教皇選挙のレビュー・感想・評価
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【旧弊的な”コンクラーベ”(教皇選挙)に、急逝した教皇が密かに仕組んでいた事。”今作は、カトリック教会でも多様性を認めるべきであるという強いメッセージがシニカルに描かれた作品なのである。】
<完全にネタバレしているので、鑑賞後にお読みください。>
■ある日、カトリック教会のトップにしてバチカン市国の国家元首であるローマ教皇が、心臓発作のため突如として急死してしまう。
教皇死去の悲しみに暮れる暇もなく、イギリス出身でローマ教皇庁首席枢機卿を務めるトマス・ローレンス枢機卿(レイフ・ファインズ)は枢機卿団を招集し、次のローマ教皇を選出する教皇選挙(コンクラーヴェ)を執行することとなった。
108人の枢機卿がコンクラーべが行われるシスティーナ礼拝堂に集まる。
1.リベラル派最先鋒のベリーニ枢機卿(スタンリー・トゥッチ)
2.穏健保守派のトランブレ枢機卿(ジョン・リスゴー)
3.初のアフリカ系教皇の座を狙うアデイエミ枢機卿(ルシアン・ムサマティ)
4.保守派にして伝統主義者のテデスコ枢機卿(カルロス・ディエス)
の4人が有力視される中、メキシコ出身で亡くなった教皇によって新たに任命されたばかりの、命の危険があるアフガニスタン・カブール教区のベニテス枢機卿(カルロス・ディエス)が開始直前に到着するのである。【亡き教皇に、急遽呼ばれた枢機卿として・・。】
◆感想<Caution!内容に触れています。>
・序盤は、厳粛な雰囲気の中投票が行われて行くが、誰も2/3以上の得票数は得られない。何度も繰り返される投票の合間に、有力候補間では様々な根回しが行われる。投票が終わる度に上がり続ける黒い煙・・。
ー 厳粛な雰囲気と、劇伴も無く、やや単調なので前の席のおとっつあんが、鼾をかき始める。軽ーく頭を突いて起こしてから鑑賞続行する。-
・そして、徐々に明らかになるトップの得票だったアデイエミ枢機卿が、昔に教区の若きシスターと子をなしていた事。そして、そのシスターがコンクラーベ会場で食事係として働いていた事から、アデイエミ枢機卿が激昂し”陰謀だ!”と叫び出て行き、彼を糾弾していたそのシスターは泣いているのである。
ー 驚く枢機卿たちだが、トマス・ローレンス枢機卿は険しい顔になる。そして、アデイエミ枢機卿を呼び出し真実を聞くとその通りだという。その後の投票でアデイエミ枢機卿の得票は大幅に下がるのである。-
・それを画策したのが穏健保守派のトランブレ枢機卿である事も、徐々に明らかになって行くのである。米国大統領選も真っ青の、裏駆け引きである。
本命視されていた、ベリーニ枢機卿の票は伸びず、彼は盟友トマス・ローレンス枢機卿にも、苛立ちの言葉を掛けてしまうのである。
・到頭、トマス・ローレンス枢機卿は、蝋で封をされた亡き教皇の部屋に入り、”或る書類”を見つけるのである。
■そこには、トランブレ枢機卿が他の枢機卿に渡した賄賂の額と受け取った枢機卿の名が記されていたのである。そこには、ベリーニ枢機卿の名もあるのである。
そして、次の投票時には、トマス・ローレンス枢機卿は、初めて自分の名を投票用紙に書くのである。その時に、外で爆弾が炸裂する音が響き渡るのである。
保守派にして伝統主義者のテデスコ枢機卿は、過激派を激しく糾弾するが、そこで初めてベニテス枢機卿は、自身が経験して来た戦争の恐ろしさを、述べるのである。更に彼は”私はここに初めて来たが・・。”と言い、自分が見聞きしてきた枢機卿たちの愚かしき行為を糾弾するのである。
<その言葉に反省しつつ、感銘を受けた枢機卿たちは、ベニテス枢機卿を新たなる教皇に選ぶのである。彼はその結果を受け入れ、”インノケンティウスと名乗る”と告げる。それと共に漸く上がる白い煙。
そして、彼はトマス・ローレンス枢機卿だけに、自分が子宮と卵巣を持っており、スイスでその除去手術をしようと思ったが、辞めた事を告げるのである。
今作は、カトリック教会でも多様性を認めるべきであるという強いメッセージがシニカルに描かれた作品なのである。>
鍵は絶対的な家父長制
カトリック信者じゃないし、馴染みもないからこそフラットに観れたかも。コンクラーベの仕組みとか絶対的な男性社会とか、とても勉強になるなーと思ってたらそれが鍵だったかー!!と思わせる展開。
序盤は次期教皇の候補が揃いも揃って小物でこんなのが世界的な宗教指導者になってしまうのか、、、?と絶望的な気持ちに。もうローレンスしかいないじゃんと思わせ、本人も半ば諦めたところでのどんでん返し。納得の結果ではあるけど演説ひとつで風向き変わるのはどうなの?いや、意外とカトリック教会も世俗的なようだし、こんなもんなのか、、、。と、思ってたらそうきたかー!
