「戦う相手」教皇選挙 おじゃるさんの映画レビュー(感想・評価)
戦う相手
コンクラーベをテーマにしたミステリーということで、予告からずっと気になっていた本作。期待をこめて公開初日の朝イチで鑑賞してきました。中高年を中心に予想以上の客入りで、みなさんの関心の高さがうかがえます。序盤こそ登場人物の多さに圧倒されて混乱しかけましたが、しだいに整理され、関係性が把握できてからはストーリーに没入でき、楽しめました。
ストーリーは、キリスト教最大教派カトリック教会の最高指導者・ローマ教皇が亡くなり、後任を決める教皇選挙「コンクラーベ」が行われることになり、世界中から100人以上の候補者が集まる中、システィーナ礼拝堂で極秘裏に行われる投票を執り仕切るローレンス枢機卿が、投票の裏で進められる陰謀に気づき、その真相に迫っていくというもの。
その名前と目的だけは知っていましたが、具体的なことは何も知らなかった「コンクラーベ」。本作では、それがどのように進められているのかが描かれ、大変興味深かったです。もちろんそれがどこまで現実のとおりかはわかりませんが、古くからのしきたりにのっとり、細かな手続きを経て、厳粛に進められていることは伝わってきます。
本作では、新教皇の座をめぐる水面下の駆け引き、騙し合い、票集めの取り込み、スキャンダル探し、裏工作によるライバル潰し等を、疑心暗鬼のミステリー仕立てで描いている点におもしろさがあります。まるで汚い政治の世界を見るような既視感にげんなりしますが、神に仕える聖職者でさえこのありさまなのかと、人間の醜い本質を浮き彫りにしているようで、いっそ清々しいです。
物語の後半、繰り返される投票と明かされる真実によって、しだいに候補者が消え、折から発生していた爆弾テロが教会にまで及ぶに至り、ローレンスたちにとって最も忌むべき相手テデスコが最有力候補として浮上してしまいます。いよいよ宗教戦争を覚悟すべきかと情勢が傾きかけたところで、ある人物によってもっと大切なことに気づかされます。我々が戦う相手は、ライバル候補者なのか、他宗教なのか、それとも…。
長いコンクラーベの末、ようやく皆が納得する新教皇が決定しますが、その後に用意されたどんでん返しが鮮烈です。古きよき伝統としきたりは、時に大切なものを見誤らせることにならないか、信仰に最も大切なものは何なのかと、観客にメッセージを叩きつけているかのようです。ラストでローレンスが拾い上げたカメは、実直なローレンスに後を託し、よりよき信仰を求めて変化を恐れず、歩みは遅くとも前に進むことを目指そうとした前教皇の姿と重なり、味わい深いです。
静かに展開するストーリーにやや眠気を誘われる部分もありますが、じりじりと真相に迫る展開に浸れれば、最後まで楽しめる本作。大人の知的好奇心を刺激し、それに見事に応える良作だと感じます。
主演はレイフ・ファインズで、コンクラーベの裏で奔走し、揺れ動くローレンスを好演しています。脇を固めるのは、スタンリー・トゥッチ、ジョン・リスゴー、カルロス・ディエス、セルジオ・カステリット、イザベラ・ロッセリーニら。第97回アカデミー賞で作品、主演男優、助演女優、脚色など計8部門でノミネートされ、脚色賞を受賞。
先程観てまいりました。
水曜日という事で満席でした!
満席で映画を観るなんて久々の体験でした。
私も最初は登場人物の誰がどうなっているのか掴めず、かなりの集中力を要しましたw
考えさせられましたが、楽しめる事も出来ました。
共感ありがとうございます。
宗教は人間を救う為のモノでしょうから、人間の手で変わっていくのも当然かなと、個人的には思いますね。世界では受け入れられず戦争にまで至ってる訳ですが・・。
映画チケットがいつでも1,500円!
詳細は遷移先をご確認ください。