ジョン・ガリアーノ 世界一愚かな天才デザイナーのレビュー・感想・評価
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ガリアーノの人物像にじっくりとにじり寄る
恥ずかしながら私はファッションに詳しくないし、ガリアーノについて深い知識を持ち合わせているわけでもない。それゆえ13年前に世界を駆け巡った彼に関するニュースについて詳しく認識しているわけではなかった。が、劇映画のみならず優れたドキュメンタリーを放つマクドナルド監督が入念に手がけた作品だけあって、かのファッション界の革命児と呼ばれた人物について、実にわかりやすく提示してくれる。その点、ファッションの専門性に特化しすぎることなく、ニュートラルな視点で開かれた良作と言えよう。肝心の事件だけを見つめるのではなく、そこへ至る過程や彼が辿った半生と、業界の絶頂に君臨して徐々に身を崩壊させた日々、さらには事件後の日々についても本人や関係者のインタビューを交え詳述することで我々の視座は点ではなく一本の線となる。決して解釈や人物像を押し付けることなく、彼をいかに判断するかを観客に託するような筆致が印象深い。
ガリアーノだけに、無類におもしろいドキュメンタリーに仕上がっている一作
ディオールなどの有名ブランドのデザイナーとしてファッション界に君臨していながら、2011年の舌禍事件で表舞台から姿を消したジョン・ガリアーノ。破天荒な人生と現実感を失うほど煌びやかなモード界など、取り揃えられた材料を見ると無類に面白い作品になることは鑑賞前から想像がおそらくその期待通りの作品です。 ガリアーノ自身の回想という形で展開する映像は、彼が心酔しているというアベル・ガンスの『ナポレオン』(1927)の映像を差し挟みつつ(彼の人生が驚くほどナポレオンと重なり合っていることがわかる)、非常に無駄なくキレが良い編集を施しており、結果として最初から最後まで目の離せないドキュメンタリー作品となっています。 多大な業績を成した人物のドキュメンタリーは、往々にしてストーリーを見失いがちになったり、抽象的で退屈な賛辞のつるべ打ち、になりがちなんですが、本作はガリアーノのデザイナーとしての才能と業績をきっちり見せつつも、彼の到底許容できない人間性の欠落をも容赦なく暴き立てています(しかも本人は全くその自覚がない)。 舌禍事件前後の彼の言動がいかに不適切なのか、インタビューを受けるガリアーノ自身の言葉で明らかになる過程が非常にスリリングで、突っ込みどころも満載。まず謝るべきはその人じゃないだろ……、とか。 彼のキャリアを網羅した映像、写真のパッチワーク的編集は、目まぐるしいけどまさに眼福。ショーの場面を見るだけでも十分にチケット代に見合った満足感が得られます!
ガリアーノとマックイーンとマルジェラと
稀有な才能と莫大な資本と果てしない仕事量をこなせる体力が見事にかみあって、すばらしいコレクションとものすごいエネルギーをうみだしたけど、そんなものすごくあやういバランスのうえになりたつものが長続きするわけもなくて、なんかもう何もかも終わらせたくなっちゃったのかもしれないなあなどとおもった。 (だからといって誰かを傷つけていいわけでは決してないけれど) マックイーンの終わらせかた、マルジェラの見事なひきぎわ、そのどちらでもなく、ガリアーノは続けることを選んだ。 続けることが、たぶんいちばんしんどい。
悪ノリと 閃き気質のデザイナーの顛末