徹底的な男性社会で女はいるけど見えない、そんな世界をこう逆手に取ってくるとは思わなかった。
全て前教皇の計画通りにコンクラーベが行われていってたんだろうけど唯一で致命的な難点が性別だったんだろう。手術すれば良いとか傲慢じゃないか。性適合手術が神への冒涜とか言うつもりはさらさらないけど、強要するなら別。前教皇もまたカトリック教会という狭い世界で生きた人なんだなと思った。
本当に相応しい人が教皇に選ばれたとは思うけれどもその教皇名は何か意味あるの?と思わず後で調べてビックリ。意外と野心家ということかな?(ローレンスが考えてた教皇名も納得)
色んな社会の矛盾をカトリック教会を舞台に詰め込んであってむしろカトリック信者じゃないからこそ楽しめた。神の懐は広いんだけど狭めてるのは人間なんだという皮肉を感じた。
これぞ映画!最高のつくりあがり!!ラスト最高!!!
今年いちばん面白かったと言って過言ではない作品。現在No.1。
日本では(少なくとも私は)ピンとこないテーマだが、
教皇が亡くなったため、新教皇を選ぶための選挙「Conclave」に
世界中から候補の枢機卿が集い、選挙戦が展開される。
この選挙戦、アメリカ大統領選さながらの足の引っ張り合いで、
スキャンダルを暴き晒しまくるという、
人間の汚ったないところも見せまくる、まさに戦争状態。
その中でもConclaveを仕切る主人公ローレンス枢機卿(レイフ・ファインズ)が
あまりにもカッコよく人間的にも魅力的なため応援してしまうのだが、、、
本人はあまり教皇になりたいという感じではない。
それも本当かどうかはわからない。なぜなら教皇名を考えていたりするから。
ライバルがどんどん落選していく中、
ローレンス枢機卿が選ばれるかと思いきや、、、
テデスコ枢機卿vsベニデス枢機卿の場面でのベニデスの言い放つセリフは
胸にグサグサ刺さるし、であるがゆえに形成逆転することは胸熱だった。
そこからさらに意外性のあるオチが待っているとは思ってもおらず、
実に驚かされたと同時に、最後の最後まで楽しむことができた。
まさに映画というフォーマットをつかったエンターテインメントとして
飽きることが一切なく、しかも最後の最後まで楽しめる仕上がりなのは
今年は本作がダントツだと思う。
俳優陣が素晴らしいが、レイフ・ファインズは群を抜いていた。
映像の色彩も目を見張る出来で、特に赤🟥が印象的につかわれいて、カッコよかった。
劇伴も演技&映像にマッチしていて、物語を盛り上げていたと思う。
レイフ・ファインズの息づかいが音響として効果的。
第97回アカデミー賞において脚色賞しか受賞できていないのが信じられないくらい
素晴らしい作品。
パンフレットも実におしゃれな出来でオススメ!!
