「多様性を認めつつも」教皇選挙 nakadakanさんの映画レビュー(感想・評価)
多様性を認めつつも
緊迫感のある音楽や不穏感のある空気など、硬派な語り口のミステリーとして楽しめました。
映像的にも、厳かな建造物や宗教的なモチーフ、厳粛な選挙の様子など見応えがありました。
宗教的伝統的な厳粛さと俗っぽい選挙選の組み合わせは、どこかシュールさを感じます。
選挙の票集めなどは俗世間と変わりませんし、そもそも宗教とは言え結局ただの権力争いだとは思いますが。
ナショナリズムやリベラル、分断や偏見、多様性への賛否など、今の社会情勢、現実の選挙戦を連想させる構図になっているところも面白かったです。
そんな中、自分が正しいと確信することの危うさを語る主人公の言葉には、大いに共感しました。
個人的には宗教などは特に信じていませんが、真っ当に信仰に向き合う人間を見ると、宗教も大切だなという気にもなります。
パワーバランスで投票先を決めるのではなく相応しい人間に投票するという、理想的な結果もスッキリしました。
組織がガタガタの時に組織体制を批判してインパクトのある演説をする人間に投票したという見方をすると、ポピュリズムの危うさもあるかも知れませんが。
ラストのラストも予想外かつ成程そう来るかと思わされるもので良かったです。
多様性を認めつつも選挙が可能な地位にあるのは男性のみ、選挙の裏で黙々と食事などの世話をしていたシスターたちの描写が効いてきます。
とは言え、最後は結局、誰が教皇になったのかハッキリと分かる場面はなく、再投票して別の人物が教皇になった可能性も考えられるような。
あのまま教皇になったと信じたいですが、今の現実では無理なのでしょうし。
ラストカットも、扉が閉まるところなど、女性への扉はまだ閉ざされていると示唆しているようにも感じてしまいました。
主人公演じるレイフ・ファインズの、淡々としつつも内面の葛藤や迷いを滲ませる演技も素晴らしかったと思います。
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