ブルーピリオドのレビュー・感想・評価
全66件中、61~66件目を表示
【”努力と戦略と情熱と夢。”今作は、友人も多く、成績優秀だが夢がなかった高校生が、絵画の魅力に取り付かれ東京藝術大学を目指す姿を、彼の友人達の生き様を絡めて描いたムネアツな青春受験映画である。】
ー イキナリ私事で恐縮であるが、今でも年に1.2回悪夢を見る。
周囲は私と同じ受験生で、皆、必死にペンを走らせている。私は自分の目の前の答案用紙が白紙である事に気付き、”残り、10分です。”と試験官の声が響く中、猛烈に焦りながらペンを走らせる・・、と言う夢である。
ハッキリ言って、トラウマである。
だが、あの年齢の時に必死に勉強した結果、メンタルも鍛えられ、今、休日にノンビリ映画を観ていられるのだと思っている。
そして、今作で矢口八虎(眞栄田郷敦)が、東京藝術大学の一次試験、二次試験に臨む姿を見て、且つての自分を思い出してしまったのである。
故に、ラストの合格発表のシーンで涙腺が緩んだのは言うまでもない。-
◆感想
■良かった所
1.矢口八虎が、好青年で頭も良く友達も多いが、夢を見いだせずに過ごす日々の描き方。
友人達とスポーツバーで呑んで、早朝の渋谷の空を眺めるシーン。そして、彼が家では両親に心配を掛けないように、振舞う姿。
食事が終われば食器をキチンと流しで洗い物をしている母(石田ひかり)の元に運び、家に入る際には靴をキチンと揃えて脱ぐ姿。彼が、両親からキチンと育てられた青年だという事が、丁寧な描写で分かるのである。
2.矢口八虎と鮎川龍二:ユカちゃん(高橋文哉)の関係の描き方。
ユカちゃんは女性のような服や髪をしているが、八虎は変な眼では見ない。逆にユカちゃんの存在が、彼に美術部の森先輩(桜田ひより)が描いた絵との出会いを齎している。
ユカちゃんも、東京藝術大学の日本画コースを目指しているが、彼の嗜好を認めない父親の行いにより、一次試験でキャンパスに×を付けて部屋を出て行ってしまう。
ユカちゃんの事を心配した八虎が電話を掛けた時の会話。
”海に居るんだけど、来れない?””いや、もうすぐ2次試験なんだけど。””アンタはいつも、安全圏にいるのよ。”という会話の後、八虎が嫌な予感がして入水しようとしていたユカちゃんを助け、海沿いの旅館でユカちゃんから”お互い、自分の裸を描かない?アンタは、色々と身に纏っているから服を脱ぐのは大変そうだけど。”と言って二人で自分の裸を描くシーン。
このシーンが、八虎の二次試験のシーンに効いてくるのである。巧い。
更に言えば、八虎の両親が心配しつつも、息子が選択した道を応援する姿と、描かれないが、ユカちゃんの生き方を否定する父親との対比も、さりげなく示されている点である。親の度量の違いが、子供に与える影響を暗喩している様に、私には思えたのである。
3.矢口八虎と遊び仲間の高校生との関係性の描き方。
特に、藝術大学受験に悩む八虎をフルーツパーラーに呼び出し、”俺、パティシエになるわ。”と言った遊び仲間の高校生の姿と、八虎が頑張る姿を陰で見守る皆の姿も、ボディブローのように効いてくるのである。
■もう少し、掘り下げて欲しかった所