彼のデザインの系譜を楽しめて良かったです。 Diorのヴィンテージをネットショッピングすると、「エティ期」「ガリアーノ期」とタグが付いていますよね。 ガリアーノは古着のTシャツを持っていますし、“騒動”のニュースも聞いていました。 メゾン・ディオールが、ユダヤ人をヘイトした彼を追放したのは当然でしょう。 あれは世論や情勢に配慮してブランドの自己防衛=トカゲの尻尾切り=をしたのではありません。 ディオールは、実は筋金入りです。 ムッシュ・ディオールの妹は、大戦中にあのヒトラーに抵抗するパルチザンとしてナチスドイツに捕らえられている。そして、収容所から生還してきた。その人なのです。 妹を記念してあのピンクの香水は「ミスディオール」と名付けられました。 ガリアーノの場合、歴史、ことにヨーロッパの近代史をお勉強して来なかった=どこにでも居る現代っ子が、自分の不勉強のしっぺ返しを受けたのです。 しかし、 我が国 日本ではどうか。 「Yahooニュースサイト」のコメントを見ると、中国や韓国への、驚きの罵詈雑言。そして脅迫と排斥の「ヘイト発言」がまかり通っていて、 ホロコーストや南京はデマだと論じる彼らからすればジョン・ガリアーノは英雄の扱いになるんでしょうね。 彼らの生き方には世界共通。同じパターンがあるようです。 卑屈なんです。 父親や祖父たちの、ふとこぼす差別発言=家庭内迷信は信じているけれど、そこから脱するための自分自身での勉強をしていない。 そして踏みつけにする対象を持たないと自分を保てない。 これでは本当の意味で人を幸せにする服は作れないでしょう。 ・・・・・・・・・・・・・ ファッションスペシャリストと音楽家の《恋》と《失言》と《回復》のドラマとしては、他作、マッツ・ミケルセンの「シャネル&ストラヴィンスキー」が面白いです。オススメです。
天才とは、明るく無邪気で、まっすぐである。
イギリスのファッションデザイナー、ジョン・ガリアーノのドキュメンタリー。 スペイン系移民としての、ロンドンでの幼少期。 若手時代の高い評価の一方、商業的な苦難。 天才の評判と、理解されない奇抜さ。 メゾンの仕事の多忙とプレッシャー。 仲間の突然の死。 アルコールと処方薬依存。 そして、差別発言、逮捕、解雇。 メゾンのコレクションは、レディスオートクチュール、プレタポルテをはじめ、クルーズライン、バッグ、メンズや子供服、ジュエリーに至るまで、年32回に及ぶと言う。 アレキサンダー・マックイーンの死にも触れられていたが、デザイナーの仕事は過酷で、特に天才と呼ばれるようなこだわりを見せる彼には、膨大な仕事が降りかかる。 アルコール依存から徐々に人間性が壊れ、遂に差別的な発言で逮捕に至る。 とは言え、過去について話す彼に悲壮感は感じなかった。 天才独特の自信と陽気さに救われる。 何より、彼の才能が花開く前半や、ジバンシィやディオールと言ったメゾンに認められてキャリアを積む中盤は、華やかでショーの様子も楽しめる。 差別をする人間の闇、という深い内容ではあるものの、映画としては素晴らしかった。 人間は誰でも差別する心を持っている、と言う、彼の発言はそのとおりだと思う。 幼少期の移民として、或いは労働者階級としての体験も、影を落としているだろう。 そして何より、商業主義に走り、才能あるデザイナーを多忙で潰してしまうファッション業界の在り方も問われている。 いずれにしても、彼の才能が素晴らしすぎて、鑑賞後マルジェラ買いに行った。
自分の影響力の大きさがわからないまま脆い自分を抱え死に向かったガリアーノ。寄り添ったパートナー、多くの友人と仲間に支えられ再生へ
前半はガリアーノのお洒落な母親、厳しかった父親などの話、モードの世界に飛び込みたちまち天才性を表し、イギリス野郎と言われながらパリのハイブランドに入り賞賛される。モデル、ファッション界の大物達が彼を称える。ロックを持ち込んだ男、天才!ガリアーノのことも彼のデザインもまるで知らなかった私も颯爽とキャリアを積み上げていくガリアーノの才とキュートさに興奮した。 そして2011年の2月、心身が尋常でない時にガリアーノの口から出た差別罵り言葉、アジア人とユダヤ人への差別表現。驚き興味深かったのは、すぐさまマスコミが大きく報じ有罪となりDiorから解雇され勲章も剥奪されたそのスピード感。そしてガリアーノをよく知る著名人が自分の立場を明確にしたこと、謝罪させコミュニケーションをとらせようとした人も居ればそうでない人も居ることがとてもクリアに描かれていたこと。最後はラビが彼自身と話し、ガリアーノがホロコーストに関して知識がまるでないことがわかり、本を読ませ知識を得てもらうようにした。