ブルーピリオドのレビュー・感想・評価
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八虎くんの青の時代(ブルーピリオド)
原作、全部読んでいます。今回の映画は八虎くんが絵を志し、藝大に合格するまでの話。この映画だけだとちょっと舌足らずかもしれないですが、私はまずまずうまくまとめていると感じました。
主人公である八虎くんは器用で頭がいい。だからこそ、今一つ、色んなことに手ごたえを感じられずにいる。ある種、とても贅沢な悩みを抱えている青年です。それがあるきっかけで絵にのめりこむことに。この物語のおかげで「絵の予備校」みたいなものがあることも初めて知りました。そういう中で八虎くんが周囲の人々と関わりもがきながら成長していく成長物語です。
私が今回の映画で最も感動したシーンは、母親に対して藝大に進みたいと告白するシーン。「お母さんの望むように生きられなくてゴメン」というくだり。これまで彼は親から見ても良い子だったに違いない。それが初めて本当にやりたいことを主張する。お母さんは驚くとともに嬉しさもあったんじゃないかなと。ついつい親目線になってしまいました。
龍二君との海のシーンも良かった。色んな事を経験しながら他人に良い影響を与えられる大人、私の考える「良い」大人になってくれると良いなと思ってみてました。
八虎くんを演じた真栄田君、良い俳優さんになりましたね。
大変面白く観ました!!!
(完全ネタバレですので必ず鑑賞後にお読み下さい!)
結論から言うと、大変面白く観ました!!!
今作の映画『ブルーピリオド』は、雑にまとめれば高校生が東京藝術大学の美術学部の絵画科の現役合格を目指す物語です。
主人公・矢口八虎(眞栄田郷敦さん)は油画専攻(いわゆる油絵の専攻)を目指します。
個人的にもデッサンをしていたことがあったのでニュアンスは多少分かるのですが、映画の中でも描かれていたように東京藝術大学の美術学部に合格するのは並大抵の話ではありません。
例えば、東京藝術大学よりもレベルが落ちる多摩美術大学や武蔵野美術大学でも相当にレベルが高く、その2校よりレベルが落ちると思われる東京造形大学であっても相当のレベルの高さがあると思われます。
なので東京藝術大学の美術学部に合格するなど奇跡中の奇跡と考えられ、5浪6浪なんて当たり前の世界だと思われて来ました。
そこで現役合格するなどさすがに困難中の困難で、まして主人公・矢口八虎が東京藝術大学を目指すのは高校2年生になってからなので、そこから現役合格するなんで全くあり得ない、というのが一般的な理解だと思われます。
ところでこの映画『ブルーピリオド』の大きな高揚感ある場面の一つに、主人公・矢口八虎が高校の先輩の森まる(桜田ひよりさん)の描く「天使の絵」と出会って、「あなたが青く見えるなら、りんごもうさぎも青くていいんだよ」との彼女の言葉から、青い渋谷の絵を描く場面があります。
この場面の1観客としての高揚感は、感銘を起こさせる素晴らしい一連のシーンになっていたと思われました。
ところが、ここからこの映画はずっと鬱展開が続くのです。
なので映画としては突き抜けた面白さが、矢口八虎が青い渋谷の絵を描いた場面以降はそこまであったわけではありません。
なぜなら主人公・矢口八虎は(高橋世田介(板垣李光人さん)のような)天才ではなく、絵の上達は薄紙を重ねていくようにジリジリとしか進んで行かないからです。
なので映画としては突き抜けた面白さを描くことが困難なまま、しかしながら東京藝術大学の美術学部を目指すという誠実な描写に関しては、そのリアリティを獲得していたと思われました。
ただこの鬱展開やジリジリとした努力の歩みだけでは、当たり前ですが東京藝術大学の美術学部に現役合格するなど時間的にも不可能です。
