劇場公開日 2024年11月8日

「意外にも友情と愛情と成長の物語だった」動物界 kenshuchuさんの映画レビュー(感想・評価)

4.0意外にも友情と愛情と成長の物語だった

2025年1月11日
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鑑賞方法:映画館

予告編で感じた印象と本編を観た時の印象が違うと、どうやって宣伝するのか決めるのが大変だったんだなと思う。本作では、病により獣に変化していく人間たち(新生物)の姿を予告編では見せていなかったことがポイント。彼らの見た目を隠すことでとてもミステリアスな存在として演出したかったのだろう。だから本編では、結構序盤で新生物の姿をあっさり見せるんだと驚いた。
子どものときに「エレファント・マン」という映画の公開時に似たような印象を抱いたことがある。CMなどで流れてくるのは頭巾をかぶった、ミステリアスなエレファント・マン。彼の素顔にいろんな人が驚くシーンをCMに使うことで人々の興味を引こうとする。でも、実際あの映画は苦しみに満ちた1人の人間を描いた感動の物語だった。特異な見た目に興味を抱かせようとする宣伝方法に違和感を覚えた印象的な映画だ。本作はその気持ち悪さに通ずるものがある。だって、本作の予告編を観て感じたのはスリラーっぽさだが、観た後に強く印象に残ったのは友情や愛情だったから。
思春期を生きる少年エミールの成長と、獣に変化していく苦しみ、父親との確執と愛情、鳥に変化していくフィクスとの友情。獣に変化していく人間たちを排除しようとする人たちがいて、逆に排除するのではなく共生すべきだと主張する人たちもいるところも妙な風刺が効いている感じで面白い。万事解決!というスッキリしたラストではないし、先行きを考えると不安も残る。でも、不思議と爽快感のある終わり方だった。いい映画だ。どうやって宣伝するのかを考えるのも大変だったんだろうなと勝手に想像する。この面白さを他人に説明するのはなかなか難しいもの。

kenshuchu