劇場公開日 2025年1月17日

「非アメリカ人が描くアメリカ」アプレンティス ドナルド・トランプの創り方 ミカエルさんの映画レビュー(感想・評価)

4.0非アメリカ人が描くアメリカ

2025年1月19日
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鑑賞方法:映画館

興奮

本作を描いたアリ・アッバシ監督はイラン系デンマーク人である。祖国であるイランがアメリカと仲が悪いことは有名だが、その理由をよく調べてみると、1979年のイラン革命によって起きたイランアメリカ大使館人質事件がきっかけになったらしい。翌年に国交を断絶して、これが現在まで続いている。さらに、彼は非アメリカ人でもある。それだけにトランプという人物の枠を超えて、アメリカという国、そして、その国の資本主義システムに対して批判的である。代表作「聖地には蜘蛛が巣を張る」は未見だが、″スパイダー・キラー″と呼ばれる娼婦連続殺人犯サイードが、聖地を浄化する英雄として祭り上げられていくプロセスを生々しく描いているという。これは、イスラム社会における女性蔑視・男性支配を鋭く暴いているようだ。つまり、アッバシ監督は、トランプやサイードという怪物を描き出すだけでなく、その根底にある社会システムの歪みを批評するという映画をつくっている。
本作は、70年代から80年代のニューヨークを舞台に、ドナルド・トランプとロイ・コーンの師弟関係に焦点をあて、ビジネスマンとしての若きトランブの実像を赤裸々に描く伝記映画である。ロイ・コーンとは、ジョセフ・マッカーシー上院議員の主任弁護士として赤狩りを主導した政治フィクサーである。常に攻撃し、決して不正を認めず、負けても常に勝利を主張するという「勝つための3つのルール」をトランブに伝授し、彼をモンスターとして洗練させていく。とにかく攻撃的で、自らの非を認めずに徹底するコミュニケーションの仕方は、現代においては、アメリカという国の特有の考え方ではなくなり、SNSなどでは今やありふれた光景になっている。
選挙の結果はご存知の通り、トランプが圧倒的勝利をおさめた。この映画のメッセージは、届けたかった人たちに届かなかったということになる。そもそもこういう内容の作品を鑑賞する人たちは、トランプ支持層には少なかったのだろう。

ミカエル