「良くも悪くも平均点」ブルーピリオド ヤスさんの映画レビュー(感想・評価)
良くも悪くも平均点
良い点
キャストの選定が素晴らしい。皆さんちゃんと特徴を捉えた容姿、何より鮎川さんのプロポーションが素晴らしい。ちゃんと八虎とお互い自分のヌードを描くシーンがありましたが、思わずドキッとしました。
絵画が非常に美しい。美術には素人ですが、作中で出る絵画やちょっとしたスケッチすら、思わず見惚れる素晴らしいものばかりでした。漫画では伝わりきれなかった良さがありました。
そして、八虎の受験前、受験での描くシーンが素晴らしい。あの気迫は漫画をそのまま再現してくれていました。
悪い点
八虎が無表情。クールと言ってしまえばそれまでですが、泣いていても正直違いが分かりませんでした。もっと原作では表情豊かだったので、感情移入しきれませんでした。
ドラマパートや背景に音を付けただけのシーンが多い。何か鮎川さんとの絡みも、悪友との絡みもそんなにいるか?と感じてしまいました。
この作品は、八虎の絵を描き始める前は、あくまで序章で、描き始めて塾で同じ志を持つ仲間と出会って切磋琢磨する所が好きなのに、ほとんどそこはありません。何なら描き始めの美術部に入部してから、塾での数々の課題等は、バックミュージックと共にサラッと描かれるだけでした。八虎の美術に触れてからをしっかり観たかった人間としては、かなり消化不良でした。
縁の絵の箇所が酷すぎる。
縁の絵は八虎にとって大切なターニングポイントだと思っていましたが、何か急に入ってきたCGで全て台無しにされていました。急にマーベルになったのかと思いました。何か絵を描いている時にも謎の火花と効果音が入るし、完全に予算を無駄遣いして作品を殺していました。その後の絵を描くシーンは、正に八虎という感じで、これが観たかったと思わせるものだったばかりに残念です。
以上、色々と書きましたが、基本的には中弛みも多いので、あまりオススメしづらい作品かなと思いました。原作を読んでいる人には物足りなく、読んでいない人には幕中が冗長に感じて退屈してしまうかもしれません。
それでも、キャストの演技は光るものはありますし、絵画の美しさ、後半の描くシーンの熱量は他では体験できないものでした。
個人的にはOPは、あの入りであれば、YOASOBIの群青にしておけばかなり映えたのにと思います。