「ホラーとは呼べないホラー」動物界 サムさんの映画レビュー(感想・評価)
ホラーとは呼べないホラー
一つ間違うと”ゲテモノ”になりそうなテーマと内容だが、むしろ、質の高い近未来ものの映画になっているのではないか。近未来物の佳作というところでは、内容は全く異なるが、ソイレントグリーンを思い出してしまった。それは兎も角、二時間以上のやや長めの映画を、グロテスクな内容と表現にもかかわらず、なぜに飽きさせず見られたのか。一つは、人が動物(映画では、”新生物”と呼ばれているが)になる病気のメカニズムの説明は一切なく、それが、ややもするとこの手の映画が、信じがたい事象を観客に信じこませ様とするあまりに、こじつけの理屈で”臭いもの”になるところを、逆に回避していること。一つは、新生物を、単純に人間の敵と位置付けず、さりとて、同情すべき弱者とも、ヒーローとも描かず、運命として受け入れる存在として描くことで、Real感を出していること、そのほかの要素もあるが、決定的なのは、主演の二人(ロマン・デュラスとポール・キレシュ)の演じる親子が、まさしく名演であること。
説明には、ホラー映画とあるが、決して、ホラーではない。SFもしくはヒューマン映画と呼んで差し支えあるまい。
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