「奇妙な病が蔓延した世界」動物界 かばこさんの映画レビュー(感想・評価)
奇妙な病が蔓延した世界
認知症や、ALSなどの病を想像した。
自分が失われていく、または未知のものになっていく恐怖はいかばかりか。
気がついたら体に剛毛が生え、鉤爪が生え、無意識に野生動物の本能が目覚めていくのを黙ってみているしかないのだ。嘘だと言って、と叫びたくなると思う。
身内が病に罹っても悲劇。
家庭内で何とかしろ、でないだけマシなのか。
原因不明なので治療も手探り。ウィルス由来らしいことだけは分かる。
凶暴化してしまうこともあり、国の政策では新生物は施設に隔離ということになる。
その昔の、ハンセン病の患者のようでもある。
最近のパンデミックでも、初期は似たようなものだった。
現実的には、凶暴な新生物が事故で大量に野に放たれたら怖い
共存はできるタイプとできないタイプがあるだろう、ひとまとめで同じ対応はできないと思う。
原因不明の突然変異により、人間の身体が徐々に動物と化していく奇病が蔓延した社会が描かれ面白かったが、ヨーロッパ映画らしく長い。丁寧というか。
鳥人間フィクスがなんだかひょうきんで、フランス映画っぽい存在。
気の毒なヒトなんだが笑ってしまった。
エミールとのひとときの友情に温かいものを感じたが、エミールを庇ったんでしょうか、哀しかった。
ラストは、あれしかないと思えど父の気持ちに泣けてしまう。妻を奪われ、唯一の家族である愛する息子を、たった一人で野に放つ。身体に悪いポテチ貪り食って、これでいいんだ、これしかないんだ、と嗚咽に耐えていたよう。
日本人だったら周囲へのメイワクとか色々慮って施設に入れちゃうかも。
もし自分がこの病に罹ったら、鳥がいいなとちょっと思った。
空飛んでみたいです。
>認知症や、ALSなどの病を想像した。
>自分が失われていく、または未知のものになっていく恐怖はいかばかりか。
めっちゃ分かります。この作品は人間が動物化してしまうフィクションとして描いてますが、病気に置き換えても同じ話なんですよね。
自分が失われていく恐怖…。
父が亡くなって約20年になりますが、晩年には認知症かアルツハイマー的な症状が出始めてました。ある時、何かの契約手続きをした際に僕が同席したのですが、説明を聞いてるうちに父は頭が混乱し始めたのでしょう。やがて興奮して取り乱してしまいました。僕が「大丈夫だから落ち着きなよ」となだめたら、父はそんな自分にハッとなって我に返ってました。言われた瞬間、父はおそらく自分を見失ってる事に「気が付いた」のだと思います。若い頃あんなに威勢が良かった父の、年老いて頭が回らなくなり自分に失望して落ち込む姿を見て、僕もたまらない気持ちになりました。あの時の父の顔が今でも忘れられないです。この映画を観てそんな事もつい思い出してしまいました。何とも切ない話ですよね。