「前情報全くなしで観た方がいい。」教皇選挙 クリストファーさんの映画レビュー(感想・評価)
前情報全くなしで観た方がいい。
主要キャストと「どうやら教皇選挙が行われるらしい」、くらいの前情報で観た。その程度の知識で観た方が、面白いんじゃないかと思う。
以下、そういう意味ではかなりのネタバレ。
最近まれにみる、ラストの大どんでん返しだった。
正確には、大どんでん返しがいくつか続いた後、まさかの超絶大どんでん返し!!
全然予測も期待もしていなかったので、最後のデカいのに度肝を抜かれた。
これ、10年前だったら作られていないかもなぁ。
「多様性」という言葉が浸透して、まだ10年くらいのものでしょう。
ちらちら「多様性」ってワードは出てくるんだけど、ここにこうやって繋がるか!!っていう、想定外の驚き。
教皇選挙で隔離中だから、探ってる情報が、小出し小出しにしか分からないもどかしさも上手い!!
カブールから来た新司祭が、なかなかいいスパイスで、ハッとさせられるようなことを訥々と話してきて、またこれがボディブローのようにじわじわ効いてきて、存在感を増して来る。
この辺の演出もとても面白い。
で、教皇の選挙なのに、本当にみんな自分のことしか考えてなくて、俗っぽいことこの上ない。
「戦争だ!」とか「戦う!!」とか言い出す奴もいるし、本末転倒。
この滑稽さの描写も風刺が効いてて、力加減が素晴らしい。
陰謀渦巻く教皇選挙。
権力欲って、逃れられないもんなんかな。
全て、前教皇はお見通しだったのだ。
まるで、ローレンス(レイフ・ファインズ)に課された、最後の謎解き、みたいだった。
今年のアカデミー賞を賑わせた作品の中でも、かなりのクオリティ。
「ANORA」も大好きな作品だけど、映画としての質はこちらの方が高いかなぁ。
娯楽性に富んでいるのに格式高く、親しみのない世界なのに、情緒面では人間臭くて、親しみ深い。
サスペンス性たっぷりで、ハッとさせられる教訓に富んでいて、本当に濃密な時間を過ごさせてもらった。