1.ヨタスケ(板垣李光人)の聡明で、自信たっぷりだが、何処か屈折していて卑屈な理由をもう少し掘り下げて欲しかったかな。それにしても、板垣李光人さんは良い役者であるなあ。
2.八虎が通う美術予備校の同級生と八虎との関係性の描き方。けれども、予備校の先生を演じた江口のりこさんは、相変わらず抜群に巧いなあ。
<東京藝術大学の合格発表のシーン。合格番号が掲示されている所などは、私自身の合格発表を見に行った時のことを想い出す。ドキドキである。
家で電話の前で待っている八虎の両親に八虎が掛けた電話。
ホント、このシーンは涙腺が緩んだなあ。
両親が仕事や家事を頑張ってくれたから、八虎は夜間の美術予備校に通えたんだものなあ。あの八虎の電話は、最高の親孝行であり恩返しだと思ったなあ。
今作は、友人も多く、成績優秀だが夢がなかった高校生が、絵画の魅力に取り付かれ、東京藝術大学入学を目指す姿を、彼の友人達の生き様を絡めて描いたムネアツな青春映画なのである。>
《努力する》《打ち込む》それが出来れば、立派に才能‼️
この映画を観たかった一番の理由は眞栄田郷敦が好きだから。
ドラマ「エルピス」で決定的に好きになり、虜になった。
まずこの映画では美しい郷敦が見られる。
白に脱色したヘアは実年齢より若く見える。
郷敦の持ち味は捻りの無い素直さ。
真っ直ぐなところが好き。
高校生になり進路を考えた矢口八虎(ヤトラ)は、
自分が何にも持たない空っぽな人間だと気づく。
しかし上級生の森まる(桜田ひより)の絵を見て、森先輩は、
「祈り」を込めと書いている、と呟く。
同級生のユカちゃん(高橋文哉)の日本画にも惹かれるものを感じる。
そんな八虎が東京藝術大学の美術家の難関を、
絵画の経験値まったくなしで挑むストーリーです。
何気にゴードン君のハダカのシーンがあり、まるで知らなくて 心の準備が
なかったからビックリ。
小田原の海に呼び出された八虎(因みに試験中)
自殺未遂気味のユカちゃんを止めるのに、ずぶ濡れになる。
そして旅館で休んでいると、ユカちゃんはなぜかハダカになる。
美しいシーンだった。
お互いに恋愛感情がないのだから、あのシーンはなんなのだろね。
ユカちゃんは父親にジェンダーを否定されて傷ついても、
やはり絵は捨てられない。
ゴードン君は、色気ないので、このシーン嫌らしさ皆無です。
裏のない素直さが魅力です。
レモンのように爽やかさです。
原作漫画の作者・山口つばささんも東京藝術大学を出られてるのですね。
それはやはり説得力ありますね。
一年に5人しか受からずに、倍率200倍‼️
一次試験そして二次試験と実技のデッサン、自画像、
裸婦像があるんですねー。
勉強になりました。
自画像に取り組むシーンは圧巻でした。
もうグラフィクデザインの領域でしたね。
わたしは大学が芸術系で美術科もあったので、渡り廊下にズラーっと
200号の油絵が並んでて、定期的に交換されます。
見ながら歩くのが楽しみでしたね。
上手い下手は一目瞭然で、そこに見る側の主観が加わるのだと思います。
音楽の場合は、例えばベートーベンのソナタやショパンのエチュードなどを
少しづつ仕上げて暗譜して完成する(自分レベルの完成ですが、)
その過程には、自分を磨き何かしら魂の高みを感じて満たされる部分が
あるのです。
それが芸術の歓び昂揚でしょうか?