この映画『ブルーピリオド』の面白さは、その誠実なジリジリとした努力のリアリティ描写と共に、主人公・矢口八虎の「戦略」が描かれるところです。
そしてこの「戦略」は、上滑りの考えだけでは東京藝術大学 美術学部に現役合格するという現実には全く太刀打ちは不可能で、その「戦略」は物事の<本質>に深く到達している必要がありました。
一見すると(美術受験に興味のない人からすれば)たかが大学受験の話に過ぎないと思われる内容でもある今作が、広く多くの人に面白い作品だと思える1つの要素として、この<本質>に深く到達する「戦略」の描写があったと思われました。
この<本質>に到達する「戦略」に関しては、他の分野にも広く通じている普遍性ある内容になっていると感じました。
この後、主人公・矢口八虎は(一般的には高2からの挑戦では到底あり得ない)東京藝術大学 美術学部 絵画科 油画専攻に現役合格します。
しかしながら、主人公・矢口八虎による、ジリジリとした努力の誠実な描写と、<本質>に到達する「戦略」によって、今作はこの現役合格にリアリティある説得力を観客にもたらせていると思われました。
また、ユカちゃん(鮎川龍二)(高橋文哉さん)に関わる話や矢口八虎との関係性も良かったと思われます。
もちろん題材内容的に突き抜けた面白さにするには無理があり難しく今回の点数となりましたが、一方で個人的には素晴らしくも誠実でリアリティと他への普遍性の深さある作品になっていると思われました。
誠実で素晴らしい作品をありがとうございました。
エピソードの積み重ねと熱量に物足りなさ。
作品全体を通して緊迫感があり、最後まで固唾を飲んで観ていた。役者さんたちの好演で若者の瑞々しい空気も良かった。
のだけど!!
原作ファンとしては、尺の都合とはいえ色々端折りすぎている感が否めない…!実写なのでリアル志向なのは良いのだけど、全体的にサラッとしすぎというか、熱量と描写の積み重ねが物足りないというか…。
ほぼ絵画の素人から始まった矢口八虎くんの血と努力のにじむエピソード(佐伯先生にゼロから理論を教わって一つ一つできることを増やしていく、大葉先生との面談や様々な人や体験の影響を重ねてトライ&エラーで前に進んでいく等)の積み重ねの描写がやはり足りない感じは否めない。
森先輩やユカちゃん以外の登場人物の掘り下げがほぼない分、他の藝大受験生との比較における八虎くんのハングリーさが見えづらいのも大きい。
個人的には映画で扱っている受験編って、〝好きなことと目標を見つけた生真面目な八虎くんの努力と苦悩の痕跡〟が肝だと思っている。
ので、映画だけ観るとエピソードの積み重ねが少ない分、八虎くんが努力の人というよりも「いや、君も十分天才じゃん。割とすぐ描けるようになってサラッと現役合格してるじゃん…」と見えてしまうのがなんというか悔しい…。
あとは個人的に大好きなシーン「俺の絵で全員殺す」ももう少し熱く演出して欲しかったのもあるな。
実写化作品として良かったとは思うんだけど、いかんせん原作を知ってる分、作品全体の熱量と人物の描き方、エピソードの積み重ねの面で物足りなく感じてしまった。
しかし主演の眞栄田郷敦くんは良いな。
存在に華があって、眼力も印象的で、でもどこか陰も感じさせて。魅力的な俳優だなあ、と本作で改めて思った。
夢中になれることがあるのは幸せ
夢中になれることがないなりに日々折り合って生きてきたが、先輩との出会いから油絵に運命的に出会い、そこから美術部の先生や予備校の先生との縁が広がってゆくのが気持ちいい。素直で感じのいい主人公や関係者で、気持ちのいいドラマでした。これも予告編よりも印象が良かった(最近予告編の印象以上の本編にあたることが多く、レビューが役に立っている)
これはブルーピリオドじゃない
