劇場公開日 2025年3月20日

「"疑念"の白い煙が上がるとき」教皇選挙 TSさんの映画レビュー(感想・評価)

4.5"疑念"の白い煙が上がるとき

2025年5月10日
PCから投稿
鑑賞方法:映画館

知的

ドキドキ

全国で上映館が拡大された恩恵で田舎町でもやっと観ることができた。

数日前に予習がてら観た「二人のローマ教皇」とは全く趣の違う、本格ミステリー・サスペンス作品だった。
世界一有名な文字通り「密室選挙」。
原作は、コンクラーベに参加した枢機卿にインタビューして書かれたものらしい。劇中に登場するエピソードは創作だろうが、きっと似たようなことが現実に起こっていたのだろうと思わせる。

閉ざされた扉の向こうで繰り広げられる選挙の内幕。それは「聖」とはかけ離れた「俗」なるもの。色々な「思惑」が蠢き合っている。
鑑賞して感じた素直な感想は、世俗を離れた聖などこの世にはない。俗の中に聖を見いだすのが信仰や宗教というものではないか?というものだった。

不安と緊張感を高めるストリングスの音色。
バックミュージックのように静かに聞こえる人々の話し声。
時々ぼやける画面。
破壊された礼拝堂の窓から差し込む光。
閉ざされた空間の中でジリジリと経過する時間にアクセントを付けていく音と画が巧みだった。

ローレンス枢機卿役のレイフ・ファインズが見せる、選挙執行者としての責任感ある振舞と一候補者としての野心、苦悩。シスター役のイザベラ・ロッセリーニの目で訴える演技が印象的。

ラストで衝撃の告白がある。
それを飲み込んだローレンスが空を見上げる顔は、特別な感慨を含むものではなく、やれやれ、という一仕事終えた男の俗なる顔にしか見えなかった。陸に這い上がった亀も池に戻して、バチカンも日常に戻る。と・・・

ローマ教皇。その権威と裏腹に持つ「聖」と「俗」の間という曖昧な位置づけが、何か人を惹きつける力を持っている。
そんなことを考えながら、俗物である私は映画館を後にして日常に戻るのであった。

TS
かばこさんのコメント
2025年5月10日

「世俗を離れた聖などこの世にはない。俗の中に聖を見いだすのが信仰や宗教というものではないか?」
仰ること、共感です。
しょせんは人間がすることですが、自分が俗であることを認識しながら聖を目指す、本気で目指せる人が聖職者であるべきと思います。ベニテスはそれが顕著で、ローレンス枢機卿にもそれがあったと思えます。
そしてあくまでもフィクションなのでベニテスですが、現実的には、バチカン内で政治力も持つローレンスが教皇に適任な気がします。

かばこ
ノーキッキングさんのコメント
2025年5月10日

教皇のお気に入りはベニテスと亀でした。亀は孵化環境でオス・メスが変わってしまう生き物。ラスト、中庭の若いシスター達も象徴的でした。

ノーキッキング
ひなさんのコメント
2025年5月10日

TSさま、初めまして。
共感ありがとうございます。

>ラストで衝撃の告白がある。
それを飲み込んだローレンスが空を見上げる顔は…

衝撃の告白は2つだったのではないかと、私は思っています。
ローレンスが空を見上げた顔は、私も同感です。

ひな
大吉さんのコメント
2025年5月10日

俗の中に聖を見いだすのが信仰や宗教、まさにその通りだと思います。

大吉
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