でもその後もガリアーノはファッションとしてオーソドックスの格好をしてまた批判される。 ガリアーノが言ったことは動画で繰り返し再生され、言われた人もこの映画で発言し裁判の時に何を言ったかも述べている。うやむやにせず、許せない人は許せないと言う。ガリアーノの問題言動は酒、薬、仕事の依存症ゆえであり彼を助けたいと述べる人も多い。天才だから、だけが理由ではない。ケイト・モスのウェディング・ドレスの件には心打たれた。 「記憶にありません」という表現を、公人がおおやけの場で言っても誰も驚かなくなった国には上記のようなスピード感はない。議事録も文書も捨てまくる国。弱者を巧妙に差別し、臭いものに蓋をし、強者にとって楽で都合よい国。思考も会話も議論も決断も停止状態のまま。 モード世界のシビアさに言葉を失う。才能ある若いデザイナーが一体どれだけ沢山自殺したんだろう。仕事から逃避したガリアーノは死に向かっていた。でも美しく保存された自分の見事な作品を眺めながらまた仕事をしたいと思う。今のファッション業界、信じられないほど安価で働かされ、信じられないほどの高値で販売されるハイブランド商品。そしてデザイナーをしゃぶり尽くすまでこき使う。ファッション業界で働く下層からトップまで搾取され「生きる」を奪われている。 私達は勉強する機会をきちんと与えられそれを使わないといけない。近隣の国々の人達、移民・難民、何世代もいるアジア人の仲間、江戸時代からの差別、アイヌと琉球の人達との関係、性・ジェンダーに関わること。勉強と同時に大事なのは共存してお互いを知ること、慣れること、想像力を働かせることに尽きると思う。自分の世界しか知らない人、勉強もせず上っ面の知ったかぶりで大声で罵るのはやめてほしい。ソーシャルメディア、忖度・代々政治家、テレビに出て発言する人々、勉強して思考して想像力をもって「あなたの」考えを静かに伝えてほしい。 ガリアーノの屈託ない笑顔、キラキラ光るアイディア、とても似合うヘアバンド、真面目にカメラに向かって語る顔と言葉。苦しかった子ども時代を経て、友達に恵まれてよかったね、これからも大丈夫だから、と知り合いでもないのに言ってみたくなった。 おまけ この映画を見ながら何度も「ファントム・スレッド」(ダニエル・デイ=ルイス主演)を思った。常に仕事で頭がいっぱい、極度のプレッシャーと虚脱感の繰り返しは確実にデザイナーを蝕む。その彼を仮死状態にして心身を休ませ再生させ新たに力を与えるアルマ(ヴィッキー・クリープス)の知恵は素晴らしかった。垢抜けないからこそ持ち得た原始の生命力をアルマは愛する人のために使いファントムに打ち勝った。ここ最近立て続けにオートクチュールやハイブランドの映画を見ている。美しさの裏には沢山の毒と涙がある。
創作に
生き創作で人生を物語る怪物 といったところだろうか。 ガリアーノと言う人物を知る、良い作品だったと思う◎ ついでにヘイトクライム時の彼の姿を見て なんで日本に静養地を求めなかったのかな? なんて思ったのは事実である。 ガリアーノ、この奈落へと引きづり込んだ輩を はじめとして西洋社会は結局のところ 悪意しかない。と思うからだ。 ちなみにその影響をもろに受けている 日本の現代世俗も危険だけどね。 悪意のない、自然が満ち満ちた山河の中に入れば きっと救われただろうに。 なんてね◎ 映画を観るまで知らなかったけど、 マルジェラで復帰も果たしているようだし 復帰後のガリアーノにも注目だね:) 見事な宣伝映画だったよ😽
そして、人は崩壊する。
人は自分の限界を越えると、人格が崩壊していく。 才能もあり、華もあった人間が、あるきっかけで逆回転を始め、崩落していく。 才能は仇となって、自分に還ってくる。 出始めから危うさがありながら、有名ブランドのデザイナーへと抜擢されていったジョン・ガリアーノの変遷を映し出すドキュメンタリー。 ほんのひとつの言葉や行動で、失脚する人は後を絶たない。 ファッションという枠を越えても、興味深い映画かもしれない。
最近こういう、 アーティスト系の半生みたいの少なくないけど、 どの...
