー)は、先を見越して手を打つ。
それはアデイエミ枢機卿が30歳の時に19歳のシスターを
おそらく不同意のセックスで妊娠させて、その子供は、
母親シスタターから引き離されてどこかで成人している。
そのシスターをコンクラーベの夕食の場に給仕人の一人として
呼び寄せていたのがトランブレ。
今回亡くなった教皇のダイイングメッセージとも取れる
一つの事実。
教皇がトランブレ枢機卿を嫌った理由が明らかになる。
それはトランブレが票のの買収を裏付ける銀行の出入金の
資料だったのだ。
セックススキャンダルの暴露で足を引っ張り、
買収で票の山積みを図る。
コンクラーベの管理人責任者のローレンス筆頭枢機卿
(レイフ・ファインズ)は、教皇不適任者をバッタバッタと
排除していく。
108人の枢機卿の宿泊所の責任者はシスターのアグネス
(イザベラ・ロッセリーニ)
アグネスはパソコンにも長けて有能です。
イザベラ・ロッセリーニと言えばイングリット・バーグマンの3女
(実の娘です)
久しぶりに拝見しました。
私が思い出すローマ法王と言えば、
ヨハネ・パウロ2世(在位1978年~2005年)です。
世界中を股にかけて祝福に訪れ、日本にいらした時(1981年)の優しい
温かいカリスマ性が思い出されます。
現在のフランシスコ教皇は危篤状態ですので、実際のコンクラーベも、
間近に見られそうなんですって。
候補者を次々と蹴落としたのも虚しいことでしたね。
ローレンスの胸の内も満足感とは、ほど遠かったのでは。
ただ現実では、現教皇フランシスコ教皇は、リベラルな改革派で、
①同性婚に賛成、
②ガザ攻撃にNO‼️(イスラエルを非難)
③女性を重用
④環境破壊に反対
⑤移民や難民問題に理解
とても素晴らしいかたです。
敵も多いそうですので、
次のローマ教皇により、相当に変わりそうです。
(現在は何の発信も出来ずですし、)
バチカンは神父の性加害の賠償で危機的財政だとか。
ローレンスならずとも、頭が痛いですね。
新しい教皇には、バチカンの立て直しと復権を望みたいものです、
(関係はないですけど・・・)
(その存在で世界を導く教皇であれ‼️)
隔離されても世界はやってくる
「政治」の映画としても、「宗教」の映画としても、見応えがある
新しいローマ教皇が選出されるまでの話なのだが、ゾクゾクさせるような映像と音楽が、サスペンスフルな雰囲気を盛り上げる。
「宗教」の世界の話ではあるものの、描いていることは、多数決で決まる選挙という「政治」そのもので、「保守VSリベラル」という対立の構図が明確なのも、分かりやすくて面白い。
選挙に先立ち、選挙を取り仕切る主人公の枢機卿が、「多様性」と「寛容」の必要性を説いた時点で、選挙の結果はだいたい予想できるのだが、それでも、有力候補のスキャンダルが次々と明るみに出る過程では、探偵が謎を解いていくようなミステリアスな展開に引き込まれる。
その一方で、絶えず苦悩に満ちた表情を浮かべている主人公は、おそらく、カトリック教会という巨大なシステムに疑問を感じているのだろうが、そこのところの掘り下げが今一つだったところには、やや物足りなさを感じてしまった。
有力候補のスキャンダルにしても、「隠し子」とか「選挙の票稼ぎ」とかといった話で、カトリック教会を揺るがすようなインパクトに欠けると思っていたのだが、ラストに用意されていた「選挙の結果」と「新教皇の秘密」という二段構えのサプライズには、「そう来たか!」と唸ってしまった。
特に、「新教皇の秘密」については、「確信」と「疑い」という本作のテーマに直結する問題でもあり、改めて「信仰」とは何かということについて考えさせられた。
結局、すべては、前教皇の目論み通りだったという見方もできるのだが、その割には、余りにも偶然に左右されているように思えてならず、もし「報告書」が見つからなかったり、爆弾テロが起こらなかったら、一体どうなっていたのだろうという疑問も残る。
ただ、これについては、「すべては神様の思し召し」だったという考え方もできて、ラストで密室から解放され、空を見上げる主人公の姿からは、そうした聖職者としての「悟りの境地」を垣間見ることもできるのである。
散々、人間臭い、ドロドロとした駆け引きを見せ付けた挙げ句に、最後の最後に「神の存在」を感じさせるところなどは、「政治」だけでなく「宗教」にまつわる映画として、良くできていると思わざるを得なかった。
画面の暗さ、赤みがかった世界、ドロドロの聖人争いかと思わせる画面。...
