「半信半疑、からの?」動物界 TWDeraさんの映画レビュー(感想・評価)
半信半疑、からの?
劇場で数回トレーラーを(何気なく)観ていて気になっていた本作。ただ、正直なところ「半信半疑」ではあったものの、第49回セザール賞最多12部門ノミネートおよび第76回カンヌ国際映画祭「ある視点」部門オープニング作品選出、という実績を信じて劇場鑑賞を決めました。公開初日11時25分からの回、ヒューマントラストシネマ有楽町はそれなりの客入りです。
と言うことで、観終わっての感想は「思いのほか良かった」ですし、終わりはちょっと泣きそうになりました。
この手のギミックとテーマは決して新しいわけではありません。ストーリーも実にシンプルで解りやすく、共感を煽るような押しつけがましさもないため、素直に受け入れられます。また、物語中「新生物」と呼ばれる変異体についても、序盤こそ恐怖を感じさせる演出が数シーンありますが、それも一辺倒ではなく、エミール(ポール・キルシェ)の変化と成長に伴って、「出会い、コミュニケーション、信頼関係、友情・愛情」という展開に、自ずと「共生」を願う自然な流れで共感できます。ポール・キルシェ、素晴らしい演技です。『Winter Boy』、私、これ配信待ちにしてしまってまだ未見なんだよな。。今後が楽しみな俳優ですね。
そして、何といってもエミールの父・フランソワ(ロマン・デュリス)の絶対的な家族愛の強さですね。家族の不幸に落胆するどころか、諦めずに家族の幸せを強く願う姿が観ていて実に尊い。全力で妻の名前を呼び、息子が笑っている姿を見ながらこれ以上なく幸せそうなフランソワに涙が誘われます。ロマン・デュリス、今作も最高のアクトです。
その他にも、ジュリア役のアデル・エグザルコプロスを始め、ビリー・ブランやトム・メルシエら、助演も皆さん印象に残る演技で鉄壁の布陣。
いやはや、鑑賞前の不安はどこ吹く風。爽やかな秋の午後を歩きつつ、エミールの未来に希望を抱きながら余韻に浸りました。良作です。