原作ファンです。完結に言うとこの作品は役者が良くて、脚本が悪い作品です。
まだ原作を見たことがない方は今すぐ読んでください。映画の内容は話の一部でしかなく、カット
されているシーンが多いことがわかると思います。
2時間の映画だからしょうがないとなってしまうのが悲しいです。予備校にてのメインキャラクター世田介くん、橋田くん、桑名さんがモブキャラに近い存在になってしまっています。
世田介くんはただの嫌なやつの印象になっていて、原作では良きライバルなのにキャラの魅力が無くなっていました。
藝大卒の家系で育った桑名さんならではの葛藤、予備校の3人で美術館に行ったこと、藝大の文化祭に行ったこと、高橋くんの頭の柔らかさ、世田介くんと年を越したこと等まだまだ沢山有りますが、大事なシーンカットされています。
矢虎がずっと絵を描いていたら受かったやつってなってしまっているのも残念です。原作では葛藤が沢山あります。
あとは映画は美術の知識の説明がないです。
演技で言うと矢虎が人付き合いが上手い不良ではなく、笑顔が少ないせいかただの不良になっていました。
キャスティングは最近の実写化にしてはいい方です。
音楽も変に壮大でCGの表現もお金かけすぎて不自然。
作者の気持ちを考えると心が苦しくなります。
厳しいことを言うと映画を見ただけでブルーピリオドを知った気にはならないで欲しいです。
最後にまとめるとこの映画は別物です!原作を是非読んでください!!
いい話なんだろうけど、なんとなく物足りない
まったくの素人が絵の世界を知り、そこにのめり込んで情熱を注いでいく。
それは「線は僕を描く」と被ったが、私的にはそっちの方が圧倒的に心を動かされた。
どことなく上手く行きすぎ感、挫折の描き方が中途半端なのかなあ?
苦しんでいる感じがそこまで伝わらなかった。
あまり感情なくたんたんとしてるからかなあ?
先輩の描く天使の絵や祈りの絵は美しかった!
八虎が描く青の渋谷、
描き直した縁のテーマ作品も、赤が刺激的でかなり好き。
画材を変えて描いたという違うタッチの絵もよかった。
絵を習いに来ている高橋が、なぜあんなに自信家でありながら冷たいのか、よくわからなかったなあ、、
龍司はめちゃよかった!文哉キレイ!
ロングヘア似合うなあ、、
でもこの子の演出も半端だったなあ、、
2人が裸で絵を描く姿も、美しかったし、二次試験に何かしら影響を与えたんだろうけど、
裸の絵を描いた2日後の試験のテーマが裸って^^;
デッサン最後に目に白を入れるところはよかった。
友達とタルトを食べながら、夢を語るシーンとか、母親と真っ直ぐ対面するシーンとかよかったけど、
もう一つ入り込めなかった。
エンディングで、歌が終わったあと、デッサンする音だけ残り、最後に真っ白なキャンバスが残るところも好き。
これから何を描くのかは自分次第なんだって、想像を掻き立てられる。
青の時代
タイトルはピカソから取ってるのかな。友人の死をきっかけに、青色をメインにした暗い絵ばかり描いていた、若きピカソと、空虚な毎日を送っていた八虎がリンクする。青は若さを形容する…かも。
高2から始めて芸大絵画科受験かー。すごい決断だなー。佐伯先生、八虎のハートをみごと一本釣り! 予備校の大葉先生もナイスな指導! 八虎も地頭がいいようで、受けたアドバイスの解析が上手。自分らしさをと言われて、考えて考えて考えぬき、答えを出すあたり、さすが「そっち側」と言われるだけある。不安に揺れる時もあるが、結局努力を続けることで乗り越える。若いのによくできた子じゃ。
絵を描く人間の葛藤と成長を、どう表現するか。森先輩の絵に出会った時の表情、水彩絵の具の青色を筆に付けるためらい、丁寧で繊細な表現だった。バスの中で赤々と燃えて、火花が散るところも、創作エネルギーがマグマのようで、すごく良かった。渋谷の空に浮かぶところも美しい。八虎が絵に出会うあたりは、時間をかけて描き、説得力があった。