最近こういう、 アーティスト系の半生みたいの少なくないけど、 どの作品も主人公が驚くほどに魅力的 この人もそうだった かつこの作品は、 本人が登場するシーンが多かったので、 バイアスかけずに見られた気がする
前半後半テイストは異なるが、はるか離れた日本から見ても良い作品。
今年361本目(合計1,453本目/今月(2024年10月度)12本目)。 ※ (前期)今年237本目(合計1,329本目/今月(2024年6月度)37本目)。 原題と大きく離れたタイトルですが、そこは気にしなかったかなといったところです。 前半こそファッションショーがどうこう、ディオールが…といった女性ウケしそうなファッション映画、あるいはファッションものドキュメンタリー映画に見えますが、後半からその問題となったいわゆる差別発言によって刑事的にも社会的にも(あるいは民事的にも)制裁を受けて「消されていく」存在を描くストーリーになります。この点は日本と違いも多々あるので後述します。 結局のところ、差別発言が良くないというのは当然の理である一方で、ドキュメンタリー映画の趣旨の「言い分」にもあるような「異様なまでの働きぶり」がそれを招いたのもまた事実だし、あるいは診断名までついてやんでいた状況において、明らかに確信的な意図をもって放った差別と同じく扱ってよいのか、という点は問題提起としては残るかなと思います(この点も後述)。 概して前半後半とで大きくストーリー性が違う部分があり、ドキュメンタリー映画の様相といってもかなりの部分で知識勝負となる部分があり、映画に娯楽性を求めるかどうかで見るみないは大きく違うと思いますが、個人的には良い作品かなと思ったところです。 採点に関しては以下に述べることにして、日本との差異については後述します。 ---------------------------------------------- (減点0.2/光の点滅が厳しいところがある) ドキュメンタリー映画で、一部当時のフィルムも使っており、当時の差別発言から法廷に引っ張りやられるところ、マスコミの「洗礼」を受けるシーンほか、これら後半の部分についてフラッシュの連続となるところがあります。ただこれに関しては映画の事情上仕方がないので評価上調整はしています。 なお、問題となった「差別表現」について、映画フィルム上ではその「口の動き」にあたる部分に「ぼかし」がかかっている(字幕は正常に出る)点が興味深かったです(おそらく海外ではこの点も差別には容赦なく対処するというあらわれなのだと思います)。 ---------------------------------------------- (減点なし/参考/日本との異同について) 日本ではこの映画で取り上げられる事情については、中学高校の歴史で多少扱う程度で多くを扱いませんし、日本ではそもそもその「当事者」がいないので問題視されることはほぼありません。一方で海外では当事者が普通に現在でも住んでいますので小さいころからこの問題は必ず何度も何度も教えられ育ちます。そのため、「知らなかった」という言い訳ができないようになっているわけです(映画の論点の一つはここにある)。 一方、日本ではこれら、この映画で論点となっていることも含め、主要な差別問題として論じられる点については、日本ではいわゆる在日韓国籍の方の問題やクルド人当事者等が代表的にあげられますが、これとて日本では中学高校で扱う程度であり、深く知ることはありません。そのため、日本では「よくわかっていないのに加害行為を行う(=趣旨を理解しないのに差別発言を行う)」ということが起きます。当事者からすると「落書きレベルか」というレベルでしょうが、それでも傷つく人はいます。一方で加害者の側も「よくわかっていない」のに「周りがそういうから」「いわゆるSNSのインフルエンサーに感化されて」といったように自主性を持たない状態での「背景なき差別」あるいは「趣旨不明な差別」が一定数存在します。 これについて深く教えることは重要ですが、その「深く教える」ことがより差別を助長するという考え方もあり、日本ではこの点の議論がかなりタブー視されている部分があり、一概に「インフルエンサーに感化された」等という10代20代の「小さい」子や成人を強く責めることができない事情も確かにあります。 日本ではこれ以外にも、身障者への差別や特定の職業に対する差別ほか、いくつかの「差別」がありますが、それらを深く学習する機会がそもそもないので「知らなかったではすまない」の言い分を封じる封じない以前に「そもそも知らなかった」あるいは「言われて初めて気が付いた」レベルが普通に起きるのが大半である点が差別のやまない根本原因である一方、深く教えれば教えるほどまた「意図的に知識をもって暴れる」ことになりますので、このあたりはもはや文科省ほかをトップとした国策のレベルになるのかな、といったところです。
溢れ出る情熱と愛