まず渋さと画面の鮮やかな赤のコントラストでやられる映画。
イメージは本格ミステリー会話劇、
かと言って音楽の盛り上がりや各シーンのアングルが美しいやら格好いいやらでニヤニヤしてました。
会話シーンが面白いと、時間を忘れて楽しめる、ストーリーと美術が両方素晴らしいのは貴重。
主役のローレンスの管理者として立ち回るも、その裏の人間的な葛藤、感情や一箇所出てしまった野心の部分もひっくるめて魅力的。最終的には管理者として葛藤する中、比較的一番安寧な立ち位置でした。それも彼の定められた道であった気がしますね。その他役者陣のお芝居も魅力的。キャラクター造形もテンポいい会話劇から魅力、憎らしさ含めわかるようになっており秀逸でした。
この作品は『政治闘争をかきたかった』と監督がおっしゃっていたように、今の日本、世界の政治など当てはまる部分は多いと思います。
かと言って決して分かりにくい難しい映画ではないです。この映画を見てファンダメンタルや政治、お金の流れなど、混乱に流されずある種自身が管理者のように周囲にアンテナをはることが、自分の人生を豊かにするのだと感じます。
主役のローレンスはある意味私達自身で、
この先、誰が統治する座につき、どのような社会的混乱が起ころうとも、ある種いつもの日常がこれからも続くのだと。あのラストで思い知らされました。ある意味深掘りすると怖い映画ですね。
この会話劇が素晴らしいし、やりとりの裏側を想像するのが面白味です。
ド派手などんでん返しだけが面白さじゃありませんよ。この渋さや裏にある残酷な現実を想像させる秀逸な脚本が良いのです。たまらないのです。
昨今『衝撃』ばかり求めてしまうと頭が思考停止してしまうのでこういう映画が薬になります。
巧みな脚本に唸る
コンクラーベという特別な状況下で繰り広げられる心理戦。閉ざされた環境で繰り広げられる枢機卿達の会話に終始するも、緊張感が物凄い。自分もその場にいるような感覚で、固唾を飲んで選挙の行き先を見つめていました。
聖職者だって普通の人間、生きていれば間違いも犯すし欲もある。粗探しすれば埃は出てくる。
主人公のローレンスが、序盤は恐らく本心から教皇の立場を望んでおらず、粗探しして対立派閥の候補者を陥れても…みたいなスタンスでいますが、どんどん状況は変化していきます。
本作は基本的にローレンスの視点から描かれていますが、どんどん彼に同情してしまう…ずっと苦悩していて、この数日間のストレスで寿命が縮みそう。笑 苦悩は最後の最後まで続き、驚きの結末に。まさか序盤の説教がここで効いてくるとは…!
アカデミー賞脚色賞大納得の素晴らしい作品でした。
音がよかった
人種、女性スキャンダル、リベラルVS保守、ジェンダー。浮上するテーマが今日的すぎてありふれてるというか、娯楽作品としてはもっと意外な展開が欲しかった。人間くささが。あるいは、このシチュエーションの作品なら今は外せないテーマなのだろうか。
音楽がすごかった。チェロ?を一回弾くだけで醸し出す不穏。あれが楽しみでもう一回みたい。
セットと衣装も荘厳ですごく良かった。
期せずして、実在の教皇の健康問題と重なってしまったが、バチカンはこのくらいの表現には寛容なのだろうか(教義に反したものではないから目くじら立てることはないかな)。
選挙強行
ローマ法王描く映画別に特別好きな訳ではないのですが、結構見ている
現教皇様が一時容態が悪かったので現実とシンクロするかとひやひやしました(現在は容態安定)
次の教皇選挙なのにまるでポリティカル、スパイミステリーのようでした そしてとても大変な手続きなのですね、きっと大昔から変わって無いのでしょう
レイフ・ファインズの苦悶の表情と音楽が更にスリラー風味助長
黒人やらアフガニスタンやらえらく最近のポリコレ満載だなと思っていたらやっぱり...とはいえ多様性が一番そぐわなそうな所で意外な結末中々面白かったです まさかの亡くなった教皇の思惑通りだったのかな?
ぷはーっ!!やっぱシャバの空気はうめぇ~なぁ!
もうね。観ているこっちが胃がキリキリしてくるわ。
いくらフィクションとはいえドアの向こうは知り得ない世界。
だけど生々しい欲望と執念が渦巻いてドロドロな世界。
ある意味見えないものは見えないのが幸せな事もあるもんさ。人の心も物事も。
専門的な用語も出てきますがスクリーンの前であなたも根競べをしてみませんか?
