「トランプはじめて物語」アプレンティス ドナルド・トランプの創り方 おじゃるさんの映画レビュー(感想・評価)
トランプはじめて物語
本日1/21(火)はドナルド・トランプ氏のアメリカ大統領就任日。朝からニュースはこの話題で持ちきりで、さっそく大量の大統領令に署名し、就任初日からアクセル全開です。ということで、いま世界で最も注目される男ドナルド・トランプを知るために、この日を選んで本作を鑑賞してきました。
ストーリーは、不動産業を営む父の会社が政府に訴えられて窮地に立たされる中、気弱な跡取り息子である若きドナルド・トランプは、政財界の大物が集う高級クラブで悪名高き弁護士ロイ・コーンと出会い、彼に気に入られ、世の中で勝つための手ほどきを受け、それを忠実に守りながらロイを超える怪物へと変貌していくというもの。
予告からわかっていたことではありますが、トランプにここまで絶大な影響を与えた人物がいたとは知りませんでした。このロイ・コーンが伝授する「勝つための3つのルール」は、見事に今のトランプの言動に重なるものがあり、彼がロイの教えを忠実に守っきたことが伝わってきます。
そしてこの「3つのルール」以上に強く受け継いだものこそ、強烈なアメリカ至上主義だったのではないでしょうか。さらにいえば、トランプは、ロイ以上にそれを強く抱き、なんなら最強アメリカを作り上げた”自分”こそが真の最強であると言わんとしているようにも感じます。アメリカ至上主義どころか自分至上主義です。作中、ロイのおかげで力をつけたトランプが、所有するビルから贈り物のカフスボタンまでいたるところに自身の名を刻む姿からも、彼の強大な自己顕示欲を感じます。
もちろん描かれていることが彼の全てではないし、脚色もされているとは思いますが、このように描かれる元ネタとなる事実はあったのでしょう。少なくとも、ロイと兄と妻に対する仕打ちだけは、人として許せません。彼にとって、自分以外はきっと無価値なのでしょう。
とはいえ、アメリカの政治にも経済にも疎くて、トランプの掲げる主義・主張にも詳しくはないですが、彼がアメリカだけが好きで、自分だけが好きなのは、本作から本当によく伝わってきます。彼のことはもともと好きではないですが、ここまで自分に正直だといっそ清々しいです。彼が自国のリーダーなら、確かに期待したくもなります。
さて、トランプ政権のもと、アメリカはどうなっていくのでしょう。きっとトランプは、この先アメリカが発展すれば自身の手柄と誇示し、凋落すれば自身の非を1ミリも認めないのでしょうね。いやはや、ロイはとんでもない怪物を生み出してしまったものです。それにしても不思議だったのは、ロイがなぜ彼に目をつけ、守り育て上げたのかということです。まさか容姿が好みだったなんてことはないですよね。まさかね?
主演はセバスチャン・スタンで、もはやトランプと見紛うばかりの好演です。脇を固めるのは、ジェレミー・ストロング、マリア・バカローバ、マーティン・ドノバンら。中でも、ロイの圧倒的な存在感と晩年の変貌の振り幅で魅せる、ジェレミー・ストロングの演技が秀逸です。