ファッション界の寵児、天才、革命児、、、彼を称賛する言葉は数知れず。あのディオールにロックとパンクの風を持ち込み、エレガントさと融合させ、ディオールを復活させた男、ガリアーノ。 あの狂乱の時代からレイシスト発言事件、そして追放から現在までを自身の言葉と周囲の言葉で語り尽くしたドキュメンタリー。 パンクでゴージャスで斬新で猥雑でエレガントでゴシックなあの頃の作品は、今見ても美しい。 それなのに依存症になる程酒を飲み、自ら破滅に向かって行ってしまうほど、激務の中に放り込むメゾンもまた、商業主義的過ぎやしなかっただろうか。 彼を一番に評価したのもメゾンなら、彼が問題を起こした時、真っ先に彼を切り捨てたのもメゾン。 キャンセルカルチャーの中、彼なりにもがいてきたのだろう。 過去のことを語る目は穏やかで、分からないことは分からないと言い、正直に過去を語ろうとしている姿は、あのとんがっていたガリアーノからは想像もつかない姿だ。 しかし彼は、ファッション以外に対して無知すぎた。その無知から問題を起こしている事に気付かない天才に涙が出る。 やはり、ファッションという文化を背負おうとする者ならば、文化的、宗教的背景も学ぶべきなのだ。 それでもやっぱり、彼をレイシストとして片付けられないのは、彼の生み出す作品が昔も今も美しいから。 ラストシーンであの頃の作品を手にした時の顔の輝き、素材を語る表情、丁寧に話すカッティングやラインの意匠…。その一つ一つからファッションへの情熱と愛が溢れ出るのを感じた。 ドキュメンタリーとしても見やすく、丁寧に作られたのではないだろうか。 個人的にはガリアーノにはキャンセルカルチャーから復活し、今度こそは本当の天才としてそこにいてほしい。
見る者の思考力、知性教養が試される→ワタシはムリでした(泣)
当方、多分今でもロックスター的にジョン・。ガリアーノを信奉しているフシがある。ロックスターというのは宗教ではないのでジミー・ペイジの信奉者が「(既存曲なのに)新曲かと思うくらいギターがたどたどしかった」とかへっちゃらで言う。そういう類の信奉である。 ジョンは差別暴言の事件において加害者であり、「すっごい仕事が忙しかったからしょうがない」とか「天才だから許そう」というものではない。 最大の被害者はパリのカフェで暴言の被害にあったアジア系の男性である。アジア系、すなわち我々の人種があからさまにヘイトを喰らった。そして人生を狂わされた。男性だって普通にフランス語を話す市民だったから警察に取り合ってもらえただけかもしれない。 しかしあろうことかジョンはカフェでの暴言は動画を撮られた1回だけだとこの映画の取材時点で考えていた、というか、暴言を何度も繰り返していたと認識はしておらず、つまり結局なんにも考えていなかった。 自分はなんて言うことをしてしまったんだと口では言いながら何をしたのか認識していない。 男性は未だに謝罪を受けていないと困惑している様子なのにジョンは「謝ったかって?謝りました、法廷で目があった」。 「ホロコーストについて勉強しました」と言いながらニューヨークに古典的ユダヤ教徒の出で立ちで現れたりもした。「単なるファッションです」だと。 なんかもういちいち酷いんである。それに対してこのドキュメンタリーの監督の批評は無しで、取材した様々な意見が並べられていく映画。こちらの思考力が試されているような。 欧州のファッショ業界もとっくに酷い。超大手伝統的メゾンだって、東京の地下道の柱一本一本のモニターに映し出される韓国アイドルが身に纏う韓国ファッション風の商品、東アジアの子どもたちの財布を直撃するプライドの無さ。動物の群れに餌を投げ飛んでワッと群がるさまを指差して笑うような悪趣味がアジアで展開してるなんぞ、西欧の市民は知る由もない。 ジョンというスター奴隷を死なない程度に飼いながら、今日も回っているのだろう。先日のパリオリンピックを見るまでもなく、ローマのコロッセオはまだまだ続いている。 このジョンの件は喉元を過ぎ75日も過ぎ社会的執行猶予のままなんとなく進んで行くのだろう。 私はジョンを許せない。だが芸術活動をやめろとは思わない。芸術は、ある意味とんでもなく酷い人たちの美意識に対するエゴの歴史でもある。ジョン・ガリアーノはその列伝に名を連ねたに過ぎないと思う。 これ以上考えるのはムリです。
天才故の苦悩
よくぞ死なずに復帰されていた事に安堵しました。 仕事量のおおさに見ているだけで苦しくて… いろんなことが起きて突然。 美しいドレスの数々にため息とパワーをもらいました。 仕事仲間から信頼されリスペクトされ、応援されている事に触れて、凡人の私が出来る事は、真摯に仕事に励む事から始まると学べた。 これからの彼の仕事を見守りたいです。
誰がどう見ても天才。
そしてどんなに控えめに見ても働き過ぎ。 ガリアーノのデザインした服は初めて見たけど、想像力のリミッターがぶっ壊れた彼の作品はどれもこれもインパクトと美しさを兼ね備えたものだった。 出来れはもう少しデザインのコンセプト等の説明を彼の口から聞きたかった。
一年間に32本もコレクションをやらされたら
それは、狂ってドラッグや酒に逃げてもしょうがないわなぁ?