努力する。
打ち込む。
愛する。
それができるのが才能なのではないだろうか。
天才とは違うかもしれないけれど、
コピー通り、見分けがつかなくなる位に努力すればね。
受験に打ち込む青春ストーリー、
ラストには込み上げるものがありました。
自分だけの世界。
人との付き合いも上手く、勉強もそつなくこなし優秀だが手応えを感じてない、金髪不良な高校2年生矢口八虎の話。
美術の授業の課題「私の好きな風景」で描いた、「朝方の日の光が当たるビル街の青い渋谷」、その絵を描いた時に初めての手応えを感じ好きな事を見つけた八虎が、国内最難関の東京藝術大学を目指し動き始める。
周りに合わせ上手で器用な八虎だったけど、描いた一枚の絵と、先輩森まるとの出会いを機に、大学入学の為に没頭し絵の勉強にのめり込む姿が観てて熱くなるし良かった。
講習で出会った高橋、最初はバカにされてたけど最後には見返したし芽生えた友情の感じもね。
作品雰囲気、世界観も良くて終始楽しめました。ユカ(鮎川龍二)役を演じた高橋文哉君の女装姿は綺麗だった。(原作未読)
若さと情熱
原作は途中まで既読。
面白かったので、是非映画でみたいと思いました。
なんといっても郷敦くんの目が素晴らしかったです。
他人に合わせて笑う目から本当の好きを見つけて変わる目は、見ていて震えるものがありました。
そして原作でも泣いた、反対していたお母さんに自分の気持ちを吐露する場面はやっぱりまた泣いてしまいました。
好きを見つけられること、好きを口にできること、そして好きにまっすぐ行動できること。すべてが輝いていました。
そして意外にも驚いたのが、観客がほぼ中年以上の方だったことです。いくつになっても皆、熱くなりたいのかな。
原作リスペクトを感じる良作
原作ファンです!大好きな作品が映画化とのことで公開初日朝に映画館で見てきました!
映画化対象は激アツの芸大受験編。
原作で6巻分もの内容を2時間近くにまとめるのはかなり難しい判断があったのだと思う。
結果、比較的地味なシーンとも言える、矢虎決意後のひたむきな努力、上手くなっていく過程、絵画技法の説明などはバッサリカット。また、個性的な予備校メンバとの絡みもほぼゼロ。
ただ、原作ファンとしては上記部分はある程度脳内補完可能だし、時間的にやむなしと納得。
それよりも、原作の大きな魅力でもある、①「転機となるシーンでの独創的な表現描写」を映像技術で実写化してくれたこと
②「随所に出てくる名言」を丁寧に扱ってくれたこと(アニメでは軽く流されてた印象)
に対しては製作陣に心から感謝をしたい。
また、主人公らの作品に実物の絵画を使ってくれることも原作の大きな魅力だが、実写化により作品の美しさ•迫力・生々しさを原作以上に感じることができ、これまた幸せであった。
配役も違和感なし。大葉先生のガサツだけど愛情のある雰囲気、世田介くんの神経質感、ユカちゃんの美しさ(笑)がよく表現されていた。ゴードンの危機迫る描きっぷりもとても良かった!
映画を見て、原作の素晴らしさを再認識するとともに、またイチから読んだみたくなりました!
(群青とeverblueの良さも再認識!)
ゴールから逆算したようなシナリオで、それが物語の熱を奪っているように思えた
2024.8.9 イオンシネマ久御山
2024年の日本映画(115分、G)
原作は山口つばさの同名漫画(講談社)
ある絵をきっかけに美大を目指そうとする高校生を描いた青春映画
監督は萩原健太郎
脚本は吉田玲子
物語の舞台は、東京の新宿
友人たちとスポーツバーに行っては朝帰りを繰り返していた高校2年生の八虎(眞栄田郷敦)は、成績が良いにも関わらず、日々を空虚に感じていた
彼は、夜明け前の新宿の静寂が好きで、ブルーに染まった空を見ながら、その時だけは心の中が満たされるような気がしていた
ある日、美術の時間にて課題を出された八虎は、放課後の美術室にて、誰かが描いた絵に魅了されてしまう
その場に現れた中学からの同級生で美術部のユカちゃん(高橋文哉)は、森先輩(桜田ひより)が描いたものだと言う
