「エピソードの積み重ねと熱量に物足りなさ。」ブルーピリオド ゆめさんの映画レビュー(感想・評価)
エピソードの積み重ねと熱量に物足りなさ。
作品全体を通して緊迫感があり、最後まで固唾を飲んで観ていた。役者さんたちの好演で若者の瑞々しい空気も良かった。
のだけど!!
原作ファンとしては、尺の都合とはいえ色々端折りすぎている感が否めない…!実写なのでリアル志向なのは良いのだけど、全体的にサラッとしすぎというか、熱量と描写の積み重ねが物足りないというか…。
ほぼ絵画の素人から始まった矢口八虎くんの血と努力のにじむエピソード(佐伯先生にゼロから理論を教わって一つ一つできることを増やしていく、大葉先生との面談や様々な人や体験の影響を重ねてトライ&エラーで前に進んでいく等)の積み重ねの描写がやはり足りない感じは否めない。
森先輩やユカちゃん以外の登場人物の掘り下げがほぼない分、他の藝大受験生との比較における八虎くんのハングリーさが見えづらいのも大きい。
個人的には映画で扱っている受験編って、〝好きなことと目標を見つけた生真面目な八虎くんの努力と苦悩の痕跡〟が肝だと思っている。
ので、映画だけ観るとエピソードの積み重ねが少ない分、八虎くんが努力の人というよりも「いや、君も十分天才じゃん。割とすぐ描けるようになってサラッと現役合格してるじゃん…」と見えてしまうのがなんというか悔しい…。
あとは個人的に大好きなシーン「俺の絵で全員殺す」ももう少し熱く演出して欲しかったのもあるな。
実写化作品として良かったとは思うんだけど、いかんせん原作を知ってる分、作品全体の熱量と人物の描き方、エピソードの積み重ねの面で物足りなく感じてしまった。
しかし主演の眞栄田郷敦くんは良いな。
存在に華があって、眼力も印象的で、でもどこか陰も感じさせて。魅力的な俳優だなあ、と本作で改めて思った。