はーい!みんなー!いつもの長い前置きがはー、じー、まー、るー、よー?!
俺は、道路ガス工事で、昼勤務の後、会社に戻って資材を積んで夜勤務、そして会社に戻って資材を積んで仮眠して昼勤務。明け休みの翌日に、その三連チャンを繰り返す仕事を二年。
葬儀屋で、20:00から9:00までの勤務で、1:00から5:00までは遺体を移送する仕事がなかったら休憩時間なのに、昼勤務者が返礼品にお礼状を入れてないので、入れて、昼勤務者がお通夜後の会場の片付けをしないので片付けをして、昼勤務者が看板を作らないから看板を作って、昼勤務者が死亡届けの書類を書かないから書いていたりしたら、休む時間など無くて給料明細を見たら、夜間の休憩時間の残業がついてなく、タダ働きやらされていて、
それだけ、疲れているのに警察案件のご遺体のお迎えがあったら、昼勤務している人間が何人もいるのに残業させられて、家に帰ったら二時間しか寝る時間がなくて寝ていないのに、そのまま出勤して、休憩時間にタダ働きの作業をやらされて...、のリフレインが叫んでいる。どうして、どうして僕はとっとと、辞めなかったんだらう🎵
あと、タクシーもそうだったなぁ?タクシーって、一日15時間勤務してから明け休みで24時間は休めるんだけど、基本は3勤2休なんだけど、
そのクソタクシー会社は15時間勤務を6連チャンやるという会社で、しかもタクシーって、売り上げの6割が貰えるんで、月に110万円売り上げた月があって、やった!50万円は貰える!
と、喜んでいたら30万円しか入金されていなくて、残り三割の売り上げはどこに行ったんだ?と問い詰めてものらりくらりかわされて有耶無耶に終わった事があったなぁ?あと、それから( 以下、略 )
そんな状況だったから、ストレスを発散する為に酒を浴びるように呑んだり、色気狂いになって散財しまくってその時のお金は全て遊びに使っていましたが、そんな状況でも人を差別したり傷つけたりする事はなかった。何故ならば、そんな事しても意味がないから。
その時、大学生のあんちゃんとつるんでいたんだけど、こいつがどうしようもない奴で貧乏大学生で金が無いのにパチンコスロットに有り金全部突っ込んで、
牛丼を食う金も電車賃も無いから、俺の住んでる町の吉野家で牛丼を奢ってください...。と、メールをしてきて、その度に牛丼を奢ってやっていた。
ある日、俺が長崎出身という事を知るや開口一番に
「 長崎に住んでいる人間って、全員放射能の障害者なんでしょ?」
と、言いやがってさ?何で、そんな酷いことを言うの?と言う気すら起きませんでした。そんな事もあってかそいつとは疎遠になるんだけど。
で、東日本大震災が起きてさ、福島が被災したけど、その大学生の出身地って、福島だったんだよねぇ。因果応報って、あるんだな。
その大学生は自分がどれだけ酷いことを言ったのかって、全く自覚が無いと思うんだ?