芸大の受験とか全然知らないので、こういう試験だとわかって興味深かった。教授役で会田誠が!芸大出身だからね!セリフなかったけど!エラそーで良かった(笑)。
原作漫画は2巻までしか読んでないが、配役はめちゃくちゃ合ってる。世田介のシンクロ度はすごい。大葉先生も似てる。ユカちゃんもいい線いってた。ただ、ユカちゃんのバックボーンにもう少し時間かけて欲しかった。
原作ファンです。
キャラの魅力が見事に消されていました。皆殺しです。
唯一大葉先生だけ良かったです。
内容は端折りすぎてちょっと淡々としていたかな。
突然ぶっ込まれたCGは世界観をしっかり壊してました。
NOISE
実写化される範囲の原作を読んでから鑑賞。
簡略化こそされていましたが、原作の良さを引き出しつつ実写ならではの体現もしっかりされていて、総じて良い実写化だったなと思いました。
美大に入るまでに振り落とされる残酷な様子はそれはそれは生々しく描かれていて、受験での落第とかに遭わずに過ごしてきた自分でもウッと胸を押さえてしまうくらいには辛い描写が多かった気がします。
どれだけ自分の全てを詰め込んだ絵だとしても、言葉一つであっという間に駄作に思えてしまって全てを投げ出して逃げてしまいそうになるリアルさはジャンルは違えど体験したことがあるので、スポーツなり文学なり熱中して挫折をしたことがある人間なら誰しも刺さるんじゃないかなの連続でやられっぱなしでした。
八虎をメインに描くというところで仕方ないっちゃ仕方ないんですが、どうしても原作では重要な立ち位置なんだろうなというキャラが背景とまではいかないまでも細かく描写されないので、物語上機能している風には見えませんでした。
予備校での出会いとかもっと描かれていたら八虎の成長をグンっと感じられただろうなと思うと勿体ないと思ってしまいますが、それをやってしまうと1本の映画には収まらない気もするので仕方なしかなとは思いました。
おそらくフィクションなんかじゃ刃が立たないレベルの難しさである藝大合格までの流れがサラッといってしまったのだけは勿体ないなと思いました。
時間の制約という厳しい問題はありましたが、八虎に焦点を当てるがためにそこへの努力する人たちがサクッと描かれていたのはこの作品の重みがうまいこと伝わらないんじゃないかなと思いました。
森先輩とのエピソードが端折られているせいか、絵を描く事への熱がどうにも削がれてしまっていたのはかなり気になりましたし、桑名さんとのやりとりも少数だったせいか戦友みたいな感じの雰囲気を出されてもう〜んとなってしまうのが残念でした。
原作者が実写の世界を尊重してくれたおかげで、コスプレ感のない仕上がりになっていたのは唸りました。
郷敦くんの飢えに飢えた感じの無気力さから熱を帯びる姿までどれも見事に演じきっていて凄かったですし、高橋くんなんか本当の女子なんじゃレベルの細さと振る舞いが本当に素晴らしく、ゼロワンの時からのお付き合いですが本当にすごい役者さんだ〜となりました。
江口のりこさんの先生の雰囲気も踏襲されていてお見事〜ってなりました。
ブルーピリオド入門編のような立ち位置で、原作にそこまで触れてない自分でも若干の物足りなさを感じましたし、原作を愛読している人は難色を示す作りなんじゃないかなとは思ってしまいました。
とはいえ、一つの物事に打ち込む熱はしっかりと感じられましたし、原作の世界を壊さないように慎重に作られた丁寧な実写だったと思います。
続編も期待したいところですし、ドラマとかでやってくれたらな〜と思いました。
鑑賞日 8/12
鑑賞時間 16:15〜18:25
座席 F-3
