「まるで聖堂内にいるかの様な体験」教皇選挙 ラッキーさんの映画レビュー(感想・評価)
まるで聖堂内にいるかの様な体験
去年のクリスマス・ミサの時から映画「教皇選挙」を友人から薦められていたけど、日頃、シスターやご高齢の外国人神父様達を目の当たりにしているので、私的に普段通りの司教や枢機卿とシスターとSPがいるバチカンの風景だった。
ミケランジェロの「最後の審判」があるシスティーナ礼拝堂のコンクラーベで使われる投票を数える道具、祭服、指輪、御神具等は細部に渡ってリアル。
枢機卿が頭に被るズケットとミトラの使い分け、礼拝堂の扉の両脇にスイスガードがいて、劇中のグレゴリオ聖歌も美しい。
映画鑑賞していて、リピーターのカトリック信徒が多いなとは思う。
3回鑑賞すると、ヨハネ・パウロ二世からベネディクト16世までと、まさかの生前退位で現フランシスコ教皇の選出に至る過去のコンクラーベの時にはどうだったかを思い返してみたり、2019年に現教皇の来日が実現するまでに日本人の枢機卿が空位だったとか、来日時にボランティアスタッフとして東京ドームの入場ゲートで信徒のIDチェックしたこととか、色々思い出した。
なので、教皇庁から切り離されて首席枢機卿がコンクラーベという教皇を決めるための選挙プロジェクトをマネジメントしつつ、天の目の「慈悲」とか「赦し」という眼差しを持っているのがキリスト教らしい映画だった。
人間の中に峻厳の柱と慈悲の柱があって、その柱を支える天の天秤が絶えず動きながら内面のバランスを取って、祈りの中でどこまでも自分に真摯に向き合っていくのか信仰の姿勢をありのまま映し出していてカトリックらしかった。
実際のカトリック教会もジェンダーや他宗教との対立とか、バチカン内部の保守派とリベラル派が存在して枢機卿の意見が分かれていることや、現教皇を真っ向から批判している枢機卿もいたりするからリアルな映画だったけど、14億人の信徒の頂点に着座するのはやっぱり重責だよねと感じた。
そんな中、どこまでも「神の代理人」としてフラットに見て行けるのかが教皇には大切な視点で何手先まで読んでいけるか、熟練されたマスターとして着座の覚悟が必要なんだとラストで思った。
自信満々な「確信」ほど傲慢で危険なものはないと思えたし、常に「疑念」を抱きながら進むって信仰上、純粋で大切なことだと思う。
若い子達がゴールデン・グローブとアカデミー「脚色賞」受賞作品ということで興味を持って普段通りポップコーン片手に劇場入るも、誰も音を立てて食べる子がいないのに感心したというかストーリーに引き込まれるために、上映中はミサを中心として進行しているから安易に食べられない厳かな空気を作っている稀有な作品。
まるで聖堂内にいるかの様だった。
ノーキッキングさん、コメントありがとうございます。
教皇への「愛」は長年間近に接して来た存在への愛情と尊敬の念から故人を悼む嗚咽ではないでしょうか。
ローレンス枢機卿が自分に投票するシーンは、誰も宛に出来ないからなんでしょうけど、最後は無心に光が当たりましたね。
キリスト教らしい作品でした。
きれい事ではなく、ローレンスの人間臭さが秀逸でした。前教皇の部屋に忍び込んで嗚咽し、“愛”を匂わせたこと。途中、色気を出して自分の名を書き、天上からのガレキを浴びせられたシーン。結局、前教皇のお気に入りはベニテスと亀だったと得心したラスト。
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