「天才とは、明るく無邪気で、まっすぐである。」ジョン・ガリアーノ 世界一愚かな天才デザイナー らんさんの映画レビュー(感想・評価)
天才とは、明るく無邪気で、まっすぐである。
イギリスのファッションデザイナー、ジョン・ガリアーノのドキュメンタリー。
スペイン系移民としての、ロンドンでの幼少期。
若手時代の高い評価の一方、商業的な苦難。
天才の評判と、理解されない奇抜さ。
メゾンの仕事の多忙とプレッシャー。
仲間の突然の死。
アルコールと処方薬依存。
そして、差別発言、逮捕、解雇。
メゾンのコレクションは、レディスオートクチュール、プレタポルテをはじめ、クルーズライン、バッグ、メンズや子供服、ジュエリーに至るまで、年32回に及ぶと言う。
アレキサンダー・マックイーンの死にも触れられていたが、デザイナーの仕事は過酷で、特に天才と呼ばれるようなこだわりを見せる彼には、膨大な仕事が降りかかる。
アルコール依存から徐々に人間性が壊れ、遂に差別的な発言で逮捕に至る。
とは言え、過去について話す彼に悲壮感は感じなかった。
天才独特の自信と陽気さに救われる。
何より、彼の才能が花開く前半や、ジバンシィやディオールと言ったメゾンに認められてキャリアを積む中盤は、華やかでショーの様子も楽しめる。
差別をする人間の闇、という深い内容ではあるものの、映画としては素晴らしかった。
人間は誰でも差別する心を持っている、と言う、彼の発言はそのとおりだと思う。
幼少期の移民として、或いは労働者階級としての体験も、影を落としているだろう。
そして何より、商業主義に走り、才能あるデザイナーを多忙で潰してしまうファッション業界の在り方も問われている。
いずれにしても、彼の才能が素晴らしすぎて、鑑賞後マルジェラ買いに行った。
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