確信と疑念
少し前まで「新しい教皇を決めるってだけで、面白い作品がつくれるの? 」とか、「有力候補同士が足の引っ張り合いをしたり、意外な人が暗躍して“実は…”っていうコテコテな展開だったりしたらヤダなぁ」なんて、観るのにちょっと腰が引けていたのだが、試写を観た同僚が「めっちゃ面白かった」というので、信じて視聴。
結果、アカデミー賞脚色賞受賞も納得の充実さで、観て損はない佳作だった。
<以下、ちょっとだけ内容に触れます>
もちろん、選挙なので、組織内の力関係が影響は与える。けれど、やはりそこは聖職者たち。俗な欲望だけで釣られる訳ではない。「綺麗事だ」という言葉も飛び出すが、きちんと正論が通るし、過ちがあっても、「赦し」の精神は忘れない。
更にその上に立って、登場人物たちがもう一段奥を問われたり、そうした映画を観ている私たちも問い返される深さや豊かさを持っている作品だった。
その問い返しのきっかけになり、相手の心を動かすのは、どの時も「言葉」。
象徴的だったのは、コンクラーベを執り仕切るローレンスの説話と、戦地での布教活動を重ねてきたベニテスの反論。そして忘れてはいけない、シスターアグネスの発言。
どの「言葉」にも、その人固有の体験や苦悩が滲み出て胸を打つ。
とりわけ自分が共感したのは、「確信」と「疑念」についてのローレンスの話。
最近、仕事上のことで、「迷うことの大切さ」と「迷わないことの怖さ」について考え続けていたので、ローレンスの話はまさにストレートに共感できた。
ただ、自分とすると、字幕の「確信」と「疑念」という言葉は、少し「正誤」を含んだニュアンスがあって別の意味を生んでしまっている感じがするので、それらが訳語として当てられた元の言葉は何だったのか、気になった。
あと、今作のよさは、語られる言葉だけには止まらない。映像的にも、色彩や光や、風や雨などがとても効果的に使われていて美しい。それに、窓やドアの役割にも意味を持たせる演出が、いいバランスに施されていて、トータルで、目でもとても楽しめる作品だった。
前情報全くなしで観た方がいい。
主要キャストと「どうやら教皇選挙が行われるらしい」、くらいの前情報で観た。その程度の知識で観た方が、面白いんじゃないかと思う。
以下、そういう意味ではかなりのネタバレ。
最近まれにみる、ラストの大どんでん返しだった。
正確には、大どんでん返しがいくつか続いた後、まさかの超絶大どんでん返し!!
全然予測も期待もしていなかったので、最後のデカいのに度肝を抜かれた。
これ、10年前だったら作られていないかもなぁ。
「多様性」という言葉が浸透して、まだ10年くらいのものでしょう。
ちらちら「多様性」ってワードは出てくるんだけど、ここにこうやって繋がるか!!っていう、想定外の驚き。
教皇選挙で隔離中だから、探ってる情報が、小出し小出しにしか分からないもどかしさも上手い!!
カブールから来た新司祭が、なかなかいいスパイスで、ハッとさせられるようなことを訥々と話してきて、またこれがボディブローのようにじわじわ効いてきて、存在感を増して来る。
この辺の演出もとても面白い。
で、教皇の選挙なのに、本当にみんな自分のことしか考えてなくて、俗っぽいことこの上ない。
「戦争だ!」とか「戦う!!」とか言い出す奴もいるし、本末転倒。
この滑稽さの描写も風刺が効いてて、力加減が素晴らしい。
陰謀渦巻く教皇選挙。
権力欲って、逃れられないもんなんかな。
全て、前教皇はお見通しだったのだ。
まるで、ローレンス(レイフ・ファインズ)に課された、最後の謎解き、みたいだった。
今年のアカデミー賞を賑わせた作品の中でも、かなりのクオリティ。
「ANORA」も大好きな作品だけど、映画としての質はこちらの方が高いかなぁ。
娯楽性に富んでいるのに格式高く、親しみのない世界なのに、情緒面では人間臭くて、親しみ深い。
サスペンス性たっぷりで、ハッとさせられる教訓に富んでいて、本当に濃密な時間を過ごさせてもらった。
時間かかるわけだ。
聖職者の人間臭さ
聖職者の人間臭さがあぶり出される。「はい、やり直し!」の繰り返しでスラップスティック的グルーヴがアンプリファイされていくのがよい。オチも面白かったし、その直前の「行っちゃうかも??」なレイフ・ファインズの表情もさすがだった。/システィーナ礼拝堂、そんなふうにしていいんだ!
全114件中、21~40件目を表示