うわっ! 凄く混んでるロビー。
それも若い客が多い。お盆はヤング狩り放題かな、じゃあシニア割の年齢とか上げないでくれよ・・。
上手くまとまってたと思う、さすがに合格で良かったよ・・キャストも体温低そうなゴードンくん、魔性桜田さんのフェミニン変化、「からかい上手」とは全然違う文哉くんとハマっていた。
ちょっと気になる江口さんのキャストかぶり、「愛に乱暴」も控えてるのに。
特別良いという所がなく悪い所もなく普通
美大受験経験者なのですが、現実ではこんな素直に絵に一生懸命な子なんて本作の予告でも言ってた現役の合格倍率の200倍と同じ200人に1人とかです
私は芸大に本気で合格したい子を見てきましたが、その子はというかみんな自分の作品にこだわりを持ってます
何言ってんだ?と思いますが、みんなそんな感じで先生のアドバイスを受け入れずにやってきて二浪三浪でようやく合格できます
原作、アニメも見ましたが、八虎くんは凄いですね
私も一次試験を2度ほど受けましたが、あの空気はとてつもなく緊張しました
そして私はそんな空気に耐えられずどちらも失敗しました
そんな経験があったので八虎くんの凄さを感じました
しかし尺があるのはわかっていますが、実写ではとんとん拍子で芸大合格まで漕ぎ着けたのはちょっと疑問を持ちました。
まず受験というものは勝者がいれば敗者がいます
今回のブルーピリオドのメインキャラでは橋田くんと桑名さん、もっと言うと桑名さんです
彼女は原作だと合格発表見て悔しくてライブ帰りに泣いてしまう
私はなんとなくこれが受験というものだと思いました
しかし実写の彼女は正直存在感なさすぎると思いました
橋田くんも特に親しく名前を呼んだりせずなんかずっと馴れ馴れしくてうーんと思いました
また私は八虎くんと同じように油画科でした。
油絵、デッサンには絵作りというものが必要です。
過去の合格作品を見るとみな何か狙いという物があり、それを見て勉強します。
これもまた尺が限られてるのはわかってますが、経験者としては納得できない部分でした。
以前ブルーピリオド(原作)のことが話題になった時、私が通ってた予備校ではあまり良い反応はされてなかったので今回の実写ではどうなのかちょっと気になる…
天国で地獄
直向きな情熱が迸る。
予告で見た「情熱は武器だ」に偽りはなかった。
前田郷敦を初めて見た気がする。
彼はとても綺麗な目と美しい手を持った役者さんだった。美しい指先を持つ俳優は男女を問わず惹かれてしまう。
物語は静かに始まる。
まだ何者でもなく、何者にでもなれる季節。情熱の行き先や所在を探しあぐねてる世代には無茶苦茶刺さると思われる。
「好きな事をする努力家は最強」だったかな、薬師丸さんが八虎に向かって言う台詞なんだけど、ホントその通りだと思う。おまけに彼はそこに飛び込む勇気も持ってた。
絵の事はよく分からないのだけど、芸事になると終わりはないし、完成もない。ましてや好きな事となると、妥協は出来ないし嘘もつけない。そして、努力を努力とも思わない。
至って普通にのめり込む。
その有り様は、外野から見ると狂人にしか見えない事もある。けれど本人はソレを苦とも思わないし、足りないと思うし、渇望に似た貪欲さを発揮したりもする。やってもやっても辿り付かない。どこまでやっても満たされない。何地獄なんだとも思うけど、本人達には天国だ。好きな事にひたすら集中し埋没していける環境はあるが、全ての人に居住権が与えられるわけではない。存在意義を賭けた生存競争に絶えず晒される。
周りは言うし、本人も言う。
「そんな事で食べていけるの?」
金を稼ぐのは大切な事だ。生きていく為には必要不可欠だ。けれど、ソレよりも大切だと判断してしまったなら突き進むしかない。むしろ、そういう輩しか入ってきちゃいけないと思う。
