劇場公開日 2024年8月9日

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「お受験だと芸術はスケールダウンする」ブルーピリオド やまちょうさんの映画レビュー(感想・評価)

3.5お受験だと芸術はスケールダウンする

2024年8月13日
iPhoneアプリから投稿

原作の漫画は未読です。

なぜか成績優秀だけど髪を金髪に染めて日頃、不良仲間とつるんで空虚な日々を送る主人公の八虎君。

彼がたまたま美術室で天使っぽい絵画に触発され、またその描いている女子の先輩の絵に向き合う姿勢にも共感し(というか恋心抱いて)、一念発起して倍率的には東大より入るの難しいという東京藝術大学の油絵科?を目指すお話です。

まず導入部の話しの流れ的に絵ごころがなく、好きな絵画さえその時点ではっきりしていない受験生がなぜ急に油絵を描こうとするのか・・・好感持つ女子先輩の素晴らしい絵が気づかせたって言ったらそれまでなんですけど、ゆったり話は進みながらも何か判然としないものがありました。

また、家がおそらく共稼ぎで経済状況はよくなく、ただでさえお金がかかる美術系大学(行ったことないので予想)が、国立大一本になってしまうのは良しとして何故、いきなりトップオブトップの藝大(たぶん)なのか。
私、主人公が行く気にならないといったさらにランク下の文系私大卒なので、このあたりの知識がなくて主人公の志望動機がなんだか理解できませんでした。

納得いかなかったので調べたところ原作者さんが藝大卒って情報があり、このあたりはフィクションを織り交ぜながら本音は隠しつつ、作品の中で自分語り始めちゃった感はありますね。これも原作者としての一種の自己投影なんでしょうね。

それはさておき、とてつもなく高い目標を乗り越えるために努力を重ね、何度も何度も挫けながら立ち上がり、ライバルと切磋琢磨し、少しずつ上昇していく様は何か清々しいものがありました!

ただ、ストーリー的に芸大受験の合否までが切りとられ、受験日までカウントダウンなんかしはじめるから個人的には好きじゃない「お受験映画」みたくなってしまいました。せっかく構築しつつあった芸術的な空間の広がりが制限をつけられ追い込みかけられて矮小化され、一気にスケールダウンしてしまった感覚があります。原作もこんなノリなんでしょうか?

一方、個性的な脇役はなかなか良い味を出していましたし、薬師丸さんとか江口さんとか演技力あって大好きな役者さんが好演していてこのあたりは、手放しで高評価したいですよ。

では。

やまちょう
agemakiさんのコメント
2024年8月15日

私も、国公立大学で美術やるなら藝大しかない、というのは引っ掛かった。

私は美術専攻ではないけど、母校の筑波大学には芸術専門コースがある。
東村アキコさんは金沢美術工芸大学油画科出身だし、教育学部美術コースも含めたら国公立で美術って、かなりある。
原作読んだけど、原作には、「作家として食べて行ける人は確かに一握りだけど、美術を活かした仕事は少なくない、一般大学で食べて行くのが簡単とも限らない」みたいな先生の言葉があったけど、映画では削られていた。

八虎は三多摩在住なので、東京学芸大学に行けば、自宅から通えて親の負担も軽そうです。

agemaki