ガリアーノもユダヤ人に対してガス室の話しをする事が酷い事とは気づいていないし、今でも反省していないでしょう。
人との会話で、相手をディスりながら会話する癖がある人も自覚は無い。気づいていたら、ディスる事なんてできませんって。
ガリアーノは、ファッションに疎い俺が見ても素晴らしい衣装でこの才能を発揮できないってのは、とっても勿体無いと思う。最後の最後にガリアーノのショーがあるんだけど、良かったもん。このまま続けてほしいです。
惜しいのは、このドキュメンタリー映画の殆どがガリアーノの失言について追求しているシーンばかりで、何もそこまで追い込まなくてもと思ってしまうトコ。
暴言を吐く前の時間を戻す事はできない。現在、宇宙はビックバンで膨張し続けて、膨張しきってから宇宙が収縮すると時間が逆に回るとされているが、それには何億年もかかる。
令和の虎でマネー成立した年配の男性が、お金よりもアドバイスが聞けて良かったと失言( 失言か?)した時に出資した虎達が男性をなじっていたけどさ、言葉のチョイスをうっかり間違っただけじゃん?ぐちぐち責めるのは女々しくないですか?男のやる事じゃねーよ?!
大切なのは、失言した自分がどれだけ変わったのかを見せるコトだよ。
映画の大半がガリアーノの失言の映像ばかりで、ファッションや芸術に興味が無い人には到底お勧めできない映画でした。配信で見てもあんまり面白くはないよ?
どうだ!長いだろ?これが俺という人間だ!
← しつこい
ヘイト発言の真の理由。。。
クリスチャン・ディオールのデザイナーに抜てきされ、「ファッション界の革命児」の名声を得ていたジョン・ガリアーノ。そんな彼のコレクションが実はあまり売れず、収益性は良くなかった内幕等が前半であかされます。そんな彼の、収益面をカバーしてきたパートナーが過労により自殺したことで、彼はそうした仕事にも直接携わるようになり、やがてヘイト発言へ。その真意が気になるところです。
映画を観る限り、彼がユダヤ人に対して固有の感情を抱く理由は明かされず、発言の相手はアジア人だったりしているので、ユダヤ人に対する恨みというよりは、その言葉に象徴される何かに強いストレスを感じていたのでしないかと思います。作中からはディオールが属する世界一のファッションコングロマリットLVMHの経営トップもユダヤ人であったことがわかりますが、経営者からデザイナーに直接強い圧力がかかっていたとも思えません。私としては、ユダヤ系の優良企業に幅広く観られる超合理主義(徹底した効率・収益の追及)とガリアーノが直接対峙する中で、彼の(まつ毛にまで細かくこだわる)アーティストとしての気質が蝕まれていったのではないかと思いました。
それならば「合理主義の馬鹿野郎」とか「ビジネスなんかクソ喰らえ」とでもいっていれば、何でもない戯言だったわけですが、これを少数者へのヘイト発言にすり替えたものは何なのか。ここは、ショーの中でもマタドールに扮してポーズを決めるような、ガリアーノの強い自意識が、自らの弱さを認める事を拒んだためかと認識しています。
私の見方が正しいのかはともかくとしても、発言の過激さからストレスもそれを押し込めようとする力も半端でなく強かったことがうかがえます。
さらに、興味深かったのはオスカー・デ・ラ・レンタのデザイナー時代にニューヨークでオーソドックス(厳格派ユダヤ教徒)の恰好をして外出するあたりでしょうか。ガリアーノにしてみれば「和服を着た親日家」くらいの軽いラブコールだったのかもしれませんが、オーソドックスの人たちにしてみればファッションは宗教的生活(禁欲)の一環。例え天才デザイナーがあの服装にユダヤ教全体を総括したインスピレーションを感じたとしても、相手からは「ユダヤ教を勉強した」ことが、変幻自在の「ファッション」の1つとして揶揄された、と受け取られても仕方がないかと思います。
今回の映画を観た限り、ヘイト発言の真の動機(ストレスの原因やそれを封じ込めようとするもの)にガリアーノ自身が向きあって、問題を克服している印象は、あまり感じられませんでした。確かに、ジャポニズム、近世フランスから古代エジプトまで、各ストーリーを独自の感性で創造する彼の素晴らしいショーを観れば、客観性・論理性など無用にも思えますし、そのあたりはアナ・ウィンターのような敏腕のプロがついているわけですからなんの心配もないのかもしれません。ただ、1人の人間として彼を観た場合、特異な感性の優位性にスポットが当たりすぎ、その他の自分とバランスをとる機会が失われていたことが彼の人生を無用に生きずらくしていたようにも感じます。これからデザイナーとしても集大成の時期に入るガリアーノがどんな活躍を見せてくれるのか、今後を見守っていきたいと思います。
Amazing exceptional creator!