どこで野垂れ死のうが自業自得だ。
バカと狂人しかいちゃいけない世界なんだ。
郷敦氏は灼熱の如き情熱に絆された八虎を好演してた。ご本人境遇とリンクする箇所もあったのかもしれないが見事だった。
加速していく展開も好きで、彼が抱えていた葛藤と闘争を端的に見せるカットも盛り込んであるのもいい演出だったと思う。
失敗と挫折は付きもので、それすら踏み越えてまたは引きずってでも進む。
決意を告げられた夜に、何度も何度も頷いてようやく絞り出したか細い「うん」って描写が胸を撃つ。
そして彼は扉を開けた。
果てしなく続く坂道の麓に立った。
好きな事に向き合って自分と対峙し続けた結果だ。
物語はちゃんと敗者も描く。
誰しもが鍵を手にするわけではない。必ず優劣は存在する。それを認めるか認めさすかは別問題だ。
ジェンダーの彼なんかは「普通」って価値観とも戦ってて彼の口から発せられる言葉はどれも切実だった。
誰もが通る分岐点。
その分岐点に立つのは、果たして幸運なのか不運なのか?選ぶのは自分だ。
なんとなくお利口で冷めた時代だと思っていたけれど、そんな風潮に一石を投じるに値する作品だった。
何者にでもなれる期間は存在するが、有限でもある。葛藤と情熱に身悶える世代に見てほしい。
この作品を見て、引き返す選択をしたとしても、それはそれで幸運な事だと思う。
なんせ、彼らの進む道は死ぬまで地獄だ。
ただその地獄を嬉々として楽しめる素質がある一部の狂人には天国に等しい。
そんな事まで感じさせてくれた監督に感謝だ。
見応えありました。
あ、後BGMの入りが良くてどれも素敵だった。
オープニングとか、なんだかザワザワする。
芸術を感じられる人と一緒に見よう
美術館へ行った時のような感覚になりました。
実物の絵画にはパワーがあります!!!!!
全ての俳優の表情がすごい細かい。なぜそこまで表現できるの…。
少し美術を齧ったことがあるので、どういう気持ちで絵に向き合っているのか分かるし、あの空間の匂い(画材とかの)も分かるし、何を表現してあの絵になるのかとかも少し分かる。エンディングで紙と画材の擦れる音だけになるのがにくい演出!
ですが、単に俳優目当ての人と観に行くと少し窮屈です。「分かんなかった…あの絵怖かったよね…唐突に裸婦出てくるしさ…」と言われて困った。恐らく普通の反応?なのか?
マイノリティの描き方が少し物足りないのと、原作を知っているので、先輩や周囲の登場人物との絡みが端折られていたなと感じます。主人公の蕁麻疹とか原作ではもっと苦しんでる。仕方ないですが。(実物龍二の小田原でのシーンはビクっとします。脚綺麗!)
ルックバックも観ての感想ですが、芸術に焦点を当てた作品が何を訴えかけてきているのか考えてしまいます。「絵なんてさぁ、何になるの?」という問について意識させられる。深く考えすぎ?
あとは、普通()の良い所へ就いて欲しい母がなぜ息子にそんな名前付けたの?っていうツッコミ。
ゴードンさんの横顔美しい。
その一本の線の生命に 心が開花し それに震えた!
前に ”線は、僕を描く” を観たけども
あれ以来だろうか、こんな思いにさせてくれたのは。
今日は「ブルーピリオド」観に行ったのだわさー。
チョット気になってて、毎度何も予備知識一切持たずに作品鑑賞に挑むのやけども、この東京藝術大学に行こうって言うのに惹かれちゃってね。
ただそれだけっす。
美術のネタものってあんまり無いかな。向き合う姿勢ってのが観ていて好きでね。
どうしてもネタ的に 理数系、スポコン系は多いのやけど、
こう言う 一般人がボ-っと見ても良さが伝わり難いので競うのが 更にイイかな。
漫画アニメの作画系ネタは有るけど、結局視聴率とか購買数とか数値で競ってるから理数系の流れでしょかね。
誰なんよ この白髪頭の主(矢口八虎)は??