保守vs多様性
こんなことを書くと「またかよ」と叱られそうなのだが、2024年に公開された○○賞狙いの映画の多くが、いかにトランプvsハリスのアメリカ大統領選挙に注目していたかがよくわかる。くしくも現在病状悪化で危篤状態が続いている、バリバリのグローバリスト=フランシスコ現ローマ教皇をモデルにしているようにも思えるが、本作は間違いなく“コンクラーベ”の姿を借りた、(マスゴミがなぜか極右と形容する)保守とグローバリズム(多様性)こそ正義と“確信”しているリベラルの争いを描いている1本だ。
聞けばこのフランシスコ教皇、DSべったりのグローバリストであり、2020年のアメリカ大統領選挙でもめた際も文句タラタラのトランプに対し、コロナ禍を理由に早急に(バイデン勝利の)結果を受け入れるべきとのコメントを残しており、どちら側なのかは火を見るより明らかだ。本作においてそんなリベラル派代表の枢機卿を演じているのがフランス人枢機卿ベリーニ(スタンリー・トゥッチ)であり、そのベリーニおしの主人公ローレンス主席枢機卿(レイフ・ファインズ)なのだ。
序盤はアフリカ系の枢機卿がトップ得票率を稼いでいたが、性犯罪スキャンダルが発覚してリタイヤ。それを画策したことがバレた野心家のトランブレ枢機卿(ジョン・リスゴー)も教皇レースから脱落する。ベリーニはどうも政治家から買収されたようで教皇になる気などまったくなく、コンクラーベをしきっているローレンス主席枢機卿とイタリア人保守派枢機卿テデスコの一騎打ちになりそうな展開へ。そこに現れた意外な人物....
派手なアクションもないけれど、120分飽きずにみせるドイツ人監督エドワード・ベルガーの実力は本物だろう。私は前々作の『ぼくらの家路』を拝見しているのだが、ワン・シチュエーションながら濃密に見せる技術に長けた監督さんのような気がする。本作のすべてのショットが、バチカンのシスティーナ礼拝堂(多分セット)とそれに隣接した宿泊施設のみで撮られており、無駄な製作費をかけていないDOGEも納得の緊縮予算作品なのである。
バチカンの近くで起きたテロ事件を引き合いに出して、「お前ら(リベラル)があんな奴ら(移民)を国内に大勢いれたりするからこうなるんだ!」と吠えるテデスコはまるでトランプやヴァンスを見ているかのようで、そのテデスコに「恥を知れ!」と逆ギレするベリーニなのだがどうも迫力に欠けている。現実世界の選挙が保守優勢に傾いていることを既に知っている我々が観ると、ベリーニやローレンス、そしてダークホース○○○○の演説はやはり綺麗事を並べ立てているようにしか見えないからである。
保守もリベラルもお互いやり過ぎるとウクライナやガザのような戦争になるわけで、ほどよいバランスを保っているのがおそらく“平和”という、人間が最も心地よいと思う状況なのだろう。しかし、インフレやデフレの際の金利や国債発行の適正値同様、どこが“ほどよいバランス”なのか正確なところは誰にもわからない。マスゴミが自陣に有利な統計値を捏造しても何のおとがめもない現代社会において、我々はただ“神の見えざる手”にすがるしかないのだろう。
今回は邦題の方が良かった。
亀
アカデミー作品賞を逃した理由
【アカデミー賞作品賞を逃し、脚色賞受賞の理由】
端的に言うと、
出世争いと聖なる世界、
両立していたら歴史的名作になっていた。
理解はできる、聖職者も人間、
それが狙い。
でも、もったいない。
以下蛇足。
宗教的テーマを扱いながらも、
そのアプローチが非常にユニークであり、
これまでにない視点で聖職者たちの物語を描いている。
この映画で思い出されるのは、『薔薇の名前』だ。
あちらもまた宗教的な背景を持ち、
聖職者がスクリーンいっぱいに埋め尽くされ、
荘厳な美術と厳粛な雰囲気を活かしてエンターテインメント性を保っていた。
14世紀の宗教的世界観ベースのキリスト教世界と、
21世紀の科学的世界観ベース(現実はテロやメディア、SNS対応)のキリスト教世界の矛盾を作品全体で背負えるのか。
しかし本作はその逆を行っている。
宗教的象徴や儀式を意図的に排除し、
聖職者たちを身近で人間味溢れる存在として描いている。
それが本作の狙いの一つであり、
聖職者という人物たちが聖なる存在である前に一人の人間であることを強調している点が、物語に新たな奥行きを与えている。
物語の舞台がコンクラベ(教皇選挙)の閉ざされた空間であるため、
伝統的な聖なる壮大な建物や荘厳な儀式が描かれることはなく、
