「緻密な設定に練られたシナリオ、後半のトンデモ展開も説得力があり、ラストも秀逸」スリープ Dr.Hawkさんの映画レビュー(感想・評価)
緻密な設定に練られたシナリオ、後半のトンデモ展開も説得力があり、ラストも秀逸
2024.7.4 字幕 アップリンク京都
2023年の韓国映画(94分、G)
夢遊病を患った夫の治療を始める新妻を描くスリラー映画
監督&脚本はユ・ジェソン
原題は『잠』、英題は『Sleep』で、共に「眠る」という意味
物語の舞台は、韓国のどこか
俳優として活躍している夫のヒョンス(イ・ソンギョン)は、新妻・スジン(チョン・ユミ)と仲睦まじい暮らしをしていた
スジンは出産間近になっても仕事を続けていて、彼女の母(イ・ギョンジン)との仲も悪くはなかった
ある夜、ヒョンスは夜中に目を覚まし、スジンがそれに気づいて起きると、彼は「誰かが入ってきた」とだけ言って、再び眠りについた
ヒョンスはそのことを覚えておらず、セリフか何かだと考えていた
映画は、その後ヒョンスが奇怪な行動を繰り返していく様子が描かれ、出産を終えたスジンは、子どもに害が及ぶのではないかと恐れていく
ヒョンスも安全を考えて色々と対策を練るものの、一向に良くなる気配はなく、そこで睡眠障害の専門医キム(ユン・ギョンホ)の診察を受けることになった
薬と規則正しい生活の導入、何かあった時のための安全を施していく
だが、その話を聞いた義母は「悪霊か何かに取り憑かれた」と思いこみ、勝手にヨンウォル堂の巫女(キム・グムスン)から買った呪符を送りつけてくるのである
映画の前半は「科学的なアプローチ」で、後半は「非科学的なアプローチ」になっていて、ヒョンスがおかしかったのに、徐々にスジンがおかしくなっていくように描かれていく
夢遊病によって影響を受ける様子はとてもリアルで、その自覚が中途半端にあるところも微妙な感じになっている
ヒョンスも独自に自分の病気について調べ、ある特効薬の存在を知ることになるのだが、医師はそれを素早く導入しない
そうして重なった時間がスジンを苦しめることになって、彼女自身もある結論を導いてしまう
映画のラストは解釈が分かれる感じになっているが、個人的には「演技」だと感じた
それは、「演技である」という伏線の張り方が明確になっていて、それが上手く回収されているからだ
本作は思い込みの怖さというものを主題に置いているので、そこに陥った人をどう納得させるかという先にある「答え」を提示しているのではないだろうか
いずれにせよ、どちらに転んでも不思議はなく、良い論争になる映画だと思った
妻にわかる周囲の人のモノマネが何度も登場し、彼自身が俳優であることも説得力に繋がっている
だが、スジンの思い描くものが本物である可能性もあって、実際には同時にそれが起こっていた、という可能性も否定できない
真相は誰にもわからないのだが、その隙を与えないことが、本作が特筆すべきスリラーと評される要因であるように思えた