八虎は、将来性がないのに美術に傾倒していることを疑問視して悪態を吐くが、美術部の顧問・佐伯先生(薬師丸ひろ子)から、「あなたにとって価値のあるものは何かを知りたい」と問いかけられてしまう
その後、美術の課題を書くために教室に来た八虎は、そこで森先輩と出会い、彼女の絵に対する想いを聞かされた
その後、一緒に絵を描きながら、八虎は新宿の青い空をどうしたら表現できるかと考え始める
そして描いた絵は、親友やクラスメイトから評価され、八虎の中で絵を描きたいと言う強い思いが生まれるのである
映画は、約1年半の東京藝大へのチャレンジの過程を描き、美術専門学校に通って、知識と実力を磨いていく様子が描かれていく
専門学校の講師・大葉(江口のりこ)は的確なアドバイスを与え、ユカちゃんやその他のライバルたちとともに難関と言われる東京藝大の試験へと向かう
だが、確たる芯がないまま突き進む八虎は、母親(石田ひかり)の反対で挫けそうになってしまう
そんな折、親友の晋(兵頭巧海)から「八虎の夢に感化された」と聞かされ、好きなことで生きていくことの尊さを思い出していくのである
120分で1年半と言う無茶なスケジュールで、しかも絵を始めるまでに25%ぐらいかかっているので、後半のダイジェスト感は否めない
八虎の合格がどのように実現したかを見る内容だが、あの絵で東京藝大を一発で受かるのかは何とも言えない
才能がないから努力と戦略で突き進むのだが、東京藝大攻略系の講師が出てくると言うこともなく、ほぼ独学で戦略を練って戦っていく様子が描かれていく
こういう人を天才と呼ぶのだが、八虎自身は自分が凡人だと思っていて、本質を見極めるだけであっさりと絵が描けてしまうチートな人をライバル視したりもする
かなりファンタジックな感じになっていて、漫画とかアニメだと良い塩梅だと思うが、こと実写になるとリアリティを全く感じなくなるのは不思議だなあと思った
おそらくは、原作にあるシーンをピックアップして、それに繋がるエピソード&キャラを出すと言うことに特化してシナリオを作っているのだろう
それゆえにワンシーンだけ登場するキャラがいたりとか、前後のつながりを意識していない流れになっていたように思えた
例えば、ユカちゃんが階上の男子生徒に手を振るシーンと、街角で男性にフラれるシーンがあるが、これは別人(階上の生徒が坂本(志村魁)で、路上の男は佐々木(濱尾ノリタカ))だったりする
全体の流れを考えると、ユカちゃんが坂本に告ってフラれたみたいな流れに見えるが、実は「女と間違えられて声をかけられて、男だとわかって拒絶された」と言うシーンだった
これを原作未読で理解しろと言う方が無理な話で、そもそもユカちゃんが八虎を振り回すキャラとして描かれているのも、東京藝大の試験に裸体が出てくるからだった
そのハードルを突破するために、海に行くと言うシークエンスが必要で、そのためにユカちゃんがフラれる(実際には親に女装道具を捨てられる)ところに八虎が居合わせないとダメ、みたいな逆展開をしているのではないだろうか
取捨選択を考えるなら、親に反対されると言うシークエンスが八虎にもユカちゃんにもあるので、あえて「ユカちゃんがフラれるシークエンス」を挿入する意味はなく、父親がブチ切れて殴られるシーンを挿入するだけで事足りるように思えた
いずれにせよ、このようなゴールから逆算して必要な要素だけをピッキングすると言うのが目立っていて、八虎の前にハードルが現れると、次の場面でそれを打ち砕くためのヒントが現れる
この繰り返しの末に合格に至っているので、戦略と努力というよりは、持って生まれた人の縁が彼を合格させたように見える
最終的には、その出来事で彼が本質に気づく才能があるからとも言えるのだが、それは彼の感性に依るもので、そういったものを戦略とか努力とは言わないと思う
そのあたりの造り込みに違和感を感じるので、あまりのめり込めなかったというのが率直な感想である
全66件中、61~66件目を表示