代わりに日常的なシーンが強調される。
例えば、
スマホを操作する枢機卿、
没収されるiPad、
さらにはエスプレッソマシンの音までもが重要な要素として強調される。
これらの世俗的な要素が映画にリアルさを与え、
聖職者たちがどれだけ世俗的であるか、
またその生活の中でどれほどの人間的矛盾を抱えているかを浮き彫りにしている。
このように世俗性が強調されることで、
主人公であるレイフ・ファインズ演じる枢機卿の〈祈り〉に対する不信感が一層深まる。
その内面的な葛藤は、彼の精神的迷いをより強く感じさせる。
というような、
この映画が伝えたかったメッセージは理解できるものの、
物語の全体像、
特に「宗教」というテーマをより深く掘り下げるためには、
もう少しロングショットや象徴的な引きの絵が必要だったのではないかとも思える。
聖職者たちの権力闘争や内面の矛盾を描くために、
もっとシンボリックな場面があれば、物語の深みが増し、
視覚的なインパクト、
セカイ系的な示唆も強化されたであろう。
システィーナ礼拝堂に全てを押し込んでいる功罪でもある。
ラストの展開が予測可能であるという点も否めない。
しかし、その予測可能性にも関わらず、
物語の本質はラストの展開だけではなく、
登場人物たちが繰り広げる細かいセリフの積み重ねにある。
この小さなセリフの積み重ねが、
物語の中にある微妙な人間関係や内面的な葛藤を浮き彫りにし、
視覚的な演出よりも、むしろ心に深く残る。
登場人物のセリフが何気ない瞬間に意外な意味を持ち、
観客に感情的なインパクトを与える。
そして、最終的にあの枢機卿が教皇に選ばれる展開には、
物語としてのカタルシスが感じられる。
枢機卿が教皇にふさわしい人物であることを納得させるに足る、
内面の描写もなされており、
ただの消去法的な選択ではなく、
名実ともに教皇にふさわしい人物、
教皇の在り方への問題提起であることが示される。
その過程こそが、この物語の核心であり、
聖職者としての人間らしさを強調することで、
テーマの深さがより際立っている・・・
であれば、という所だ。
本作の狙いとして、
聖職者の人間性を描くことは理解できる。
しかし、その中で教皇選挙という大きなテーマをより象徴的に描く方法、
あるいは映画全体のトーンをもっと引き締めるための視覚的な手法があれば、
物語の深みがさらに増したことは間違いない。
もちろんそれは検討したうえで選択しなかったのだろう、
その辺りが作品賞を逃した理由なのかもしれない、
あるいは、
撮影はしたが編集で落としたのかもしれない、
全方位的に忖度をするとやむを得ない判断かもしれない、
その辺りが作品賞を逃した理由なのかもしれない。
それでも、
小さなセリフの積み重ねやキャラクターの微細な描写が、
最終的にこの映画の力強さを生み出しているのは、
脚色賞受賞の理由のひとつだろう。
イザベラ・ロッセリーニをキャスティングするという事は、
グッジョブをさせるという事・・・は納得。
赤と白、の中は黒
今年度のアカデミー賞関連では一番注目していた作品。
あらすじもだけどポスターなどのビジュアルが、ただならぬ事が起きそうなくらいに赤くて圧倒的に好き。
エドワード・ベルガー監督の過去作『ぼくらの家路』も、なんだかやんごとなき映画だった。
作中でも、枢機卿たちの衣装をはじめタブレットの縁だったり、壁の腰見切り(初めて知った名称)だったり、細かいところにまで赤が使われている。
爆発後の額の傷にまで血の赤を差し色にするとは気が利いてる。
目を引く色使いや緊迫感のあるアングルがちょっとデパルマっぽいかなと感じた。
聖職者とはいえ人間だし、以前には児童性虐待のニュースもあったから特段に驚くこともなく、むしろ教皇になるための蹴落とし合いがなかなか底意地が悪くて、もっとやり合えと楽しめたし、不穏な空気を煽るような弦楽器の音楽も良かった。
仕切り役に徹していたローレンスが、一瞬だけ野心を見せたところもなかなか良いアクセントになってる。
クリスチャンではないから、結果が教皇庁的にOKなのか分からないし、しれっとポリコレねじ込んだような素性にモヤっとしてしまったのが少し残念で−0.5。
イザベラ・ロッセリーニは年取っても綺麗だし、ジョン・リスゴーは年取っても顔面の圧がすごい。
結末に驚きを隠せない
manage. 割と冒頭でローレンス枢機卿が呟く言葉 妙に印象に残...
manage.