あぁ~ 眞栄田郷敦さんなのね。歳は別としてカッコイイね。
そして、高橋世田介:(板垣李光人さん)メッチャ賢そう。
森まる:(桜田ひよりさん)主より歳上には見えんなぁ。
大葉真由:(江口のりこさん)居そうな先生。
佐伯昌子:(薬師丸ひろ子さん)配役 そう来ましたかって感じ。
兎に角、絵を描いて、描いて 描きまくる!!
この熱意には恐れ入った。
普通の受験勉強じゃ絶対受からない。
記憶する勉強なんて意味が全くなくて それがまた興味そそる。
自分で常に考えなくっちゃイケないんだね。
ほぇ~ って感心するばかりでしたわ。そこが衝撃的かな。
(良かった所)
・ブル-タス像のスケッチをさせた時、皆のを一堂に並べて視てゾクってしたな。
主のは わざと下手に描いてあった。
高橋くんのは スッゴィ 一目で感動したな。
確かに 心打つよね。皆 同じ石膏像なのに。この違いw
ここのシーンは ホントに絵を描くって凄さが心底に刺さったね。
・母が東京藝術大学への進学を反対して 諦めさせようとした時、主の心が折れたのを察して友人がスイ-ツ店へ誘った所かな。友人が言う~
お前は何やっても天才で何処か手を抜いてて、楽勝で大学進学するだろうと思ってたけど、真剣に絵に向き合った姿勢を見て凄く震えたんだよ。
だから俺は大学行かずにパテシエに成るって決めたんだ!
ここの 友人の矢口に向けた言葉は深いなと思ったな。
・母が疲れて台所のテーブルに伏せて寝ているスケッチを 母に見せる場面。
両親とも一生懸命働いてくれて 国公立大学なら何とか行ける様にしてくれていて、自分の将来が母の思う方向に重なって無くて ゴメンと言う所ですね。
あそこは 心から泣けましたわ。
そして母に絵の方向(東京藝術大学)に進学することを認めて貰う・・・。
(もうちょっとな点)
・ユカちゃん:(高橋文哉さん)の存在が 案外重いのだけども、人物の背景描写があっさり目かな。もう少し深めで出てる方が良いと思うのだけど。
二人して脱いだ点に目が行ってしまって、この感情が惜しいかなと感じましたね。
・最後の試験に合格した絵。
これが どうも私的には仕上がりに納得できてなくて。なんでコレ?って思ってますね。特に下半身なんですよね。うーーん?って言う表現に思えました。
それと肌の色ね。 こう言う点が難しい所でしょうかね。
言葉やセリフじゃなくて 描写(絵)で総てを描き切る。
眞に映画の神髄。チョイと難しいかもだけど
そう想えた所がGoodでしょうか。
興味ある方は
是非劇場へ!!
原作よりリアルな人間のリアクションになったが
漫画表現の歪さや、女性作家から見た男性像の歪さが映画でどうなっているのか気になったので観てきました。
ほぼ歪さが無くなって、キャラの感情がスムーズに共感できるようになった反面、絵の技術に対する情報が削られて魅力が減ったように感じがしました。60点の仕上がりで、昨今の原作無視批判を気にしている感じがしたのは残念です。
個人的に引っかかったのは、ヨタスケ君が主人公を嘲笑ったシーンと、二人が全裸になってスケッチをしたシーンで。
ヨタスケ君は自己の価値観にほぼ完結している人間で他人の作品を嘲笑う姿に違和感があり、恋人でもない2人が全裸を見せ合う事に違和感がありました。原作では視線はほぼ遮られていたと思います。相手を性として捉えるなら配慮が必須で、配慮しまくる主人公とは思えない行動に感じました。そこだけが残念でした。
原作の良さが伝わってこない
作中で描いた自画像やヌードの絵は迫力があり劇場で観る価値があると思います。キャラクターも実写化によくある違和感みたいなのは少なかったです。
肝心の内容はとりあえず受験の最後までやった、という感じで薄っぺらく感じました。
