劇場公開日 2025年1月17日

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「成り上がり」アプレンティス ドナルド・トランプの創り方 バラージさんの映画レビュー(感想・評価)

3.5 成り上がり

2025年9月28日
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鑑賞方法:映画館

怖い

知的

驚く

劇場公開時に観ていたが感想を書いてなかった映画。「アプレンティス」とは「見習い」という意味で、トランプが00年代に司会を務めていたテレビのリアリティ番組のタイトルとのこと。1970~80年代というトランプが不動産業を始めた頃から不動産王として成り上がっていく時代を描いた映画で、ニクソン政権末期からレーガン政権の頃にあたる。

最初にこの映画のあらすじを知った時に、トランプってあのロイ・コーンの薫陶を受けてたのか!と驚いた。コーンが赤狩りでマッカーシーの右腕として活躍?し、検事としてスパイ容疑を受けたローゼンバーグ夫妻を電気椅子送りにしたのは知ってたが、マッカーシー失脚後のコーンのことは全然知らなかった。他にもコーンの顧客としてマフィアのトニー・サレルノ、コーン邸のパーティーにメディア王ルパート・マードックやヤンキースのオーナーのスタインブレナー、名前こそ出てこないものの明らかにアンディ・ウォーホルなどが登場し、80年代のトランプのパーティーではトランプが画角の外にいる人物に向かって「アキオサン!」と呼びかける(たぶん盛田昭夫のことだろう)など、あの頃の時代の有名人がちょこちょこ出てくる。また良くも悪くも、というより悪くも悪くもやり手だったコーンがトランプに出し抜かれ、80年代にはエイズに罹患。“エイズ”というのもやはりあの頃の時代のものだ。ゲイでありながらそれを隠して同性愛者を苛烈に批判してきたコーンが、みるみる弱っていきエイズで死去する姿も描かれるが、たとえ悪党であってもやはりそこには哀れを誘うものがある。まさに70~80年代という“あの時代”のある側面が描かれた映画だ。面白かった。

それにしても映画を観て思ったんだけど、トランプは結局この頃のコーンの手法を今でも実践してるんだな。トランプが最初の奥さん(後に離婚)と付き合ってる時に、「世の中には2種類の人間がいる。“殺す側”と“負ける側”だ」「私のことも殺すの?」「“勝つ側”ってことさ」と言うシーンがあった。そして大統領になった今でも、彼にとって全ては“ディール”、つまり取り引きなんだろう。困ったもんだが。

バラージ
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