ガリアーノの生み出す美の世界、溢れ出す創造力、想像力は圧巻だった。数々のショーの映像は息を呑む美しさだった。 傲慢なナルシストであることは、他者のみならず、自認するところであろう。 彼が辿った足跡は、決して正しくも善良でもなく、複数の人間を傷つけてきた。差別発言で糾弾され、持てる物全てを失う。だが、神が贈った彼の天賦の才は、誰にも奪えない。ピカソやダリに通ずる芸術家だと感じた。 人を侮蔑する言葉… 髪の薄い人にハゲ、太った人にデブ、背の低い人にチビなど、何処の国にでもあるものだ。そうでない人がそんな人にそう言ったら罪になるのだろう。正常な道徳観があれば、思っていても口にしたらいけないのだ。彼は、疲れ過ぎていた。 アルコールもドラッグも絶ち、physical mentalにクリーンになった彼が、Diorのarchiveに入り、自らのアートワークのドレスに魅入る瞳、表情が、彼の美に対する尽きぬ敬愛を表している。 少年のように白い階段を駆け上がるガリアーノのラストシーンは、愛おしかった。
無知であることは最大の罪である
原題は「High&Low」。文字通りジョン・ガリアーノの栄光と転落を2時間にわたって追いかけたドキュメンタリーの労作である。膨大なアーカイブから選り抜かれた映像を観せてくれる。またファッション界の綺羅星の如きキーマンたちがインタビューに応じている。「ヴォーグ」の編集長であったアナ・ウィンター(プラダを着た悪魔ですね)やアンドレ・レオン・タリーも登場。(タリーは昨年亡くなってた) ガリアーノのカレッジ時代から順を追い正確に時系列にのっとって筋が進むのでごちゃごちゃすることはなく、彼が間違いなく天才であったこと、仕事に押しつぶされていったこと、何をしでかし何を失ったのかがとても良くわかる。 まず彼の天才性だが、ジバンシィのデザイナー就任前後のファッションショーの映像が出てくるので、革命児であったことが良くわかる。 ディオール時代に、彼は三つの依存症に悩まされる。一つ目はアルコール、二つ目は処方薬(向精神薬や睡眠薬)、三つ目は仕事である。年間32本ものコレクションの仕事を抱えていたというから尋常ではない。 そしてカフェ「ラ・ペルル」での暴言事件が発生しガリアーノは失脚することとなる。 本作では、当人が長いインタビューに応じており、態度は真摯であり好感は持てる。少し驚いたのは「ラ・ペルル」での暴言事件は別個に3件あったらしいのだがそこを当人が十分認識していなかったところ。いや酔って覚えていないのはその通りなのだろうがインタビューの時点で、何をどのように糾弾されているか整理、把握できていないというのは問題だろう。 ガリアーノと接触したユダヤ教のラビがいみじくも言っているように、彼は基本的に無知であり、能動的(というのもおかしな言い方だが)なレイシストではないのだろう。ただ心神耗弱状態のときに自動的に差別表現が口から出るということは、差別意識がすでに刷り込まれて確固たるものとなっているから。却って始末が悪く、人として恥じるべきものである。だからこそ積極的な学び、潜在レべルまで入り込んだ自己改革が必要なのである。そのあたりについて色々考えさせられることのある作品ではあった。
心身ともに健康であることの大切さ
ガリアーノの転落をリアルタイムで見ていたけど 差別発言に至る背景を詳しくは知らなかってので これはとても丁寧に描かれていると思った ガリアーノが去ったジバンシイの後任にマックイーンが就任、マックイーンが自死し、片腕だったスティーブン・ロビンソンが自死、そのあとの出来事だった 彼を今も許さない人がいることもきちんと描いているし 彼もまたそれを理解している ガリアーノを散々こき使って利用するだけして 心身ともに疲弊させてなんのサポートもしなかったディオールにも責任はあると思う あの仕事量は異常 そしてガリアーノ自身は酒もドラッグも絶って今が一番クリエイターとして良い仕事が出来ていると 良いドキュメンタリーでした
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