割と冒頭でローレンス枢機卿が呟く言葉
妙に印象に残っていた
管理する、以外にもニュアンスはあるわけだけど、
後半に向かう中で、本当にmanage.だな、これは
と思わされる
あらゆる意味でのmanage.
宗教の世界とはいえ、やはり政治色は消せない
ましてや、教皇ともなれば
私利私欲などとは、離れた場所にいる存在、と思いたいところだが、私利私欲しかない、むしろ
そりゃ生きて社会に属する人間だから仕方ないわけだが
そんな私利私欲、様々な人々の思惑が渦巻く中、次期教皇を決めるコンクラーベが進行していく
シスターたちの立ち位置、見えない存在
だが、絶妙なタイミングで、神がお与えになった目と耳が発揮される
よく考えてみれば、これでもかという男社会
その中にいる彼女たち
そして、思いがけない、予想もしてないラストだった、私にとっては
え?そうなるんだ…
ええ??そのエピソードいる???
だけど、そのエピソード、いるんだな
こうして感想を書いてみれば、そう思える
ただ、コンクラーベの投票用紙を燃やす意味と、煙の意味を知らないと、少しばかり伝わらないかもしれない、と思うシーンもあった
そもそもがっていう─
想像の上を行く結末に驚く
自分的には物凄く面白かったのですが、原作があるのでしょうか?
何となくウンベルト・エーコの「薔薇の名前」を思い出しました。
カトリック教会に詳しくなくても全然楽しめる密室?ミステリーですが、ヴァチカンが現在抱えている問題や現教皇のリベラル改革の内容くらいは知っておくとより楽しめるのではないかと思いました。
当たり前ですが、リベラルと伝統の維持は相反するため、あまりに革新的であってもそのバランスを崩すことになり塩梅が非常に難しいのですが、あってはならない事の徹底排除、過去のあやまちの清算、多様性の受け入れ辺りは世界中に信者を抱え、世界に影響力を持つ大規模なカトリック教会であるがこその課題なのかなと思いました。
ただ本作ではリベラル派であっても受け入れるには相当の覚悟が必要と思われる結末であり、それを知った時の驚きはローレンスと同じくらい衝撃を受けw、つい声が出そうになってしまいました。
レイフ・ファインズ演じる主席枢機卿ローレンスは自身も候補の一人であるにもかかわらず管理人としてコンクレイヴ中は中立でいなければならず、一方で尊敬する前教皇のリベラル改革は引き継ぐべきと考える難しい役どころでしたが、意外や意外、妙なリアリティを感じる事ができ、役者の演技力と脚本の巧さが光りました。
あまり事前情報があると面白く無くなるので控えますが、観て損はない映画だと思いますのでおすすめです。
頭ぶん殴られたような衝撃的な結末。これだけはゼッタイネタバラししちゃ駄目。
念のため、書いておきますが、おそらく演出効果を狙ってわざとカットされているようだけど、コンクラーベの結果、教皇が決まると、システィーナ礼拝堂の煙突から白い煙が出ることになっている。だから最後のひとつ手前のシーンでローレンスが空を見上げるショットがあるけどあの時彼の目には白い煙が映っているはずです。
そう、新教皇は決まります。
作品としては、前教皇が亡くなったあとの教皇選挙で、候補者たちの権謀術数の限りが展開されるというか、選挙管理者であるローレンスの身辺確認との争いが描かれている感じ。でも候補者たちが皆、小物というか、あまり魅力的でないのですね。だから映画が進むにつれて、だったらあの人じゃないか、みたいな予測ができて、結果、そのwhoっていうとこは予想通りになるんだけど。
最後の最後に驚天動地の仕掛けが用意されてました。(伏線はある)
ともかく観て!ビックリはするけど後味もそんなに悪くないです。
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