「芳醇で重厚な人間模様を描きだした秀作」教皇選挙 ヤナコさんの映画レビュー(感想・評価)
芳醇で重厚な人間模様を描きだした秀作
2025年5月。実際の教皇選挙が行われたことで、この作品が注目され、Amazon Prime Videoで配信開始となったので視聴しました。
視聴をするうえでカトリック教会に関しての知識はほぼ有りません。
教皇を筆頭とした序列(力関係)もよくわからない状態で視聴をしましたが、十分楽しかったです。
ただ、自分が高齢になった為、主要人物の顔と名前が一致できない・・・覚えられないんですよね。作品では主要キャラは一応判りやすい設定にしてはしていると思います。
衣装が皆一緒というのが、憶えにくくさせたのかなぁ・・・これは私個人の問題であり、作品には問題ありません。
本作品、シナリオがとても良く出来ていると感じました。神に仕える聖職者ではありながらも、人間。巨大な権力を前にして欲が抑えられない、皮肉。
当初は「この選挙をしっかりと運営する」ことを目的としていたローレンスが、自分の名前を書き出すという、人の、それも欲から一番遠い存在の聖職者なのに、欲に流される悲しい性の描きだし方がエグかったですね。
神のまにまにが大原則のはずなのに、ガッツリ人の欲と思惑と、足を引っ張り合う愚かさを描き出す反面、終盤では「神」が思い描いたかのような展開となるのですが、実のところ「前教皇」のシナリオのようでもあり、とてもとても幾重にも人の心理が描き出される見事なシナリオでした。
そんな見事なシナリオを、役者陣が素晴しい演技で膨らませ、荘厳な音楽が本作品を豊かにし、ロケーションやスタジオセット、衣装が説得力を持たせる、素晴しいチームワークを感じます。
全く、ド派手なアクションはありませんが、とても見応えがあり、ラストの展開も衝撃で、満足度のとても高い作品でした。