原作を読んで感じた良い所が映画では端折られていたり変わっていたのは残念です。(恋ちゃんとのシーンとか2次試験の描き方に辿り着くまでがあっさり過ぎる…)
合否結果を観に行くとこの橋田と桑名さんも緊張感0に見えますし…
あと世田介くんが徹底的に嫌な奴にされていたのは何なんですかね?出てくるたびにイラッとしました。
「カンハレ」 鑑賞動機:予告7割、原作2割、ユカちゃんを相応の説得力持たせて実写にするのって難しいのでは1割。
映画予告に触発されて原作の一部(4-14巻)を読んだ状態で臨む。(大事なところ読んでない…。)
「カンハレ」では、濁点からいくかそのまま本体へいくかドキドキしてしまった。いただきまーす♪
国立大学で芸術を学べるところは、別に藝大以外にもそれなりの数あるだろうに(筑波の芸専とか)と思ってしまうが、教育学部の系統とは方向性が大きく違っているのだろうか。
眞栄田郷敦は安心して見ていられる。モノローグで補強されてるとはいえ、視線の彷徨わせ方とか、目の泳がせ方とか、特に自身の気持ちが定まらないときの表情はよい。
高橋くん、いやユカちゃんは役柄として非常に難しかっただろうけど、一人称をおそらく意図的に変えていて、揺らぎというかグラデーションをうまく出せていたと思った。
色々と削ぎ落としたことで、特に脇役陣の人物像が薄くて物足りなく思うところもあるが、セルフヌードの場面は…途中驚いたけど納得です。ああっ?! 郷敦が鏡に!
でも好きなことが仕事になると、それはそれで逆に辛くなることもあるからなあ。
描くと言う事
原作はずっと気になって、買うか迷ってたヤツ。本作を観るにあたって2冊だけ試し読みした。
本作は勉学も人間関係もノルマをこなすのは得意ではあるが、ふとしたきっかけで美術の世界にふれ、芯の無い自分に気付いて絵にのめり込む主人公と周りの人々の話で、原作は群像劇的部分もあり既刊15巻でまだ続いている。
映画は東京藝大受験をメインとしている。
映画鑑賞中ずっと思っていた事は、芸術大学を目指した人以外はどう感じ、面白いのだろうか?って気になってました。
主人公が絵を描いてみて、初めて他者に理解される所が原作より割とアッサリ描写されてて、もっとエモーショナルな演出を予想してたので、透明じゃ無い自分の発露から描きまくるには弱いと思いました。
藝大の存在を知り予備校に通いだす中で、主人公以外の人の絵をちゃんと見せないので(石膏像デッサンは比較描写があるけど)、他者の技量や才能の差が分からない。
予備校内での順位に説得力が無いので、高橋クン(原作ではデッサンは抜群だが色を塗るとそれほどでは無い)が予備校を辞めるのも唐突に感じました。
新しい世界を知った主人公が、その熱量で才能を超えた努力(それも才能だけど)で成長する様で見る者を引っ張り結果感動する話なのですが、映画においては結局、勉学や人間関係のノルマを起用にこなす様に受験をこなしたとも感じました。
高橋クンの言う『美術じゃ無くても良かったクセに』は正にその部分で、その熱量が自己表現から受験にすり替わってる指摘と私は思ったのですが、映画の主人公は怒るだけでした。
原作は15巻も続いているので、触れていると思いますが、受験に於ける自己表現や対策等と自分の作品と言える自己表現は根本が違う事が映画では誤魔化されていると感じました。
主題や課題を他者に与えられて描く事と、自分の内や外の問いや答えを魂から引き出し描く事は全く違ってて、それこそ芸術に正解は無いところです。
映画で表現されてた事は、自己表現の喜び苦しみから、いつの間にか受験合格がゴールの様になってました。
そこに感動を持ってくるとお受験映画になってしまいます。
これから始まる自己との戦いを匂わして終わって欲しかったです。
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