劇場公開日 2025年1月17日

「映画としての魅力はあった」アプレンティス ドナルド・トランプの創り方 kenshuchuさんの映画レビュー(感想・評価)

4.0映画としての魅力はあった

2025年2月20日
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鑑賞方法:映画館

人の魅力って何で構成されるのだろう。何でその人の周りに人が集まるのか。コミュニケーション能力、未来へのビジョン、プレゼン能力、思いやり、そして金と権力…。人に聞けばその人ごとに違った答えが返ってくるはずだ。ドナルド・トランプという人間にどんな魅力があるのか。直接話したことはないし、彼のことを大して知らないのにこんなことを言う資格はないと思うが、金と権力以外に思いつかない。なのにまたもやアメリカ大統領になってしまった。多くのアメリカ人には魅力的な人物に見えるのかもしれない。信じられない。
そんな中、この映画だ。どんな立場でトランプという人物を描くのだろうと興味が湧いて劇場に足を運んだ。でも本編が始まってすぐに監督の立場が明らかにされる。なるほど、そういう立場ねと。あまりにもあからさまだったけど。
1970年代から始まる本作。ロイ・コーンという弁護士と出会い、勝つためには手段を選ばない処世術を学んでいくという話。普通にトランプがトランプ・タワーを建てて成功していく話なんだけど、いわゆるサクセスストーリーにはとどまらない魅力があった。なんだこれ。孫正義のように一から築き上げたものではなく、ある程度父親の基盤があっての話だけど、そこはあまり気にならない。若き日のトランプと同じようにアメリカの金持ちの奔放な暮らしぶりにただ圧倒されてしまった。
父親との関係性や、周りの妨害といったあたりで、ほんの少しだけドナルドに感情移入したり魅力を感じさせる流れに思えたが、結局そうはならない。いろんなことがあってつらかったかもしれないけど、つまるところドナルドが嫌なやつなんだもの。あんなやつに人はついてこないだろと思う作りだった(そう感じたのも元々トランプを好きになれながらかもしれないけど)。
大統領になってからの彼のことを示唆するようなシーンもあって笑える。そして何よりの驚きが、ドナルド・トランプを演じたのが、アベンジャーズでバッキーを演じたセバスチャン・スタンだったってこと(終わった後に気づいた)。バッキーと同一人物とは思えなかったよ。すげー演じ分けだな。
アメリカ大統領としてのトランプを批判することが目的なのかもしれないが、そんなことを抜きにしても映画として面白かった。でも、ドナルド・トランプが嫌なやつだということは再確認できた。それでいい。自分の考えとそんなにズレていなくてちょっと安心する。

kenshuchu