「周囲は絶賛していますが、背景を思うと…」教皇選挙 片喰鶏肋さんの映画レビュー(感想・評価)
周囲は絶賛していますが、背景を思うと…
<致命的なネタバレを含みます>
映像をはじめ演出がとても美しく、俳優陣の迫力もとてもよかった。
ミステリーとしてもよくできているし、心理戦も素晴らしかった。
でも私はこれを手放しで人に薦めようという気持ちには、
今のところまだなっていません。
以下、これをご覧になっている方はすでに鑑賞済みという前提で書きます。
最後に選出された人についてはその人となりや属性から、
「希望が見いだせる」「よかった」という声が感想として多く聞こえてきました。
ですが、私はどうしても空しく悔しい気持ちが大きかったのです。
最後に仕切役が頭を抱えるその姿から私の耳に聞こえてきたのは
「ああなんということだ」という悲嘆でした。
本作の肝となる人物は、前教皇の進言に寸前のところで思いとどまりました。
その姿で今後に臨むことが本作の明るい未来なのだ、
きっとそう印象付けられているのだと思います。
しかしながら、おそらくその人物に対して見る目が変わってしまった仕切役の心、
あくまで秘密が明かされぬまま任務を遂行するであろう未来、
(仮に明かしたとすれば命すら脅かされないであろう現実)
これを思うと、なんとも居たたまれない気持ちになりました。
2025年、教皇庁の主要な役職に女性が就いたそうです。
ですが、これまでどれだけ優れていてもその座に就くことが叶わなかった人たち、
「見えないものとされた(今もなおされている)」人たちのことを思うと、
なんとも歯がゆい気持ちが残ります。
おそらくキリスト教、カトリックの世界を知っている人たちと、
私たちのようにキリスト教の普及率がそれほど高くない地域の人では、
この映画に対する感想も異なってくるのだと思います。
それはおそらく映画に造詣の深い男性なのか、
特に映画鑑賞を趣味としない女性なのか、
個人個人の背景によって着目するところが違うでしょうし、
各々にどのようなバックグラウンドがあるかによっても、
捉え方が変わってくるのではないでしょうか。
そのような意味で私は中央の点数をつけました。
声に出さないだけで、同じような思いを抱いた誰かと共有したくて。
なお、メタファーとしての亀やカナリアは膝を叩いた。